主役はロボット、発電量37%増の太陽追尾型ソーラー

2013-07-17 14:37:38 | 自然エネルギー

主役はロボット、発電量37%増の太陽追尾型ソーラー

 ロボットによって一つひとつの太陽光発電パネルの向きを変えて、発電効率を上げるユニークなメガソーラーが米国(カリフォルニア州2カ所/アリゾナ州1カ所)で稼働している。

 この太陽光追尾システムは、2010年に設立された米国のベンチャー企業QBotixが開発したもので、ロボットがレールに沿って走り、各架台の軸を横方向と縦方向に調整して太陽の方向に向かせる(図1、図2)。40分ごとにロボットがレールを1周し、すべてのパネルの方向を調整する。1つのシステムで200架台まで対応可能。架台には5~6枚のパネルを設置できる。


■GPS搭載で太陽の位置を把握 

ロボットには、GPS(全地球測位システム)が組み込まれていて、時間と位置から太陽の方向を計算して、天候に関わらずパネルの向きを変える。ただし、台風の時は風の抵抗を減らすために水平に、雪の日は積もらないように急傾斜にするようインターネット経由でロボットに指示できる。信頼性を高めるため、1つのシステムでロボットが2台稼働し、交代で巡回してパネルを調整する。

 ロボットはパネルの向きを調整しているだけではなく、パネルの発電量、パネルが受けている風の力など、各パネルの情報も収集している。ロボットは、無線でインターネットに接続し、クラウド上にデータを保存する。ロボットが人の代わりに巡回するので、メンテナンス費用を抑えることができる。

 また、発電量のデータからパネルの故障が分かるので、早期に故障を発見しロスを最小限に食い止めることができる利点もある。

■パネル価格が下がり設置コスト比率が上昇 

メンテナンス費用だけでなく、設置コストを削減する工夫もされている。ロボットが走行するレールやパネルの架台を標準化してあるので、マニュアル通りに組み立てれば誰でも簡単に短時間で設置できる。

 最近では太陽光パネルの価格が大幅に下がり、パネル価格では大きな差がつかなくなっている。メガソーラーを建設する場合、設置コストやメンテナンス費をいかに下げるかがポイントになってきた。QBotixはその点を重視して開発してきた。

 QBotixのシステムと他の方式を比較すると、QBotixのシステムのコスト優位性が分かる(表1)。10MWの能力を持ったメガソーラーでは、通常の固定式に比べて1MWh当たり6米ドルも電力コストが安くなる。他の追随方式に比べても安くなることが分かる。

 コストが低い要因は、発電量にある。同じ能力を持ったパネルでも太陽光を追尾することで発電量を上げている。表1を見ると、固定型に比べて37%も発電量が増えることが分かる。そのため、初期投資が10%くらい上がっても、その分を吸収できてしまうのである。

■日本市場に向く3つの理由 

「QBotixのシステムは日本に向いている」と、CEOのWasiq Bokhari氏は言う。その理由は3つある。1つは、パネル1枚当たりの発電効率が上がるので狭い土地での発電量が増えること。広い土地が確保できない日本では、狭い土地で効率よく発電することが求められる。

 次に、平たんな土地でなくてもメガソーラーを構築できることである。ロボットが走行するレールは、最大5%の傾斜まで対応が可能である。山岳地帯の多い日本でも設置可能な土地は多い。最後に、台風が多い日本に対応したフラットポジションを用意した点である。風の抵抗を極力抑えるために、地面に平行にパネルを持っていくことで台風への耐久性を上げている。ただし、フラットポジションでどこまで台風に耐えられるのか。実地試験が必要だろう。

 一方で日本に導入した場合、土地の価格が高い点が問題になる可能性がある。QBotixのシステムはパネルを動かすため、通常より隣のパネルとの距離を広くする必要がある。同じ枚数のパネルを敷き詰める場合、固定型に対して約1.56倍の土地が必要になる。

 土地価格の安い米国であれば、発電量の増加分で十分に採算が取れるが、土地の価格が高い日本の場合、土地価格の上昇分を発電量の増加で補えない可能性がある。どこでもコスト優位性が出せるとは限らないのである。

日本でも実証実験がスタート 実は、日本でも既に具体的な活動が始まっている。化学メーカーのJNCの子会社である千葉ファインケミカルが、2013年5月に千葉県市原市でQBotixの技術を使用した実証実験を開始した。

 日本の各地域における年間の太陽光照射量のデータを分析した結果、「QBotixの追尾方式は日本の中では太陽光が比較的少ない北海道でも優位性がある」と、Wasiq Bokhari氏は言う。土地価格が高いところでもコストの優位性を証明できれば、日本でQBotixのシステムが普及する余地は大きい。