カキぴー

春が来た

映画「大空港」&「ボーイングー707」

2012年04月15日 | 映画
乗客数も速度も標準的なプロペラ機の約2倍の輸送能力と性能を実現したボーイング社の「B-707」は、1952年~1954年にかけて連続墜落事故を起こして運用が停止された世界初のジェット旅客機、「DH・106コメット」の事故で得られた教訓を生かし、入念な安全対策を施して開発された第一世代を代表するジェット旅客機。 最初から大西洋無着陸横断が可能な仕様で設計されたので、殆どの航空会社が707やライバル機の「DCー8」を競って導入し、その多くが太平洋・大西洋横断路線やアメリカ大陸横断路線などの長距離花形路線に投入された。 このため1950年代に至るまで大きなシェアーを占めていた豪華客船や貨客船による大西洋・太平洋横断定期航路は姿を消すことになる。

707を主役にして、当時のハリウッドを代表する豪華スターが競演する航空パニック映画が、1970年に公開されこの年の世界興行成績第2位となった、アメリカ映画「大空港」。 原作は、綿密な取材でさまざまな業界の内幕を描くイギリスの作家「アーサー・へイリー」のベストセラ小説で、彼は第2次大戦中イギリス空軍のパイロットとして中東や極東で活躍していたことから、この作品でも専門知識が随所に生かされている。 例えば大型機の場合、機長ないしはコーパイが席を立ち操縦者が一人になるときは、万一に備えて必ず酸素マスクを着用する規則があるのだが、それを知らないスチュワーデスをコクピットの中でからかう場面を見てると、飛行気乗りだった著者の遊び心が伝わってくる。

いわゆる「グランドホテル方式」で展開される映画の舞台はシカゴのリンカーン国際空港となっているが、実際は存在せず、モデルになったのはシカゴ・オヘア国際空港で、ロケはミネソタ州・ミネアポリス国際空港で行われた。 何年ぶりかの大雪に見舞われたリンカーン空港で着陸したグローバル航空45便・707旅客機が、誘導路で脱輪し、積雪の中に車輪が埋まってメイン滑走路が封鎖される。 そんな中イタリア・ローマに向けて飛び立ったグローバル航空2便に、爆発物を持ち込んだ男が乗っていることが空港で判明、高度を下げながら空港に引き返すことと、爆発を未然に防ぐようカンパニー無線で機長に指示する。 しかし男を取り押さえることに失敗し、トイレ内で爆発が起きて機体に穴があき、その破片で垂直尾翼と水平尾翼が損傷を受ける。

重要な操縦系統にダメージを受けた2便は、かろうじて機体を制御しながら空港に向って飛行中だが、進入・着陸可能な滑走路は「RW-29」だけで、しかもそこには動けなくなった45便が滑走路をふさいでおり、これ動かさないと2便の大惨事は避けられない。 ここで登場するのがベテラン整備士に扮する「ジョージ。ケネディ」で、2便の707に乗り込むと操縦席に座り、エンジンをかけてスロットルを押し込んでいくが機体は揺れ動くだけで前に出ない、これ以上回転数を上げるのはマニュアルで禁じられているが、隣の整備士に彼は言う「707は大丈夫!」。 危機一髪を救った彼はパイロットの資格を持たずに機体を動かすのだが問題はないのだろうか? この辺のところも原作者はご存知で、彼は空港内を移動できるライセンス保持者だったのだ。

45便が機内爆発を起きてから着陸できるまでの緊張感は、パニック映画の中でも群を抜いている。 コクピット、タワー、レーダー室、などを多角的に画面分割して効果を上げ、航空フアンにとっては飛び交う専門用語を聞いてるだけでも十分に楽しめる。 その後エアポートシリーズは3本作られたが、複雑に交差する見事な人間ドラマも含めて「大空港」を超えた作品は無かったと、僕は評価している。 ところで707は、航空機マニアで知られる俳優ジョン・トラボルタの所有機の1機で、彼はオーストラリア・カンタス航空より購入したことからカンタス航空の親善大使に任命され、それからカンタス航空の塗装に変更している。 2004年には自ら操縦して来日しているし、2010年1月のハイチ地震の際には愛機で救援物資を輸送している。


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