あの日を刻むマイク ラジオと歩んだ九十年
内容紹介
1945年8月14日、女子アナウンサーだけ集められた部屋で上司にこう告げられた。「明日、日本は負けます。反乱軍がきて『この原稿を読め』などと言われても、抵抗する必要はありません。まず自分の身を最優先に考えなさい」。激動の時代を生きた一人の女性が語る日本の昭和史、平成史。
戦前から戦争を経て、戦後、そして高度経済成長期、平成。家庭と職場を両立させながら、アナウンサーとして、ディレクターとして、女性として、世の中に絶えず問題提起を続けた彼女にしか語れない言葉がある。様々な著名人との出会いやエピソードを交えつつ、ラジオを通して、いま改めて近代日本が歩んできた道を振り返る。
戦争経験者が少なくなる中、時代の証言として後世に残したい珠玉のエッセイ。
【著者略歴】
武井照子(たけい・てるこ)
1925年埼玉生まれ。1945年、NHKラジオアナウンサーとして終戦を迎える。戦後はGHQ統治下で「婦人の時間」のアナウンスを担当。番組を通して村岡花子や壺井栄、林芙美子とも出会う。アナウンサーを退いてからはディレクターとして谷川俊太郎やまど・みちお、灰谷健次郎らと共に数多くの子供番組の制作に携わる。現在、朗読サークルで読み聞かせをする日々。
内容(「BOOK」データベースより)
玉音放送、GHQ指導下の「婦人の時間」、長寿番組「お話でてこい」、名作「ひょっこりひょうたん島」etc…九十四歳、元NHKラジオアナウンサーが綴る、時代の記録と出会いに満ちたメモワール。
「自分の目で見て、感じたことを言葉にするしか、できないのですよ」詩人のまど・みちおさんの言葉が忘れられないという。
武井さんは詩人が控えめに語る言葉に、自らを省みてハッとした。
「当たり前のことなのだが、今はそれができていない」と。
「まどかさんの詩を読むと、難しい言葉はないし、すっと体に入ってくる」
「平明で易しい言葉なのに、天地」を感じる」
戦前、戦中、戦後とNHKラジオのアナウンサー、製作者として、退職後は朗読の指導者として人生の大半を「素朴で、心に伝わる言葉、語り」を追い求めてきた現在94歳の著者の自分史です。
終戦直後の混乱期にアナウンサーとして担当した「婦人の時間」、ディレクターとして制作した「お話でてこい」など関わった多くの番組にまつわるエピソードが興味深く楽しめます。また著者は、NHKの”働く母親第一号“でもあり、男性中心社会の当時、仕事と家庭を両立させる困難さは十分想像できます。
そんな時代の中悩みながらも自分の信念を貫いてきた、著者の真摯な姿勢には感動します。そしてこれまでの人生での出会った素晴らしい人たちに感謝しながら、その交友の話も面白く読みました。小生は著者とは16歳年下ですが著者の歩んできた時代の記憶はあまり変わらず、とても懐かしく読みました。