ダーウィンとアメリカ

2007年06月26日 | 一般教養
先日書いた通り、高校でまともに勉強してこなかった私は、進化論で有名なダーウィン(Darwin)のことは留学して初めてまともに認識しました。

進化論は生物学に関ることですから、私はまずBiologyのクラスで教わり、次にPhysical Anthropologyでも同じレベルで教わったんですが(つまり少しダブっていた)その後、歴史や文化、政治に関するクラスではたいてい「ダーウィン進化論」が何かしら顔を出し、差別主義の人たちがこの進化論を利用し、有色人種は白人より劣っているという考えや、人種差別行為を正当化していたとも知りました。(その人たちのことをDarwinismと呼ぶ)

進化論がなぜに差別を正当化するものになりえるのか、最初すぐにはピンとこなかったんですが(バカだから)、つまりは生物学的に優れた生物(白人)はその置かれた環境に適合し、繁栄しながら生き残るが、逆に劣った生物(有色人種)はそれができず、いずれは既に絶滅した生物同様、この世から消えるだろうという考えを元に、たとえば黒人が差別を受け弱い立場に置かれたとしてもそれは自然の成り行きであり、白人が上に立つことは当然のことという主張に繋がるそうなんです。

このようなDarwinism(Darwinismにも色々あり)は現代では全く論外扱いだと思いますし、これまで私はそのDarwinism理論を「一部の人間の誤った考え」として受け止めていました。そして同時に、進化論がそんなことに利用され、しかも自分の名前が差別者たちの代名詞として使われるとは、Darwinもさぞや心外だろうにと思っていたんですが、ところがどっこい、Darwin本人までも、白人至上主義、差別の正当化を証明するかのごとく、自分の説を説いていたらしいのです。なぬー!?

実はその説を説いた作品のタイトル「The Origin of Species」にはしっかり続きがあり、本来のタイトルは「The Origin of Species by Means of Natural Selection, or The Preservation of the Favored Races in the Struggle for Life」なんだそう。ガーン そして内容も人種差別そのものなんだそう。ガーン(原本を読んだことがないのでわかりませんが、なんせタイトルの一部になるくらいですからねぇ・・・)

▼参照Web
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%AE%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90

一般的にこの長いタイトルが使われないのは、それでは差別があまりにもあからさまだからだそうで、実際カレッジで習ったときもこんなタイトルは目にしたことがありません。いや、たとえ目にしても、まさか人種差別に関ることだとは全く思わなかっただろうなぁと思います。(英語なだけにあえて指摘されなければ意識が行かないのだ)それにしてもDarwinに裏切られた気分・・・

奴隷制度などをめぐるCivil War (1861-1865)の後、アメリカ国内での人種差別が減るか、またはなくなってもおかしくなかったのに、結局世界大戦後まで黒人たちの権利が確立されなかったのは、この差別むき出しな進化論(1859出版)が一つの原因なんだとか。(タイミング悪く世に出回ったらしい)主に生物学や自然科学分野のものだと思っていたDarwinの進化論、アメリカ社会のこんなところにも影響が出ていたんですね・・・。


ちなみにこのことはAmerican Educational Historyで知りました。ダーウィン本人の差別意識はあまり注目されることでないだけに、あえて記事にさせていただきましたです。(いやいや、驚いた)





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5 コメント

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Unknown (ねじくん)
2007-06-26 12:58:55
はじめまして。ねじくんといいます。たぶん初レスですが、たまに遊びに来て一気読みしてます。進化論といえばアメリカの宗教観と相反する存在くらいの認識しか無かったです。アメリカで普通に生活するにあたり、日本人とアメリカ人の違いってあんまり感じることはないですが、宗教観に関してはやっぱり理解しがたいところがありますね。アメリカの進化論の議論については、差別よりも宗教観による進化云々についてに関する話題が熱いのかな、とか思ったりしますがよくわかりません。

【米国】「地球は6千年前に神が創造」「恐竜はアダムとイブと一緒に誕生」…天地創造博物館
http://blog.livedoor.jp/hokkaidootoko/archives/51007006.html
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Unknown (mane)
2007-06-26 17:43:06
創造論を本気で信じてる人が、アメリカにはたくさんいますよね。(一部の保守派)進化論を学校で教える事を禁止してる州もあるみたいだし…。宗教の認識の違いって難しい…。
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Unknown (30代管理人)
2007-06-27 01:03:35
■ねじくんさん、はじめまして。
疲れる一気読みしてくださりどうもありがとうございますー。


