テラとセネジェニックスジャパン、新型コロナウイルス感染症において幹細胞治療の開発を共同で実施、臍帯由来幹細胞治療の効果をメキシコで75名の患者で実施中

2020年08月17日 16時53分29秒 | 事件・事故

テラとセネジェニックスジャパン、新型コロナウイルス感染症において幹細胞治療の開発を共同で実施、臍帯由来幹細胞治療の効果をメキシコで75名の患者で実施中

2020.05.28 21:29  マイライフニュース

 先端医療支援事業を手掛けるCENEGENICS JAPAN(セネジェニックスジャパン)は、幹細胞治療の研究開発を行うテラと共同し、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に有効な“幹細胞”を用いた国内初の新たな治療法の開発に向けて、5月13日から、メキシコでの臨床研究を実施してきた。5月28日に行われた発表会では、同研究に携わったテラとセネジェニックスジャパンの2社から、研究成果の報告と幹細胞治療の新型コロナウイルスへの有効性、国内治験開始に向けた今後の展望を発表した。幹細胞治療の臨床研究では、セネジェニックス・メキシコが保有する、メキシコ国内で承認を得ており、米国FDAの基準を満たした臍帯由来幹細胞(UC-MSC)を用いて、新型コロナウイルス感染症によって中等度以上の呼吸器症状が出現している患者を対象に実施。治療プロトコルおよび臨床研究の成果を、セネジェニックスジャパンを介してテラに提供し、幹細胞を使った治療法の確立を目指す考え。

 「当社は、がん治療および免疫研究の分野で、多くの治験を発表してきた。今回、セネジェニックスジャパンと新型コロナウイルス感染症の幹細胞治療に関する共同研究の提携によって、現在メキシコで行われている幹細胞治療の臨床研究の成果を提供してもらい、幹細胞を使った治療法の確立を目指していく」と、テラの平智之社長が挨拶。「新型コロナウイルス感染症で重症化した患者に対し、幹細胞治療が有効であるとセネジェニックスジャパンが見出したのだが、免疫技術を有する当社との共同開発が、新型コロナウイルス感染症の流行前の社会にいち早く戻すのに適していると判断されたことを光栄に思う」と、セネジェニックスジャパンと共に新型コロナウイルス感染症に苦しむ人々を救う力になれることに、並々ならぬ使命を感じている様子。「幹細胞治療の臨床研究の結果を受けて、9月には薬事承認ができるように、当社としては様々なアプローチを模索していくことが必要であると感じている」と、新型コロナウイルス感染症の流行を食い止めるためにも、短期間で薬としての承認が得られる準備をしていきたいと意気込んだ。

 次に、セネジェニックスジャパンの竹森郁取締役が新型コロナウイルスに対する幹細胞の効能について講演を行った。「新型コロナウイルス感染症において、重症化を防ぎ死者を出さない治療薬の開発ができれば、単なる風邪と同じレベルとなり、世界は流行前の頃の生活を取り戻し、経済活動を再開できるようになる」と、死に至らしめることがなくなれば、新型コロナウイルス感染症に対して恐れる必要はなくなると語る。「新型コロナウイルス感染症は間質性肺炎を引き起こして死に至る。これは特発性肺炎とされ難病扱いとなっている」と、新型コロナウイルス感染症は、通常の肺炎とは異なる症状であることが、治療薬の開発を難しくしているのだと説明する。「新型コロナウイルス感染症で命を落とした人の肺には、新型コロナウイルスがいなかった。このことから、新型コロナウイルスは肺の中でサイトカインストームを引き起こし、間質性肺炎を発症させているという仮説が成り立つ」と、新型コロナウイルスが悪さをしに肺に入ってきたのだが、サイトカインストームが過剰に反応し、肺を壊してしまっているのではないかと推察する。

 「当社が注目した幹細胞は、再生医療やアンチエイジング、アトピー治療、糖尿病治療等で使用されており、幹細胞は暴走を止め、壊れた肺を修復する効果が期待できる」と、様々な治療で高い効果を発揮している幹細胞を用いることで、過剰な反応を抑え、壊れた肺を元通りにできるのではないかと説明する。「すでに、UAEの研究施設が幹細胞利用の治療を開発。この治療法で73人が回復した」と、幹細胞にいち早く着目し、実際に効果があることを証明している国もあるのだという。「ただし、UAEの研究施設で用いられた幹細胞は自家幹細胞と呼ばれ、自分の血液を培養するものとなる。これは培養に時間がかかるというデメリットがある。一方、自家幹細胞とは逆に、他人の幹細胞を用いる他家幹細胞がある。培養スピードは格段に上昇するが採取ルートに難がある。そこで当社は、臍帯由来幹細胞を用いることにした。臍の緒で培養する幹細胞のため、拒絶反応も少なく、1本の臍の緒で10万人分の治療薬の開発が可能となる」と、臍帯由来幹細胞に着目した経緯について紹介。「さらに、子宮内膜由来幹細胞にも注目した。これであれば採取が容易で、培養も短期間となる」と、子宮内膜由来幹細胞についても臨床研究を行っていく考えを示した。

 「今回、テラとの共同開発を行うことにした背景は、同社が樹状細胞がんワクチンを開発し、多くのがん患者(ステージIII、IVが多くを占める)を救ってきた会社でもある。兵隊のリンパ球に目印を教え、がんだけを正確に狙う技術を有している。こうした高い技術が、新型コロナウイルス感染症の新たな治療薬の開発に不可欠であると判断した」と、テラとの共同研究で、新型コロナウイルス感染症が流行する前の頃の生活に戻せるように、努力を重ねていくと語っていた。

 そして、セネジェニックスジャパンの藤森徹也社長が、新型コロナウイルスに対する幹細胞治療のメキシコでの臨床研究の中間報告結果について講演を行った。「新型コロナウイルス感染症の感染者数は、世界で約550万人となっており、未だに増え続けている。新型コロナウイルス感染症の症状は、潜伏時間が1~14日とされ、最初は発熱や空咳、倦怠感など感冒症状が主となっている。また、ほとんどの患者が無症状で軽い症状となっている。ただし、約20%が中等度から重症となり、発症から1週間後に呼吸困難あるいは低酸素血症が現れ、急性呼吸器症候群(ARDS)となる」と、新型コロナ感染症の症状について解説。「ARDSとは、重症肺炎、敗血症や外傷などの様々な疾患が原因となり、重度の呼吸不全となる症状の総称。重症肺炎、敗血症や外傷などによって、炎症性細胞が活性化され、肺胞や毛細血管の細胞がダメージを受ける。その結果、血液中の水分やたんぱくがにじみ出て、肺に水がたまり、重度の呼吸不全が引き起こされる。1週間以内の経過で急に発症し、極めて予後が悪いのが特徴だ」と、ARDSについて説明。「しかし、感染者の肺の血管や間質からはウイルスが検出されないという報告もある」と、ウイルスが肺炎を引き起こす原因ではない可能性があると指摘する。

 「そこで重症化する原因を探った結果、サイトカインストームが影響しているものと推察している」と、免疫機能の暴走であるサイトカインストームが起こり、通常はウイルス感染に対する攻撃手段であるサイトカインが、正常な細胞を攻撃してしまうことが肺炎の原因になっているのだと訴える。「新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認されたレムデシビルはあくまで抗ウイルス薬であり、ウイルスの増殖を抑えるだけとなる。ひとたびサイトカインストームが行ってしまうと、抗ウイルス薬で止めることはできない」と、抗ウイルス薬は、重症化した患者の治療薬として有効とはいえないのだと力説する。

 「一方、幹細胞は分裂して自分と同じ細胞を作ることができる他、様々な種類の細胞に分化し増殖することができる」と、幹細胞について解説。「すでに新型コロナウイルス感染症の現場で幹細胞治療が使われ始めてきた」と、UAEの研究施設「アブダビ幹細胞センター」で治療を受けた患者73人全員が回復したのだという。「幹細胞治療では、重症度を上げ、患者が亡くなる大きな原因であるサイトカインストームを緩和・改善する効果があると考えられる」と、治療法の少ない、中から重症患者に効果がある可能性が高いとのこと。「肺組織の回復を促進する作用が幹細胞にはあると考えられている」と、UAEのみならず、中国、米国、イスラエルなどの国々で、新型コロナウイルス感染症に対する幹細胞治療の効果が認められているという。「他家細胞(他人の細胞)を培養したものを使うため、“off the shelf”で必要なときに使える」と、幹細胞治療の利点について言及してくれた。

