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ヤブか名医か、ウルフルズ

2012年07月31日 14時13分30秒 | ティモコなエッセイ
風邪をひいて、どうにも早く治したい時、駆け込んでしまう病院がある。

先生一人、看護師さん数人の小さな個人病院だが、先生が 『バンザイ』 で有名なウルフルズのトータス松本に似ているので、ウチではその病院へ行くことを「ちょっとウルフルズに行ってくる」と言っている。

新婚の頃、その辺りに住んでいたのがきっかけだが、現在、そこから車で一時間近くかかる場所に引っ越していても、近所にもっと新しく、立派な病院がいくつもあるのにも関わらず、切羽詰まるとここへ来てしまうのには、もちろん訳がある。

ウルフルズは注射をするのだ。

最近の病院では高熱が出ても「熱が体内の悪い菌を殺してくれるから、無理に下げない方が良い」とし、あまり注射はしない。
私世代の人間だと、子どもの頃病院に連れていかれれば、必ずといっていいほど、おしりにブスッとやられたものだが、そんな時代は過ぎたのだ。

だが、ウルフルズは注射をする。
おしりではなくて上腕だが、診察十秒、胸と背中を聴診器でポポンとやって、お口をあ~んとして、
「風邪だね。一本打っとく?」
と言う。
そして、瞬く間に治してしまう。
神だ。まさに救世主だ。

だがいつ行ってもあまり患者がいないし、遠くなってしまったので、余裕のある時は近くの内科を受診して(普通逆)なるべく自然に、ゆっくりみっちり治すのだが、主婦は忙しいのだ。
パートだってこれ以上休めないのだ。

私はピータンに連れられ、久しぶりにウルフルズの扉を叩いた。
つぶれてないかと心配だったが、まだ健在だった。

待合室には数名。みな常連さんっぽい。
…中毒患者なのか?私もその一人に含まれているのか?

私はその時座っているのもシンドイ状態だったので、早くなんとかしてという思いで、名前が呼ばれると勇んで診察室に入っていった。

一年以上ぶりの松本先生(もちろん本名は違う)は、さらに強烈になっていた。
診察時間わずか五秒。
衣服の上から聴診器をポポンとし、お口の奥をチャッとチェックし、
「う~ん…。注射だね」
と、言った。

注射を打ってもらい、家に帰ってから診療明細書を見たら、病名は“急性咽頭炎及び急性気管支炎”。
たった五秒で見抜くとは、やはり名医なのか。

昨日のことなので、まだ完治はしていないが、多少ラクになった気はする。
以前より治りが遅いのは、私がトシのせいに違いない。
だって、松本先生は隠れ名医だもの。
絶対的救世主だもの。


私とピータンはどうにも早く治したいとき、ウルフルズの門を叩く。

だが、私たちの大切な息子二人を、ここへ連れてきたことは、一度もない。