「おばさん、最近少し疲れてませんか?」
少年はおばさんの顔を覗き込み尋ねました。
「何言ってるの❗私はすこぶる快調よ。心配にはおよばないわ。それにね、そんな心配されちゃあ、本当に調子崩しちゃうじゃないの。(笑)」
おばさんは彼に向かいいたずらっぽく笑いました。
二年前くらいまではおばさんはいつも大きな声で彼を叱ったりしていました。
彼はみなしごでしたがおばさんに育てられたのです。
少年は、笑いながら
「よかった。」
ポツリとそれだけ言いました。
彼は気の利いた言葉など言えませんでした。
「おばさん、今夜は僕が、おばさんの大好きな魚貝のスープを作るよ。」
「あら、それじゃあお願いしようかねえ。」
少年は、おばさんの腰の痛いのも、辛いのも知っていました。
最近は声に張りがないのも気づいていたのです。
少年は心の中で想いました。
「おばさん、僕はおばさんの周りにだーれもいなくなったって、そばにいるようにするよ。そしておばさんがほしいときにほしいだけ、このスープを飲ませてあげるよ。僕は他にろくなことはできはしないけど、おばさんの笑顔の種になることを探して、そばにいるようにするよ。」
鍋に向かう少年の背中は
少したくましく見えました。
おばさんは笑いながら
そんな彼の小さな背中を
黙って見つめていました。
仄かな灯りの元で
時間は静かに過ぎていきました。