 「当社は現在メキシコにおいて、50名の新型コロナウイルス感染症患者に対し、臍帯由来幹細胞(UC-MSC)を用いた臨床試験を行っている。この治療プロトコルおよび臨床研究の成果をセネジェニックスジャパンを介しテラに提供する。そして幹細胞治療薬新薬の開発を目指す」と、共同研究の内容について説明。「臨床試験の結果、5月26日時点で、登録された症例数は9例で、このうち詳細が伝わった一例は、登録時ARDS重症度分類であったが、幹細胞投与後に急速に回復し、3日後には人工呼吸器から離脱した」と、臍帯由来幹細胞の治療について有効なデータが得られたとのこと。「さらに、子宮内膜由来幹細胞(MenSCs)についても研究。この幹細胞は免疫調節、特に免疫抑制の役割を発揮するなどの利点を持った幹細胞となっている」と、子宮内膜由来幹細胞について紹介。「子宮内膜由来幹細胞の長所は、経血内に存在し、副作用がほとんどなく安全だ。しかも原材料が無限で、免疫調節、特に免疫抑制の役割を発揮することから、サイトカインストームを抑制する効果が期待される」と、幹細胞治療薬の本命として期待されるのだと述べていた。

 今後、セネジェニックスジャパンでは、子宮内膜由来幹細胞による臨床研究の中間報告を6月22日に行い、7月末には臨床研究を終了させたい考えを示した。

テラ=https://www.tella.jp/
セネジェニックスジャパン=https://cenegenics-japan.com/

 

 

 

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メキシコでのコロナウイルス感染者に間葉系幹細胞を用いた治療法を確立するための臨床試験を推進

2020年08月17日 16時44分35秒 | 医科・歯科・介護

2020 年 7 月 27 日
各 位
会社名 テ ラ 株 式 会 社
代表者名 代 表 取 締 役 社 長 平 智 之
(コード番号: 2191)
問合せ先 執行役員 / 管理本部長 玉 村 陽 一
(電話:03-5937-2111)
子宮内膜由来幹細胞の投与終了と治療効果概要(中間結果)について(経過開示)
テラ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:平智之)は、セネジェニックスジャパン株式会社
(本社:東京都中央区、代表取締役社長:藤森徹也※当社取締役)との共同研究契約(以下、本契約)に基づき、当社は、治療薬の開発の一環として、臨床試験の費用を負担し、セネジェニックス・ジャパン株式会社は、
メキシコでのコロナウイルス感染者に間葉系幹細胞を用いた治療法を確立するための臨床試験を推進する形で、メキシコにおいて新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する間葉系幹細胞を用いた治療法の開発 に向けてメキシコ国内での臨床試験(以下、本臨床試験)に取り組んでおります。

すでにお知らせしている通り、本臨床試験では当初の計画である臍帯由来幹細胞(UC-MSCs)に加えて、子宮内膜由来幹細胞(MenSCs)
が適用されておりますが、この度、後者の MenSCs 適用による治療が終了し、本臨床試験の責任医師からの治療効果概要に関する報告、及びイダルゴ州知事によるメキシコ政府に対する薬事申請に関する発表がありましたので、お知らせします。
1 子宮内膜由来幹細胞(MenSCs)による治療効果概要
本臨床試験の責任医師であるグアダラハラ大学(Universidad de Guadalajara)の Dr. Jorge David RivasCarrilloより、メキシコ国内の3 病院*4で行われたMenSCs による治療効果概要(中間結果)*5について以下の報告を受けました。

本臨床試験の被験者は合計 45 名であり、MenSCs を投与する 30 名(実薬群)と MenSCs を投与せずに利用可能な最善のサポートケアと薬物的治療のみを受ける 15 名(コントロール群)に分けて、両者の治療効果を比較しました。

その結果、2群の治療結果が以下のように報告されています。
対象集団 生存患者数 死亡患者数
実薬群 26 名 4 名
コントロール群 2 名 13 名
今後、収集された詳細な臨床データ及び画像所見等に基づいて、8 月末までに統計的有意性を含む解析結果が本臨床試験責任者から当社に提出される予定です。

また、RCT(ランダム化比較試験)の実施の有無は確認中です。

盲検試験については、単盲検試験を実施しており、二重盲検試験ではありません。

米国国立公衆衛生研究所(NIH)と米国医薬食品局(FDA)が共同運営する治験と臨床研究に関する情報を提供するデータベースであるクリニカル・トライアル https://clinicaltrials.gov/への登録については確認中です。

治験審査委員会(IRB)からの臨床試験の実施承認書を確認しております。

本治療に用いた間葉系幹細胞の細胞製剤は、メキシコのクリオヴィーダ(Cryovida)社が製造している未承認薬です。

当社の役割は、資金提供並びに、治験計画の立案等を行う開発企画、人員や予算といったリソースや海外を含めたステークホルダーとの調整や進行管理を行う PM(プロジェクトマネジメント)、治験の進行状況をモニタリング(監視)することです。
なお、本治療効果概要については第三者による検証を受けておりません。

 イダルゴ州知事による薬事申請に向けた発表
すでにお知らせしている通り、2020 年 6 月 14 日(日本時間)、メキシコイダルゴ州ファエッド知事
(Omar Fayad Meneses, Governor of Hidalgo, Mexico)は、本臨床試験に関して、その成果を見極めたうえで、近々に薬事申請に向けた共同作業に着手すると発表していました。

2020 年 7 月 22 日(日本時間)、ファエッド知事は、この度の MenSCs による治療効果概要(中間結果)を受けて、本治療薬が薬事承認されるよう
に最大限の努力をすると発表(動画*7)しました。本発表において、本治療薬の名称をプロメテウスとすること、及びプロメテウスによる治験を「SARS-CoV-2 による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の治療目的のエクソソーム(exosome)及びヒト間葉系幹細胞の投与の安全性と有効性に関する治験」とし、その承認申請をサポートすることが述べられています。
*1 2020 年 4 月 27 日開示、「CENEGENICS JAPAN 株式会社との業務提携及び新たな事業の開始に関するお知らせ」
https://contents.xjstorage.jp/xcontents/21910/8d801aba/011a/439f/a7e4/a1d2575de947/140120200427400832.pdf
*2 2020 年 5 月 14 日開示、「新型コロナウィルス(COVID-19)に対する幹細胞治療:臨床試験開始のお知らせ」
https://contents.xjstorage.jp/xcontents/21910/02fff69b/4be6/47fb/a01b/8472c0c81d7d/140120200514415011.pdf

*3 2020 年 5 月 28 日開示、「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に対する幹細胞治療: 臨床試験の進捗
および追加臨床研究のお知らせ」
https://contents.xjstorage.jp/xcontents/21910/1b2a5c0e/4e90/470c/870e/cdaaa4618eff/140120200528428160.pdf
*4 COVID-19 即時対応指定病院(HRI)に指定されている HRI パチューカ、HRI アクトパン、HRI セデナパ
チューカ総合病院の3病院
*5 現段階は、実薬群 30 名及びコントロール群 15 名の合計 45 名に対する治療実施後 5 日間の経過観察時の
中間結果である。所定の経過観察を経て行われる解析結果は追って報告される。
*6 2020 年 6 月 19 日開示、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)治療新薬開発共同事業に関するメキシコ
での臨床試験実施についてのお知らせ(経過開示)
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/21910/98952bd0/aa50/45c6/a187/2ecaa149cc95/140120200619448014.pdf
*7 イダルゴ州知事からメッセージ動画(スペイン語)
https://drive.google.com/file/d/1Q11own1PONH-VVz9uOGHKk14z6Skb1Ae/view?usp=drive_web
以 上

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臨床研究が進む幹細胞治療 新型コロナ感染症で中間報告 ...

