カキぴー

春が来た

シナトラ&「地上より永遠に」

2011年01月19日 | 映画
NHK深夜便で僕の贔屓は2時からのジャズ番組。 正月明けは「フランク・シナトラ」の特集、どうせ聞き飽きたものばかりだろうと、途中でスイッチを切りもう一眠りするつもりで聞き始めたが、結果は見事に裏切られた。 まるで僕のようなリスナーをあざ笑うかのような優れた選曲で、結局メモを取りながら最後まで聞いてしまった。 例えばガーシュインの「誰も奪えぬこの想い」や、歌唱部門でグラミー賞を取った「楽しかったあの頃」など、曲は覚えてても忘れていた名曲ばかりだったが、しばらくぶりに聴いて心に残ったのは、アメリカ映画「地上より永遠に」のテーマ曲。

この映画は第二次世界大戦直前のハワイ・ホノルル米軍基地を舞台に軍隊生活の過酷な現実と友情、戦時下における二組の男女の実らぬ恋を描いたベストセラーの映画化で、真珠湾攻撃も取り上げられている。 戦前のアメリカ陸軍を批判したアメリカの作家「ジェームズ・ジョーンズ」の同名小説は、出版されるとセンセーションを巻き起こし、二つのスタジオが映画化を試みるが、国防省の反対や様々な問題などに拒まれ実現できずにいた。

この小説に惚れ込んだコロンビア社の社長「ハリー・コーン」は、多額の金額を払って映画化権を獲得し、脚本の一部変更を条件に、軍に撮影協力を承託させる。 「真昼の決闘」で高い評価を得ていた「フレッド・ジンネマン」を監督に抜擢、主役のブルー役に「モンゴメリー・クリフト」、軍曹役に「バート・ランカスター」、大尉の妻に「デボラ・カー」、ブルーの恋人に「ドナ・リード」、そしてブルーの親友で、軍隊内の虐待で惨めに死んでいくマジオ役にフランク・シナトラが起用される。

一時期人気絶頂にあったシナトラだがこの映画が作られる頃、歌手としても俳優としても人気が低迷しており、さらに喉の疾患で一時声が出なくなりスランプに陥り苦しんでいた。 このまま「過去の存在」となるやに思われたが、地上より永遠に の脚本を読んでマジオ役に賭けてみようと決心し、出演を懇願する手紙に「マジオ」とサインしてコーンやジンネマンに売り込み、その情熱が買われてマジオの役を手に入れている。

1953年に公開された 地上より永遠に は、興行的に大当たりしただけでなく、この年のアカデミー賞最優秀作品賞を始め8部門の賞を獲得し、翌年米国連邦議会図書館において「アメリカ国立フィルム登録簿」に登記される。 人の運命は分からない、シナトラの演じた役は彼にとって格落ちの端役だったが、汚れ役を熱演し、アカデミー助演男優賞を受賞したのが転機となり、奇跡的なカムバックを果たす。 因みにこのときの出演料は僅かに80000ドルだった。


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