>アメリカで普通に生活するにあたり、日本人とアメリカ人の違いってあんまり感じることはないですが、宗教観に関してはやっぱり理解しがたいところがありますね。


日本人もアメリカ人も生活様式がほぼ同じ現代人ですからねー。日常生活の中で自分が日本人だとか、彼らがアメリカ人とか、特に意識する機会はほとんどありません。(仕事では彼らの図々しい精神に何度も呆れましたが)


>差別よりも宗教観による進化云々についてに関する話題が熱いのかな、


自分の身の回りでは進化論に関し言語道断だと熱くなっている人はいないんですが、アメリカ全体を見ると社会教育問題に値するほどのものですよね。
リンク先覗いてみました。いつの間にかそんなものができてたんですねぇ・・・。



■maneさん、

>創造論を本気で信じてる人が、アメリカにはたくさんいますよね。


普段その話題が出ないだけで、全くの通りすがりの人たち含め、自分の周りにいるほとんどの人がそうなのかな~と思うと、なんとも妙な感じです。仕事で腹が立ったときなんかには、「あんたは神に見放された。地獄行き決定。」と、しらっとした顔で言ってやりたくなりました。神命で生きている人には効き目があるような気がして。(爆)

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Unknown (ウラボン)
2007-06-27 23:45:50
お邪魔します。
進化論って広がりが凄いですよね。
生物学を飛び越えて、ほかの分野にまで影響を与えていますから(社会進化論とか)。
ねじくんさんが話題にした、天地創造と進化論の関係は特に興味深い点に思えます。
なぜなら、キリスト教の”神による秩序ある世界の創造”とゆう信仰が進化論のような自然科学の苗床になったと言えるからです。”存在の鎖”のような考えはその典型ではないでしょうか?(進化論とは違い、ヒエラルキーによる上下への方向性が存在しますが)
まあアメリカは極端な話し、当時ヨーロッパで新興カルト扱いだったプロテスタント(聖書を重要視)が新しい約束の地「エデン」を求め移住したのが事の始まり(ピルグリムファザーズ)のプロテスタントの国なので。
聖書を絶対視する層が居ること自体は理解できますが、ここまで頑なだと冗談に聞こえますね。
もとは進化論も聖書絶対主義者も、”世界には人が理解できる秩序が存在する”とゆう確信に起因するはずなんですがね…。産まれが一緒でも、育ちが違うと仲良く出来ないものなのかもしれませんね。

進化論の人種差別的解釈は、たぶんキリスト教的世界感でごく一般的な認識を補完する形で作られたものに思えます。シェイクスピアの嵐に登場するキャリバンがいい例です。当時のヨーロッパ人(白人)からみれば、有色人種は同じ”人”ではなく獣性や悪魔的要素を含んだ異質な存在ととらえていたようですし。アメリカにおいては、奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人を同じ”人”と認識した場合。奴隷主である白人はキリスト教徒として、教化する義務がでてしまいます。(キリスト教徒は異教徒を改宗させる責任がある)キリスト教への改宗に伴う時間と労力の無駄と、キリスト教の”神の前の平等”の観念が奴隷に与える影響を恐れた奴隷主は「黒人は人ではなく獣であり、救われるべき魂をもたない」とゆう主張をしたそうです。
こういった素地があって、進化論による人種差別につながるんでしょうが…。ダーウィン個人がどのような人種観をもっていたかは知りませんが、進化の概念に方向性を付与しなかった訳ですから、後世に差別の理論補完に使われるのは可哀想なきがします。
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Unknown (30代管理人)
2007-06-28 01:35:35
■ウラボンさん、

>キリスト教への改宗に伴う時間と労力の無駄と、キリスト教の”神の前の平等”の観念が奴隷に与える影響を恐れた奴隷主は「黒人は人ではなく獣であり、救われるべき魂をもたない」とゆう主張をしたそうです。こういった素地があって、進化論による人種差別につながるんでしょうが…。


黒人を「獣」扱いというのもひどいですねぇ。黒人たちに長い間教育の機会が与えられなかったのも、同じ人間でありながらも彼らが奴隷という立場に置かれ、その不平等の事実を黒人たちに認識させないため、反発を防ぐためですよね。このダーウィンの進化論は当時の学者エリートたちの間で広まったそうで、もし進化論が学者たちの目に触れられなければ、差別を正当化するために利用されることはなかっただろうとのことです。でも進化論を信じようが信じまいが、差別を当然のこととするには、当時何でもありだったという感じがします。
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