2020年08月17日 16時27分35秒 | 医科・歯科・介護

2020年6月16日 共同通信


新型コロナウイルスの治療薬の研究開発が各国で進む中、 先月28日、臨床研究が進む幹細胞治療の中間報告会が都内で開かれた。

 報告会には、先端医療の支援事業を手掛ける 「セネジェニックスジャパン」と 幹細胞治療の研究開発を行う「テラ」の 担当者が登壇。

両社の報告によると、先月14日からメキシコで始めている 幹細胞を用いた新型コロナウイルスに対する臨床研究において、感染患者1人の症状が回復した。

 今後両社は、7月にメキシコにおける臨床研究の結果報告会を開催し、成果が出れば、国内では秋頃から同様の研究を実施して、年内の承認申請を目指していく予定です。

www.youtube.com/watch?v=m_Pdb8XQDsE

2020年6月16日-新型コロナウイルス治療薬の研究開発が各国で進む中、 先月28日、臨床研究が進む幹細胞治療の中間報告会が ... 事業を手掛ける 「セネジェニックスジャパン」 と 幹細胞治療の研究開発を行う「テラ」の 担当者が登壇。 ... メキシコで始めている 幹細胞を用いた新型コロナウイルスに対する臨床研究において、感染患者1 人の症状が回復した。

今後両社は、7月にメキシコにおける臨床研究の結果報告会を開催し、成果が出れば、国内では秋頃から同様の研究を実施し 

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コロナ銘柄、テラの株価爆騰を支える細胞医療とは 猫コロナウイルスから見るコロナ治療のコペルニクス的転換

2020年08月17日 16時18分02秒 | 医科・歯科・介護

2020.6.9(火)
星 良孝

 猫に関して言えば、コロナウイルスが猫を死に至らしめるメカニズムが明らかになっている。そのメカニズムをつぶさに見れば、新型コロナウイルス感染症の治療ではウイルスではなく、感染した人間をターゲットにするという、最近浮上している考え方の背景が分かる。ここ最近、細胞医療を研究・開発しているテラの株価が急騰しているが、その背景にも、こうした医療にまつわる考え方の逆転がある。テラの株価は5月半ばに380円だったが、6月8日の終値で1828円まで高騰している。

炎症反応が暴走「サイトカインストーム」

 まず猫がコロナで死に至る最悪のケースを見ていこう。北里大学獣医感染症学前教授、宝達勉氏の指摘や研究を参考にして病気の悪化プロセスを単純化すると、以下のようなステップになる。炎症反応暴走、最近話題に挙がる「サイトカインストーム」である。

1.ウイルスが猫に感染する

2.猫はウイルスに抵抗するため抗体を作る

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3.抗体がウイルスに結合して抵抗する

4.ウイルスに抗体がつき、その抗体を目印にマクロファージ(白血球の一種)がウイルスを捕らえる

5.ウイルスは抗体に捕らえられたことで、かえってマクロファージに感染できるようになる

6.マクロファージにウイルスが侵入し、そのためにマクロファージが炎症反応の暴走を起こす

7.炎症反応の暴走のために、全身の免疫細胞が影響を受ける

8.抗体を作る免疫細胞(B細胞)が増える一方、感染した細胞を殺す免疫細胞(T細胞)が「自殺」を始める(ここで言う自殺とは「アポトーシス」と呼ばれる現象。本来であれば、T細胞が減るのは好ましくないように見えるが、マクロファージによる炎症反応の暴走に影響を受け、T細胞が自らを崩壊させる変化を起こしてしまうと報告されている)

9.抗体が増えて、マクロファージへのウイルスの感染がより悪化する

10.ウイルスと抗体が結合した物体(免疫複合体)が増える

11.体が免疫複合体を異物と認識して反応する(アレルギー反応の一種)

12.アレルギー反応で血管やリンパ球などがダメージを受ける

13.血液が固まり毛細血管を塞ぐ

14.血管から血液成分がにじみ出して腹腔内や胸腔内に水(腹水)が溜まる

15.全身の酸欠などにより体は機能不全に陥る

16.死に至る


猫がコロナウイルスで死に至るプロセス
拡大画像表示
ギャラリーページへ
 どうだろうか。人の新型コロナウイルスで指摘されていることと共通点を感じた人も多かったはずだ。

 ワクチンについて書いた「新型コロナはワクチン開発が難しい『猫型』の恐れも」でも触れたが、一口に免疫といっても、大きく2種類が関係しているのが見て取れる。

 一つは「液性免疫」というもので、免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質「抗体」が担う免疫だ。抗体は「B細胞」と呼ばれる免疫を担う細胞が作り、血液中に大量に溶け込んでいるので液性と呼ばれる。抗体により、ウイルスの機能を停止させるのだが、最悪のケースでは、抗体のためにむしろ感染が悪化してしまう。

 もう一つの免疫は「細胞性免疫」というもので、感染細胞を攻撃する細胞による免疫だ。ただ、細胞性免疫も最悪のケースでは、細胞性免疫を担当するリンパ球自体が自殺してしまう(アポトーシス)。異物を排除する体の反応である「炎症性反応」が暴走することで、細胞性免疫を担当する細胞が自壊を始めるのだ。

 猫のコロナウイルスの場合、自分を守ってくれるはずの抗体が自分自身を攻撃する。これは「抗体依存性感染増強(ADE)」と呼ばれている。

 ところが、ADEの状態にもかかわらず、中には死に至らない猫がいることが分かっている。ウイルス感染に抵抗する猫には特徴がある。血管周囲に「肉芽(にくげ)」と呼ばれる細胞塊ができるのだ。これは免疫を担う免疫細胞で構成されていると考えられている。これができると、腹水や胸水が溜まってしまうような異常も起こらない。猫が生き残るための背景には、こうした病変形成に細胞性免疫が関係していると考えられている。さらに強い細胞性免疫が引き起こされたときには、肉芽病変さえできず、感染や発症もせずに済む。

 細胞性免疫は人でも重要だという見方がある。2002年に香港で発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)において、香港の研究グループは感染から回復した人の11年後を調べ、SARSの持つタンパク質に反応する細胞性免疫が保たれていることを確認している。

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弱き者容赦なく切り捨てる戦争 戦中・戦後の生活者の記録

2020年08月17日 16時15分51秒 | 事件・事故

8/17(月) 10:32配信
47NEWS

日本橋の被災地で食糧増産のためカボチャの種まきをする動員学徒。右後方のビルは高島屋日本橋店=1945年5月6日

 戦争体験をどう継承していくかが問題になっている。戦後75年がたち、戦争を体験した人々が社会から退場していくからだ。では、体験の継承は難しいのかというと、そうではないと思う。膨大な数の証言が蓄積され、一部はデジタル化もされており、その気になれば、体験者からのメッセージをいつでも受け取ることができる。

 1931年の満州事変に始まった15年戦争について、その経過や領土の帰趨、為政者や権力者のふるまい、被災面積や死者数、賠償額については、正史とされる歴史書や教科書に書いてある。しかし、戦時下の庶民がどんな暮らしをしていたのか、長い間、わからなかった。暮らしを軽んずる風潮が強かったからだ。

 その実相が少しずつ明らかになるのは、連合国による占領が終わった1950年代後半から。黙って耐えることにならされてきた女性たちが、重い口を開き始める。

 注目されたのは、1959年に出版された鶴見和子・牧瀬菊枝編『ひき裂かれて 母の戦争体験』。「生活記録運動」の流れのなかで、職業的な書き手ではない女性たちが、戦争中の窮乏生活や学徒動員や疎開の辛さを吐き出した。戦争体験という言葉もまだ耳慣れない時代、グループで意見交換しながらまとめた「声なき声」の記録である。巻末に鶴見が、個人的記録から庶民の戦争史にたどりつくための第一歩だとしており、この頃から母親運動や原水禁運動などの取り組みのなかでも、さまざまな体験が語られていく。


鶴見和子さん=97年3月

 70年には「東京空襲を記録する会」が結成され、全国各地でも同じような動きが始まる。翌年、「空襲・戦災を記録する全国連絡会議」が発足。自治体も応援した戦災誌が次つぎ刊行された。降り注ぐ焼夷弾の雨をくぐって生き延びた人、火事が迫り家屋の下敷きになった家族を助けられないまま逃げた記憶など、戦災史には庶民の苦しみ、悲しみがいっぱい詰まっている。

 女性史の分野では、80年代から地域女性史の編纂が盛んになった。自治体が編んだものから、民間の小さなグループによる自費出版まで、出版の形は多様だが、通史や年表とともに聞き書き集が付いている点は共通している。

 わたしも各地の地域女性史編纂に関与し、多くの高齢女性から聞き取りをした。明治から昭和ひとけた世代のライフヒストリーには、例外なく戦争体験があり、そのすさまじさに息をのんだ。

