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春が来た

低レベルの放射線は有益? 「ホルミシス仮説」への考察

2011年07月05日 | 健康・病気
福島第一原発から直線で55kmに位置する郡山市に「前立腺がん患者の会」が在り、定期的に情報交換と勉強会を行っているが、6月19日に行われた会合のテーマが、「放射線物質からいかにして身を守るか」。 ところが注目を集めたのは「放射線ホルミシス仮説」なる理論。 ホルミシスとはギリシャ語のホルメに由来し、「刺激する」の意味で、結論から言うと 「高レベルの放射線は生体に有害であるが、低レベルの放射線は有益である」 つまり毒にも薬にもなるとというもの。 ちなみに人間の健康にとってにとって最適の数値は、年間60~100ミリシーベルトとのこと。 この仮説は米ミズリー大学の生化学教授 「トーマス・D・ラッキー」博士が1982年、米保険物理学会誌で発表した。

先日、産経新聞の「正論」に、元駐タイ大使の「岡崎久彦」氏が、「低レベル放射能 それほど危険か」を寄稿していた。 その中で、米有力シンクタンク「ヘリテージ財団」が、東日本大震災への対応ぶりをレビューして、今後の米国への教訓とするために発表した報告書を紹介している。 報告書はまず称賛、「日本国民は素晴らしい規律と耐え忍ぶ能力とを示し、暴動や大混乱などは生じなかった」と。 他方、日本政府の対応の中で最も問題だったのは、「低レベル放射能にどの程度のリスクが有るかを、有効に伝えることができなかったことである。」 と指摘している。 

そして米国は将来の同様な危機に際して、「低レベル放射能についての正確な情報の提供に努力すべきである」と唱えている。 もっと詰めて言えば、「あるレベル以下の放射能は危険でないということを、初めからはっきり国民に知らせられれば、今回の日本のような混乱は避けられる」と言っている。 注目されるのは2008年発表されたラッキー博士の論文で、これは広島・長崎の被爆者8万6543人の健康状態を追跡調査した学術報告である。 まず被爆者の両親から生まれた子供に、遺伝子上の奇形児は一人も見つかっていない。 また低レベル放射線を浴びた母親から生まれた子供達の方が、一般平均と比較して死産、先天性異常、新生児死亡 などの比率が低い。 

がんについては平均的被爆者の白血病による死亡率が、市外の2つの町の人々より低かった。 約20ミリシーベルトの被曝線量を浴びた7400人のグループでは、がん死亡率の著しい低下が見られた。 結論として低線量放射線は、「日本の原爆生存者の健康に生涯にわたり寄与した」と言っている。 「ホルミス効果」とは生物に対して有害なものが微量である場合には、逆にいい結果を表すという「生理的刺激効果」のこと、つまり毒を薄めれば薬になるということ。 しかしラッキー博士の論文はこれまで世界の放射線学会を支配してきた 「どんな微量でも放射線は危険である」という学説と真っ向から対立し、その主張は省みられないまま片隅に埋もれてきた。

ところが近年、多くの専門家たちによる研究・実験により、ラッキー理論のメカニズムが明らかにされされ、これまでの学説を覆す研究も発表され、現実に放射線ホルミスは臨床の現場で、医療の補助として用いられるようになってきている。 前述の患者の会の中でも、末期の前立腺がんや薬の耐性により治療方法が無くなってしまった会員がすでにホルミシス療法を実践し、良い結果も報告されてきている。 しかし全国民がナーバスになっている昨今、放射線に関し肯定的な話は反発を招く恐れもあり、多くを語るのは控えた方がよさそうだ。  


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