サクラもいつしか盛りを過ぎ、ひとひらひとひら散り始めている。
この時期には、散りゆく花びらを眺めて、何とも言えぬ思いに浸ってしまう。
ゆく春を惜しみつつ口ずさむ詩がある。
諳んじた達治の詩と、青春の寮歌を声に出して詠う
◎「甃のうへ」 <測量船より>
あはれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
をみなごしめやかに語らひあゆみ
うららかの跫音空にながれ
をりふしに瞳をあげて
翳りなきみ寺の春をすぎゆくなり
み寺の甍みどりにうるほひ
廂々に
風鐸のすがたしづかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃のうへ
中学だったか高校だったか、暗誦させられた覚えがある。
春の日に静かなお寺の境内を歩くさわやかなイメージに共感した覚えがある。
後年、サクラの花びらが風に流れて散る光景に、いつもこの詩が浮かび呟いてきた。
流れた花びらは、あはれ青春の流れだった。
◎「春寂寥」 <信大・思誠寮寮歌>
これは誰もいない桜の木の下で、ゆく春を惜しみながら玲瓏と詠う
感動の歌。これまた、何度か傷める心を抱いた我が青春の歌だった。
春寂寥(せきりょう)の 洛陽に
昔を偲ぶ 唐人(からびと)の
傷(いた)める心 今日は我
小さき胸に 懐(いだ)きつつ
木(こ)の花蔭に さすらえば
あわれ悲し 逝(ゆ)く春の
一片(ひとひら)毎に 落(ち)る涙
【 春寂寥 】
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/harusekiryou.html
近くの神社のサクラを見に出た。お気に入りのヤエベニシダレが咲き始めた。
花散るや八幡の杜のベニシダレ
いつも一番に咲く神社のソメイヨシノは散りはじめた。我が家のヤマザクラやオオシマザクラもそろそろ散り始めだ。
このところ実の付けが悪かったサクランボの佐藤錦は満開だ。
オオシマザクラ サクランボ
今年のサクラ、厳しい冬だったわりには例年より早く咲きだしたが、このところ気温が低く長く咲いてくれている。
ほどなく短い春が行って 初夏へと時が流れて行く。