 父や夫を戦場に奪われてどんなに心細かったか。国防婦人会で出征兵士を送ったときの高揚感。神国日本が負けるはずがないと信じこまされていた教育の怖さ。一つとして同じ話はなかった。これらは単行本や冊子として各地の図書館や女性センターに所蔵されている。

 唯一の国立女性センターである国立女性教育会館(NWEC)の女性教育情報センターには、80年代以降の女性関連図書が収蔵されており、文献情報データベースで「戦争体験」を検索すると、図書だけで685件がヒットする。この検索語ではカウントされない原爆関係の証言集なども合わせると、膨大な手記や体験記が集積されている。

 ただ、これらの個人的な経験の記録が、社会の経験として共有されているかというと、そうはなっていない。もどかしい思いがある。さらなる伝える工夫が必要だ。

 ここで1冊、手に入りやすい体験記として、2年前に出版された『戦中・戦後の暮しの記録』を紹介する。暮しの手帖社の募集に応じて寄せられた体験記2390編から約100編を選んでいる。副題に「君と、これから生まれてくる君へ」とあるように、戦争を知らない若い世代にも理解できるよう、目配りのきいた編集になっている。

 手記だけでなく、当時の写真、日記、家計簿、戦場からの絵手紙と、表現形式はさまざま。体験者本人が書いたものだけでなく、子や孫の聞き書きもあれば、父の手記を娘が抜粋して投稿したものもある。ということは、当事者がいなくなっても継承の手だてはあるということだ。

 空襲の記録は各地から寄せられている。国民学校の教師だった女性の絵日記には、夫が徴兵されたのち、子どもを抱えての日々がこまやかに綴られていて、戦時下の日常と敗戦、その後の日々がよくわかる。

 駐在所の前で鉱山から逃げた「シナ人」が警棒で殴られているのを見てかわいそうだと言って叱られた人、捕虜を警棒で殴らされて辛かったという人もいる。

 捕虜だったイギリス人男性本人の手記もある。トンネル工事を監督する日本人班長が「陽気で優しかった」と回想されていてホッとする。

 日本軍の戦死者の大半は餓死や病死とされているが、内地で暮らしていた人びとにとっても、本当の敵は飢餓だった。戦中も戦後も食べ物が極端に乏しく、いったん胃袋に納まったものを反芻する能力が身についたという人がいる。その手記のタイトルは、「もう牛に戻りたくない」。

 満州からの生還者の思い出はどれもむごい。台湾、朝鮮、樺太からの引き揚げも採録されている。

44年、硫黄島が日本軍に接収される。当時14歳だった女性は家族とともに島を追われた。戦争が終わって島に帰れると思ったが、戦後は占領軍に接収され、その後は自衛隊基地ができてしまう。今も島に帰れない。だから「終戦はまだきてないの」と孫に語る。

 戦時中の新聞を開くと、かくかくたる戦果が報じられているが、その裏で庶民の暮らしがどれほど困窮していたか、物質的にも精神的にも追い詰められていたか、なにより戦争によってどれほどふつうの暮らしを奪われ、運命が変転したか。この記録を読むと実感できる。

 個人の権利や命の価値が軽んじられ、弱き者、子ども、女、高齢者、障害者が容赦なく切り捨てられた。それが戦争なのだと、改めてかみしめる。
(女性史研究者・江刺昭子)

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最終更新:
47NEWS

 

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コロナ感染者が謝罪、日本だけ? 「悪者認定」がもたらす致命的問題 5/3(日) 7:02配信

2020年08月17日 15時59分44秒 | 社会・文化・政治・経済

コロナ感染者はなぜ謝るのか?


コロナ感染者が謝罪、日本だけ? 「悪者認定」がもたらす致命的問題
5/3(日) 7:02配信
47NEWS

マスク姿で街を行き交う人たち=東京都墨田区

 新型コロナウイルスに感染した有名人に対するバッシングがSNSで繰り返されている。感染者を責める対象は、有名人に限らない。人をたたき、「謝罪」を求める強い衝動はどこから生まれるのか。社会心理学が専門の三浦麻子・大阪大学大学院教授は、日本は他国と比較して、感染は「本人のせい」と捉える傾向が強いという。感染者を責めることは、道徳的問題にとどまらず、致命的な結果を招く恐れがあるとも話す。三浦さんに昨今の風潮を読み解いてもらった。

 * * *

 新型コロナウイルスに感染した人たちに謝罪を求めたくなることがあるかもしれません。しかし、そんな気持ちになったときは、是非、自分の心にブレーキをかけてください。

---

 ▽にんげんだもの

 社会心理学の様々な知見を踏まえて考えると、感染者(正確に言えば「感染が確認された人」)に謝罪を求めたり、激しい非難を浴びせたりといった行為に走る人が少なからず存在する。これは不可解な現象ではない。筆者はよく「にんげんだもの」という言葉で説明するのだが、時にまったく合理的ではないことを、人間は平気でやらかしてしまうことがある。


東京・銀座の路上に捨てられたマスク

 ▽被害者を非難する心のしくみ

 感染者のように本来「被害者」のはずの人を過剰に責める行為は、新型コロナウイルス禍でなくとも頻繁に生じている。通り魔被害に遭った女性が「深夜に出歩く方が悪い」などと責められる事案がそれである。

 私たちは、自分が住む世界に安定や秩序を期待している。これを「公正世界信念」という。この信念を持つことで心の安定がもたらされ、前向きに生きられる良さがある。その半面、安定や秩序が奪われてしまうかもしれないと思った時の心のぐらつきは大きい。そんなとき「あれは被害者が悪かったのだから自分は大丈夫」と考えることで、不安な気持ちをなんとか押しとどめ、安定や秩序を取り戻そうとすることがある。

 被害者への非難が生じる背景には、感染がまだ「不運」な事象であることが関係している。本稿を執筆している4月26日時点で日本国内の感染者は1万3182例。ほんの3カ月前のことを思えば膨大な数だが、総人口からすると0・01%、1万分の1の不運がわが身にふりかかってくるなどと考えたくもない。「そうだ、感染者が悪い」と決めてかかることで、その不安や恐怖から逃れようとするのである。

そもそも、他者の行為の原因をその人自身に求めたがる心のしくみもかなり頑健である。これを対応バイアスという。「明らかに本人のせいではない」とは断言できないようなケースでは、この対応バイアスがさらに顕著となる。

 また、これまでの筆者らの研究では、日本人は欧米人と比較すると「悪い人が不運な目に遭うのは自業自得」と考えやすいことも一貫して示されている。筆者らが3月末に日米英伊の4カ国で実施したウェブ調査でも、新型コロナウイルス感染を「本人のせい」とする傾向が他国よりも強かった。それが何に由来するにせよ、日本には「悪者なんだから謝れ」が許容されやすい風土があるようだ。

 ▽真実だと思いたいものを「真実」にする

 自分が真実だと思いたいものに向けて事実をゆがめたがる心のしくみを確証バイアスという。これもまた「にんげんだもの」の典型例である。普段であれば、無意識のうちにそうしてしまった自分に気づいて修正をかけられるものでも、不安や恐怖にさいなまれるとブレーキが利きにくくなる。


東京・大手町のオフィス街

 確証バイアスは「真実だと思いたいもの」になるように、事実を歪曲する行為なので、「感染者が悪い」とは異なる方向にも事実をゆがめることがある。感染を公表した有名人に対して、本人の不行状だと厳しく責めることもあれば、やや過剰に同情が集まることもある。感染した事実は共通しているのに、反応がまちまちなのはそのせいである。

 ▽メディアという増幅装置

 ひとりひとりのこうした行為が社会的な「風潮」となることに、マスメディアやSNSが手を貸していることは否定できない。マスメディアによる「こんな事例があった」という報道が増幅装置として働き、「みんなそうしている」という風潮ができあがるのはいつものことだ。

 SNSは、個人がマスメディアと同等か、あるいはそれ以上の発信力を持つがゆえに、「お気持ちメディア」的な色彩が濃い場所である。「お気持ちメディア」とは、筆者らが東日本大震災に関するツイートに含まれる感情語の特徴とその伝播過程を研究する中で、SNSの特徴を一言で表現するならこれがぴったりだ、と思った表現であり、学術用語ではない。

