春立つ日の前の節分けの日。
本当は一年で一番寒いとき。
なぜかあたたかい。
さむいさむいと文句を言うくせに
寒さがないと不思議に頼りない。
人間とはかくも勝手な生き物である。
今朝ある人が詩を詠んだ。
太郎をねむらせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
二郎をねむらせ、二郎の屋根に雪ふりつむ。
三好達治。
懐かしい詩だ。
詩を見て情景が浮かび
何となく涙が出そうになった。
昔山奥の雪深いところにこの時期行って
埋もれるように建つ家々の軒先から
子供たちが駆け出してきた。
私はただ、そろりそろりと歩いていた。
そんなおぼつかない私を尻目に
子供たちの歓声は駆け抜けていった。