筆者らの研究で示されたことは二つある。一つは,SNSは、ネガティブであれポジティブであれ、人が強い感情に突き動かされたときに投稿されやすい場所だということ。そしてもう一つは、強い感情を伴う投稿は、そうでないものよりもはるかに拡散しやすいということ。SNSもまた、個人の行為を「風潮」たらしめる増幅装置である。

 ▽感染者を責めてはならない

 「にんげんだもの」だからこそ、またそれが容易に増幅されるような社会に生きているからこそ、筆者は強く主張する。感染者を責めてはならない。それはなぜか。感染者に謝罪を求め、彼らを悪者認定することは、感染拡大を抑える働きがないどころか、むしろ拡大させる危険性をはらんでいるからである。

 感染者に負の烙印(スティグマ)を押すことで、その人自身の心身に過度のストレスをかけることはもちろん好ましくない。

 さらにこうした行為は、感染者が責められるさまを見た人々に「自分も負の烙印を押されたらたまらない」と思わせる。そんな人たちは、自らは感染している可能性が高いと思っても、または感染を示すような症状が出ても、それを隠して普段通りの生活を続けるかもしれない。

 感染しても潜伏期間が長く、また一目見てわかる症状が出ないこともある新型コロナウイルスの場合、それが文字通り致命的な悪影響をもたらす可能性は誰しも理解できるだろう。

 私たちが互いに不寛容でいることは、確実に社会をむしばんでいく。責めない方が道徳的に望ましい、というだけではなく、責めることは自分にとっても不利益につながるのである。

 ▽「にんげんだもの」とあきらめない

 筆者は、感染禍にある今に限らず、人間のあらゆる行為はこうした心的メカニズムによるものであることを、できるだけ多くの方々に知ってほしいと常々考えている。知っていて初めて、感染者に謝罪を求めたくなっても、踏みとどまれるのではないかと思うからである。もちろん、行動経済学的なアプローチのように、意識せずともそうさせるような仕組み(ナッジ)を導入する試みも有用だろう。しかし、心理学者としては、それぞれが自らの心のうちをよりよく知り、自覚して修正してほしいと思う。

---

 新型コロナウイルスに感染した人たちに謝罪を求めたくなることがあるかもしれません。それが人間の性(さが)なのですから。しかし、そんな気持ちになったときは、是非、自分の心にブレーキをかけてください。自分のために。そして、社会のために。(大阪大学大学院人間科学研究科教授=三浦麻子)

 

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相次ぐコロナ「謝罪」 その空気感は感染拡大防止のハードルを上げないか

2020年08月17日 15時56分35秒 | 事件・事故

毎日新聞2020年4月7日 00時18分

宇多川はるか

「大変情けなく思っています」「心からおわび申し上げます」――。新型コロナウイルスに感染した著名人や所属団体から相次ぐ「謝罪」の文言。感染防止策を講じていた人も多い。それでも謝罪すべきことなのか。謝罪に向かわせる「空気感」は何なのか。そして、それは感染拡大防止を妨げないか。リスク管理や医療の専門家、感染経験者と考えた。【宇多川はるか/統合デジタル取材センター】

 サッカーJ1神戸の酒井高徳選手は3月30日、チーム公式サイトや写真共有アプリ「インスタグラム」で公表したコメントで、感染の報告と共に謝罪の言葉を繰り返した。

 「今回はサポーターの皆さんや一般の方々、Jリーグ関係者、全ての選手、スタッフ、その家族やご友人に不安とご迷惑をおかけしてしまうことになり、本当に申し訳ございません」と始まり、人が密集する場所を避けたり、手洗いや消毒をしたりしながら生活した上での感染を「大変情けなく思っている」とつづった。

 日本サッカー協会の田嶋幸三会長も回復して退院する際、ウェブでの記者会見で「組織のトップとして感染して申し訳ない。悔しい」と語った。

 また、3選手の感染が判明したプロ野球阪神では、揚塩健治球団社長が「ファンの皆様には誠に申し訳ない」と謝罪。芸能界でも、人気音楽グループ「ケツメイシ」のRYOJIさんや脚本家で俳優の宮藤官九郎さんの所属事務所が、感染報告と共に「申し訳ございません」「心よりおわび申し上げます」とのコメントを発表している。

 こうした謝罪を「必要ないでしょう」と言うのは、社会情報大学院大学教授で危機管理コンサルタントの白井邦芳さんだ。

 

 

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コロナ感染者はなぜ謝るのか?

2020年08月17日 15時41分06秒 | 社会・文化・政治・経済

2020.04.23 globe.asahi

新型コロナウイルスに感染した人が謝罪をしない方がよいと思う理由

新型コロナウイルスに感染した人に謝罪を求めるニッポンの社会  
そんななか、気になるのは有名人が感染を「謝罪」していることです。例えば4月15日に感染が報じられた石田純一さんの所属事務所は、石田さんがPCR検査を受け陽性だと確認されたことを説明した後、「この度、ご迷惑をお掛けした関係者の皆様には、心よりお詫び申し上げます」と締めくくりました。
またテレビ朝日のアナウンサーの富川悠太さんも、コロナウイルスの感染が明らかになった後に「このような事態を招き、視聴者の皆様、関係者の皆様に大変なご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」と謝罪しています。
富川さんは、報道番組の看板キャスターという立場上、同氏は今まで日本はもとより世界のコロナウイルス感染事情について詳しく報道してきました。そういった立場でありながら、自らに症状が出た際には報告が遅れたことは反省すべき点です。
しかしだからといって、コロナウイルスに感染した人が、世間に対して「謝罪」をすることが意味のあることだとは思えません。
なぜ謝罪をすることが問題なのか
新型コロナウイルスに感染した人の謝罪を見てみると、感染を広げた可能性があることや濃厚接触した相手への具体的な謝罪というよりも、「仕事関係者や世間の皆様に迷惑をかけた」といった漠然とした内容のものが目立ちます。日本には人に迷惑をかけたら世間に対して謝罪をしなければいけない、という暗黙の了解があります。
「地域を超えた結びつきは、ICTで加速する」 地方企業や中小企業をささえる日本青年会議所のICT活用レポート
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新型コロナウイルスに関しては「3密を避けるべき」だとされています。しかしこの「3密」を避けてきた人が絶対に感染しないのかというとそうではなく、努力をしていても感染してしまう場合があります。「新型コロナウイルスにかかった本人に落ち度があるに違いない」と考えてしまうのは尚早です。たとえ注意をしていても、誰でもかかる可能性のある感染症だということを考えると、感染したことを謝るのは妥当ではないと思います。
詳しくは後述しますが、「仕事の穴をあけること」は感染を拡げないためにも当然のことです。そういったことを踏まえると、仕事関連のことで「謝罪」をする必要はないはずなのです。「コロナウイルスに感染して申し訳ないと思う人は謝罪すればいいじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、メディアに出ている影響力のある人達がそろって謝罪をしてしまうと、「コロナウイルスに感染したら、謝るのが常識」だという雰囲気が世間で更に強まってしまうのではないでしょうか。
 ドイツではハンドボール選手のJannik Kohlbacher氏やテレビキャスターのJohannes B. Kerner氏などがコロナウイルスへの感染を公表していますが、彼らのコメントには現在の自身の体調やほかの罹患者への気遣いのメッセージは含まれているものの、「謝罪」をした人は皆無です。
休むことに必要以上に罪悪感を持つ日本人
そもそも日本のサラリーマンや俳優が「体が悪い」ということをなかなか言い出せないのは、体育会系的な根性論のせいです。まず組織や会社が「体調が悪い時に、社員がすぐに言い出せる雰囲気」を作ることが大事です。新型コロナウイルスは感染力が強いことから「体調に異変を感じたらすぐに報告しなければいけない」というのはその通りなのですが、今までの日本では「仕事に穴をあけるのはダメな奴」といった体育会系的な考え方が蔓延っていたのですから、すぐに言い出せない人がいても不思議ではありません。
新型コロナウイルスに感染して仕事を休んだ場合 ドイツでは
ドイツでは新型コロナウイルスに感染した場合、医者から就労が不可能であるという証明書を勤務先に提出します。また、ドイツの法律では従業員が会社を休む際に、病名を雇用主に知らせる義務はありません。ただコロナウイルスに関しては、医者に「感染に関する個人情報を保健所に伝える義務」があるため、保健所から職場に連絡が行く可能性があります。そのためドイツでコロナウイルスに感染した人は、通常の風邪などでの欠勤とは違い、自ら病名を雇用主に告げる人もいます。
自宅または病院で隔離生活を送っている間、会社は最大で6週間、従業員に今まで通りの給与を払い続けます。レジャーで休んでいるのではなく病気なのですから、欠勤の日数が有休から引かれることはありません。
 6週間以内に病気から回復すれば出勤またはテレワークをしますし、そうでない場合は、健康保険から疾病給付金が従業員に支払われます。疾病給付金は税金を引く前の金額の70パーセントに該当する金額です。
新型コロナウイルス感染が及ぼす今後の仕事への影響
冒頭の富川アナウンサーについて、SNSでは「もう番組に出ないでほしい」という声もあります。でも仮にコロナウイルスから回復した後に富川アナウンサーが今までの番組に出ることができなくなった場合、「コロナウイルスにかかった人は左遷してよい」という悪しき前列を社会が作ってしまうことになります。コロナウイルスへの感染が遠因となって査定に響いたり降格につながったりすることは防止されなくてはいけません。
コロナウイルスの収束に至るまでにはまだまだ長い道のりだということを考えると、新型コロナウイルスに感染したことによる降格や雇用形態の変更は、たとえそれが間接的なものであったとしてもなんとしてでも防止されるべきであり、感染した「個人」を叩いている場合ではないと思います。それよりも、例えば今後コロナウイルスに感染した人が会社を休んだ場合、欠勤した日数が有休を使うことで処理されてしまうことのないように、会社や国に求めていくことが大事です。
新型コロナウイルスの感染経路を保健所に対して明らかにすることが大事である一方で、感染の責任を職場や仕事先で問われるべきではありません。
「PCR検査数をなぜ増やせないのか」という疑問
ドイツでもかかりつけの医師やホットラインに電話をする際に回線が混み合っている問題が一部にあるものの、感染の疑いがある人に対して現在1日に5万~6万件のPCR検査が行われており、日本よりも検査のハードルは低いです。ドイツのPCR検査の累積数は現在約132万件で、ヨーロッパの中で一番多いです(イギリスのオックスフォード大学の統計ウェブサイトOur World in Dataより)。
新型コロナウイルスについてはまだ医学的に解明されていない部分も多く、収束の時期も分かりません。いつまで今の不自由な暮らしが続くのかわからないのも、どこの国でも同じです。日本の場合はPCR検査を受けるハードルが高く、これまでに実施された検査数は全国で約10万件であり、数が多いとは言えません。検査自体のハードルが高いため、「もしコロナウイルスに感染しても、PCR検査を受けさせてもれないかもしれない」といった不安が「感染を公表した著名人に対する不満」につながっている面もあるようです。SNSでは感染を発表した有名人に対して「なぜPCR検査を受けることができたのかを本人が説明すべきだ」という声が多く見られます。
しかし本人がそういったことを説明したところで、私たちにとって問題は何も解決しません。誰でも新型コロナウイルスに感染する可能性があるのですから、PCR検査数を増やすなど改善してほしい点は政府に求めていくべきです。感染した個人に謝罪を求めている場合ではありません。法律や制度を動かせる立場にいる人に対して「正しく怒る」ことが今もっとも求められているのではないでしょうか。
 

サンドラ・ヘフェリン
 

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累計感染者数:452名 茨城版コロナNext(対策指針)

2020年08月17日 13時09分23秒 | 社会・文化・政治・経済

茨城県内の新型コロナウイルス感染症の陽性者の状況

0816陽性者の状況

累計感染者数:452名 茨城版コロナNext(対策指針)

8月16日(日曜日)、県内で新たに新型コロナウイルス感染症患者(2名)が確認されました。

感染症対策と社会経済活動の両立に向けて

感染症対策と社会経済活動の両立に向けて

 

県内における地域別の感染状況

県内における地域別の感染状況

 

県内陽性者の主な行動履歴

県内陽性者の主な行動履歴

 

緊急事態措置等の強化・緩和に関する判断指標

緊急事態措置等の強化・緩和に関する判断指標

 

新型コロナウイルス感染症病床の拡大

新型コロナウイルス感染症病床の拡大

     

水戸市「夜の街」に対するPCR検査ローラー作戦

水戸市「夜の街」に対するPCR検査ローラー作戦

 

『PCR検査ローラー作戦』の検査の流れ

『PCR検査ローラー作戦』の検査の流れ

 

 

県民の皆さまへのお願い

県民の皆さまへのお願い

 

茨城版コロナNext(コロナ対策指針)Ver.2

茨城版コロナNext(コロナ対策指針)Ver.2

 

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弱き者容赦なく切り捨てる戦争 戦中・戦後の生活者の記録

2020年08月17日 13時04分56秒 | 社会・文化・政治・経済

8/17(月) 10:32配信
47NEWS

日本橋の被災地で食糧増産のためカボチャの種まきをする動員学徒。右後方のビルは高島屋日本橋店=1945年5月6日

 戦争体験をどう継承していくかが問題になっている。戦後75年がたち、戦争を体験した人々が社会から退場していくからだ。では、体験の継承は難しいのかというと、そうではないと思う。膨大な数の証言が蓄積され、一部はデジタル化もされており、その気になれば、体験者からのメッセージをいつでも受け取ることができる。

 1931年の満州事変に始まった15年戦争について、その経過や領土の帰趨、為政者や権力者のふるまい、被災面積や死者数、賠償額については、正史とされる歴史書や教科書に書いてある。しかし、戦時下の庶民がどんな暮らしをしていたのか、長い間、わからなかった。暮らしを軽んずる風潮が強かったからだ。

 その実相が少しずつ明らかになるのは、連合国による占領が終わった1950年代後半から。黙って耐えることにならされてきた女性たちが、重い口を開き始める。

 注目されたのは、1959年に出版された鶴見和子・牧瀬菊枝編『ひき裂かれて 母の戦争体験』。「生活記録運動」の流れのなかで、職業的な書き手ではない女性たちが、戦争中の窮乏生活や学徒動員や疎開の辛さを吐き出した。戦争体験という言葉もまだ耳慣れない時代、グループで意見交換しながらまとめた「声なき声」の記録である。巻末に鶴見が、個人的記録から庶民の戦争史にたどりつくための第一歩だとしており、この頃から母親運動や原水禁運動などの取り組みのなかでも、さまざまな体験が語られていく。


鶴見和子さん=97年3月

 70年には「東京空襲を記録する会」が結成され、全国各地でも同じような動きが始まる。翌年、「空襲・戦災を記録する全国連絡会議」が発足。自治体も応援した戦災誌が次つぎ刊行された。降り注ぐ焼夷弾の雨をくぐって生き延びた人、火事が迫り家屋の下敷きになった家族を助けられないまま逃げた記憶など、戦災史には庶民の苦しみ、悲しみがいっぱい詰まっている。

 女性史の分野では、80年代から地域女性史の編纂が盛んになった。自治体が編んだものから、民間の小さなグループによる自費出版まで、出版の形は多様だが、通史や年表とともに聞き書き集が付いている点は共通している。

 わたしも各地の地域女性史編纂に関与し、多くの高齢女性から聞き取りをした。明治から昭和ひとけた世代のライフヒストリーには、例外なく戦争体験があり、そのすさまじさに息をのんだ。

 父や夫を戦場に奪われてどんなに心細かったか。国防婦人会で出征兵士を送ったときの高揚感。神国日本が負けるはずがないと信じこまされていた教育の怖さ。一つとして同じ話はなかった。これらは単行本や冊子として各地の図書館や女性センターに所蔵されている。

 唯一の国立女性センターである国立女性教育会館(NWEC)の女性教育情報センターには、80年代以降の女性関連図書が収蔵されており、文献情報データベースで「戦争体験」を検索すると、図書だけで685件がヒットする。この検索語ではカウントされない原爆関係の証言集なども合わせると、膨大な手記や体験記が集積されている。

 ただ、これらの個人的な経験の記録が、社会の経験として共有されているかというと、そうはなっていない。もどかしい思いがある。さらなる伝える工夫が必要だ。

 ここで1冊、手に入りやすい体験記として、2年前に出版された『戦中・戦後の暮しの記録』を紹介する。暮しの手帖社の募集に応じて寄せられた体験記2390編から約100編を選んでいる。副題に「君と、これから生まれてくる君へ」とあるように、戦争を知らない若い世代にも理解できるよう、目配りのきいた編集になっている。

 手記だけでなく、当時の写真、日記、家計簿、戦場からの絵手紙と、表現形式はさまざま。体験者本人が書いたものだけでなく、子や孫の聞き書きもあれば、父の手記を娘が抜粋して投稿したものもある。ということは、当事者がいなくなっても継承の手だてはあるということだ。

 空襲の記録は各地から寄せられている。国民学校の教師だった女性の絵日記には、夫が徴兵されたのち、子どもを抱えての日々がこまやかに綴られていて、戦時下の日常と敗戦、その後の日々がよくわかる。

 駐在所の前で鉱山から逃げた「シナ人」が警棒で殴られているのを見てかわいそうだと言って叱られた人、捕虜を警棒で殴らされて辛かったという人もいる。

 捕虜だったイギリス人男性本人の手記もある。トンネル工事を監督する日本人班長が「陽気で優しかった」と回想されていてホッとする。

 日本軍の戦死者の大半は餓死や病死とされているが、内地で暮らしていた人びとにとっても、本当の敵は飢餓だった。戦中も戦後も食べ物が極端に乏しく、いったん胃袋に納まったものを反芻する能力が身についたという人がいる。その手記のタイトルは、「もう牛に戻りたくない」。

 満州からの生還者の思い出はどれもむごい。台湾、朝鮮、樺太からの引き揚げも採録されている。

44年、硫黄島が日本軍に接収される。当時14歳だった女性は家族とともに島を追われた。戦争が終わって島に帰れると思ったが、戦後は占領軍に接収され、その後は自衛隊基地ができてしまう。今も島に帰れない。だから「終戦はまだきてないの」と孫に語る。

 戦時中の新聞を開くと、かくかくたる戦果が報じられているが、その裏で庶民の暮らしがどれほど困窮していたか、物質的にも精神的にも追い詰められていたか、なにより戦争によってどれほどふつうの暮らしを奪われ、運命が変転したか。この記録を読むと実感できる。

 個人の権利や命の価値が軽んじられ、弱き者、子ども、女、高齢者、障害者が容赦なく切り捨てられた。それが戦争なのだと、改めてかみしめる。
(女性史研究者・江刺昭子)

 

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7本指のピアニスト

2020年08月17日 12時23分39秒 | 事件・事故

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テラが続伸、治験でコロナ患者全員の症状軽減と発表

2020年08月17日 11時48分09秒 | 医科・歯科・介護

【特色】テラ:東大医科研発ベンチャー。樹状細胞ワクチンによるがん免疫細胞療法の再生医療製品化目指す

メキシコで実施中の新型コロナウイルス感染症治療の臨床試験の進捗を発表し、好感されたようだ。

 臨床試験の責任医師からの報告によると、人工呼吸器に依存する中程度から重度のCOVID-19肺炎患者10名に子宮内膜由来幹細胞による治療が実施され、その全員の症状が軽減したという。

また、臨床試験データ(治療群30名、コントロール群15名)の解析は7月末にも完了する可能性があるとしている。

 株価は治療薬開発の期待を背景に6月9日にかけて2175円まで急上昇。

その後は「治療薬開発は本当か」との一部報道を受けて15日に1027円まで売られたが、18日からは再び大幅高と、短期資金を巻き込んで目まぐるしい値動きとなっている。

(取材協力:株式会社ストックボイス)

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テラがS高、新型コロナ感染症治療の臨床試験で近々薬事申請

2020年08月17日 10時20分17秒 | 医科・歯科・介護

樹状細胞ワクチンによるがん免疫細胞療法の再生医療製品化を手掛けるジャスダック上場のベンチャーのテラ(2191)が3連騰した。午後1時22分現在、前営業日比294円(20.69%)高の1715円で推移している。一時は制限値幅上限の同300円高の1721円ストップ高まで上伸した。

 19日に、メキシコで実施中の新型コロナウイルス感染症治療の臨床試験について、同国イダルコ州知事が成果を見極めたうえで、近々薬事申請に向けて共同作業に着手すると発言したことを発表し、買い材料視された。同臨床試験は新型コロナウイルス感染症の重症患者に対する間葉系幹細胞による治療の臨床試験。当該治療に関する知的財産権は、その一切が当社に帰属し、全世界で当該技術を独占的に利用することができるとしている。

(取材協力:株式会社ストックボイス)

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年間1000件近く…13歳未満の性被害、守るために大人ができること

2020年08月17日 10時18分12秒 | 事件・事故

8/17(月) 7:01配信
現代ビジネス

発覚せず、再犯率も高い小児性犯罪

コロナ禍で始まった夏休み。子どもたちだけで行動する機会も増えるため、子どもを狙った性犯罪には十分警戒が必要だ。

【マンガを読む】学校での性暴力の現実が…『言えないことをしたのは誰?』

 警察庁の平成30年の統計によると、13 歳未満の子どもが被害にあった強制性交等、公然わいせつ・強制わいせつ等の認知件数は年間995件発生。実に1日に2件以上起きている計算だが、子どもの性被害は、統計上に表れない暗数が想像以上に多いと言われている。

強制性交等罪とは、口腔、肛門、膣へ陰茎を挿入する/挿入させられる被害のことを指す。ズボンを脱がせて写真を撮ること、下着に手を入れること、すれ違いざまに触ること、露出することは、公然わいせつ、強制わいせつ、児童ポルノ法違反に分類され、電車内で起きたそれらは条例違反などに問われる。

 子どもたちを性被害から守るために何ができるのか──。
実際に起きた事件から、そして小児性犯罪に詳しい専門家、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さん、臨床心理士・公認心理師の齋藤梓さんへの取材を通して、有効な対策を考えてみたい。

小学生低学年のおぞましい記憶 
 神奈川県に住むA子さん(40代)は、小学生低学年だったある日、遊びに出かけた友人宅で性被害に遭った。

 「叔父と名乗る人に、居間のこたつの中で膝の上に乗るよう命じられました。嫌でしたが、子ども好きな人なのかな、と思って言われた通りにしました。すると、下着の中に手を入れられ、性器を触ってきたのです。逃げ出したいのに、恐怖で体が固まってしまい動けませんでした。

 今起きていることは何? 混乱して答えが出ない中で、同級生が心配そうに私の顔を見つめていたことは覚えています。平気なふりをしていないと友人が困るような気がして、助けてと言えませんでした。こたつの中で、触られ続けました。途方もなく長い時間に思えました」

 その後、拘束を解かれ、呆然とした状態のまま帰宅したAさんは、母親や祖母に起きたことを告げた。しかし「あとは任せなさい」と言われた。その日以来、家族の誰もそのことに触れようとしなかったという。

 あの日、帰ろうとしたA子さんを友人は追いかけてきてこういった。
「ごめんね、私もお姉ちゃんも、同じことをされているの……」

 「彼女が謝ってきたことで、やっぱり悪い人だったんだと納得できました。でも犯罪だと理解したのは、大人になってから。友人も苦しかったはず。あの男が『友達を連れてこい』と友人に命じたのではないか。私のほかにも、犠牲になった同級生がいたかもしれない。振り返るととても苦しくて、悔しいです」と、A子さんは明かしてくれた。

 このように子どものごく身近な人間関係の中で、性犯罪が起こるケースもある。法務省の調査では、一度子どもに手を出した犯罪者の再犯率は、84.6%と極めて高いこともわかっている。

 最近では、大手仲介サイトに登録し、保育士の資格も持っていたシッターの男性2人が、子どもの下半身を触るなどのわいせつ行為をした疑いで相次いで警視庁に逮捕された。男たちは、過去にも子どもへの性犯罪を繰り返していたと伝えられた。コロナ禍で、親がリモートワークに従事する中、壁一枚隔てた距離で性犯罪が行われたことに、世の中は騒然となった。

 

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「黒い雨」線引きの根拠は

2020年08月17日 08時56分54秒 | 社会・文化・政治・経済

国が黒い雨の援護対象区域の根拠としている宇田道隆氏の論文のもととなった調査メモ。広島地方気象台に残されていた資料を原告団が解読した
拡大国が黒い雨の援護対象区域の根拠としている宇田道隆氏の論文のもととなった調査メモ。広島地方気象台に残されていた資料を原告団が解読した

 ■援護区域、訴訟で妥当性問う

 原爆投下後、広島に降った「黒い雨」をめぐる集団訴訟。原告たちは放射性降下物の影響を受けたと訴え、「被爆者と認めてほしい」「せめて大雨地域と同様の援護を」と求めてきた。降雨地域に国が示した「援護の線引き」の根拠は何か。それは妥当なのか。(宮崎園子)

 ■国の大雨地域限定「不合理」

 「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」。原告は、被爆者援護法が定める被爆者の定義(3号被爆者)に該当すると主張してきた。

 しかし被告側(広島県、広島市、訴訟参加する厚生労働省)は、原告が黒い雨を浴びた客観的証拠はなく、浴びたとしても高濃度の放射性物質は降っていないとして、3号被爆者には当たらないと反論する。

 訴訟でのもう一つの争点が、無料で健康診断が受けられる援護区域を「大雨地域」に限定した国の措置の妥当性だ。小雨地域などにいた原告たちは、国の援護の枠外に置かれてきた。

 国が「線引き」の根拠にした論文がある。

 「黒塵煙の柱が立ち昇って全市の上を蔽(おお)い、続いて生起した驟雨(しゅうう)によって洗い落とされて、市西方の黒雨現象となり」

 原爆投下直後から4カ月間、広島管区気象台(当時)の宇田道隆・気象技師らが黒い雨の降った地域を歩いて調査した結果をまとめた。「気象関係の広島原子爆弾被害調査報告」だ。連合国軍総司令部(GHQ)によるプレスコードが解かれた翌年の1953年になって発表された。

 国は、この報告に基づくいわゆる「宇田雨域」のうち、「大雨地域」に限り「健康診断受診者証」を交付。循環器機能障害など特定の疾病を発症すると、被爆者健康手帳に切り替えている。

 「援護区域を大雨地域に限定するのは不当だ」と訴える原告は、こうした運用の科学的・合理的な根拠を示すよう被告側に要請。裁判所も詳しい説明を求めた。

 これに対し被告側は、降雨地域の一部で高濃度の放射線が検出された報告があり、1973年の広島市などの調査で降雨地域の有病率が4割だったとした上で、「被爆者援護という政策的判断からあくまでも暫定措置として定めた」と主張した。だが、大雨地域以外を援護対象から外した理由は明確に答えていない。

 原告側は、宇田氏の論文のもとになった聞き取りメモなどの記録170件を入手して、解析。「旧広島市外は調査地点がまばらで、調査をしていない地域も多々ある」として、線引きの根拠としては不合理だと訴えている。

 ■「もっと広範囲で降った」 専門家ら意見

 黒い雨はどこまで降り、浴びたことで生じる健康被害はどんなものなのか。原告側は訴訟で、様々な専門家の意見を示してきた。

 気象庁気象研究所の増田善信元室長(96)は89年、論文「広島原爆後の『黒い雨』はどこまで降ったか」を学術誌で発表。宇田論文のほか、アンケート結果など2千超のデータをもとに、黒い雨は島根県境近くまで降り、範囲は「定説の4倍」だとした。

 原告側はこの「増田雨域」が、48年にかけての専門家による残留放射線調査結果とも符合するとして、信用性があると主張する。

 「偏西風の影響を受けていたと考えられ、国の援護対象区域のようにきれいな楕円(だえん)形に雨が降るわけがない。放射性物質を含むちりは、雨よりもっと広い範囲で降っていた」。2016年3月、都内で講演した増田氏はこう力を込めた。

 昨年10月には、放射線影響研究所の統計部専門委員も務める大瀧慈・広島大学名誉教授が証人として広島地裁に出廷。黒い雨の降雨地域や、考えられる健康被害について述べた。広島市が周辺市町も含めた住民3万7千人を対象に2008年度に始めた健康意識調査の解析を担当した一人だ。

 調査では、原爆投下から約2時間後に黒い雨が降ったとみられる地域が最も拡大し、宇田雨域に比べて東西、南北方向とも10キロ前後広い円内で降った可能性を指摘。「大雨地域」外で黒い雨を体験した人の約10%が出血や下痢、脱毛などの症状を自覚していたことも明らかになった。

 しかし、被告側は増田・大瀧の両雨域について調査方法に問題があるなどとして、正確性に欠けると訴えている。

 大瀧氏は、黒い雨だけでなく、上空に巻き上げられた放射性微粒子が遠方まで飛散したと指摘した上で、原告たちが内部被曝(ひばく)した可能性があると証言した。

 被告側は、「100ミリシーベルトを下回る放射線に被曝した場合に健康被害が発症するかどうか定かではない」などと主張。原告側が「残留放射線による内部被曝は、実効線量(シーベルト)によって人体に影響があるかを評価できない」と反論すると、「黒い雨に必ず放射性微粒子が含まれているという科学的根拠を欠く」と再反論。内部被曝の影響については「論ずるまでもない」とした。

 原告弁護団事務局長の竹森雅泰弁護士は「福島原発事故が起きるまでは、国にとって『黒い雨』は過去の話だったのかもしれない。だが内部被曝などの放射線被害が、福島にも影響するようになった。だから国は認めるわけにはいかないのではないか」と語る。

 ■内部被曝「我々だけでない」 原告・高東征二さん(79) 広島市佐伯区

 「裁判で今まで見えなかったことが見えてきた。早(はよ)うやりゃあよかったと多くの人が言う」。原告の高東征二さん(79)は話す。

 「原爆『黒い雨』訴訟を支援する会」の事務局長も務める。22回の口頭弁論を通じて出てきた資料や証人尋問などで、黒い雨発生のメカニズムや、各雨域が定められた背景事情、そして内部被曝(ひばく)などについて明らかになった。訴訟に国(厚生労働省)が加わったことで、被爆者援護をめぐる国の姿勢もわかったという。

 原爆投下時は4歳、観音村(現・広島市佐伯区)の自宅にいた。空の色が変わり、焼けた紙切れが飛んできた。地域に原因不明の病で死んでいく人が多い中、約20年前に地元で「黒い雨の会」を設立した。

 静岡で開かれるビキニデーの集会に何度も通い、連帯を呼びかけてきた。太平洋ビキニ環礁で米国が行った水爆実験でマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員が被曝した事件を記憶する催し。核実験を繰り返されたこの時期、周辺では1千隻近い漁船が航行していたとされるが、それらの漁船の被害は未解明のままだ。

 5年前、広島を訪ねてきた福島の人々の前でも講演した。「国は内部被曝を認めていない。『黒い雨』がしっかりせんからと言われたが、確かにそうです」

 6月末、「原告の思いを聞いて」と一人で記者会見を開いた高東さんは言った。「内部被曝の犠牲になっているのは我々だけではない。黒い雨の裁判を、多くの人が見守っています」

 ■黒い雨に関するこれまでの主な調査研究

 <1945年(発表は53年)> 広島管区気象台(当時)気象技師宇田道隆氏らによる調査報告。「長径19キロ、短径11キロの楕円(だえん)形ないし長卵型の区域に相当激しい1時間ないしそれ以上も継続せる驟雨」(大雨地域)、「少しでも雨の降った区域は長径29キロ、短径15キロに及ぶ長卵型」(小雨地域)=いわゆる「宇田雨域」

 <73年> 広島県・市による「黒い雨降雨地域健康状況調」で、宇田雨域の住民の約4割が病弱者か病気と判明

 <76、78年> 厚生省(当時)による残留放射能調査。黒い雨地域とその他の地域との間に違いが認められないと報告

 <88年> 広島県・市の専門家会議で、元気象研究所室長の増田善信氏が「定説(宇田雨域)の4倍近く広い範囲で黒い雨が降った」と最終報告。翌89年の日本気象学会「天気」に論文掲載=いわゆる「増田雨域」

 <2001~04年> 広島市の「原子爆弾被爆実態調査研究」。無作為に選んだ市民約1万人に調査し、原爆体験のうち特に黒い雨の体験が心身への影響を与えている可能性を示唆

 <08年> 第2次「原子爆弾被爆実態調査研究」。広島県協力のもと広島市が実施。広島市と周辺2町の約3万7千人にアンケート、約900人に面談し、黒い雨が宇田「大雨地域」の約6倍の範囲で降ったと推定。10年に最終報告

 <10年> 広島大などの研究グループが、宇田「小雨地域」の民家の床下の土壌から、黒い雨によるとみられる放射性セシウム137を検出

朝日新聞デジタル

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