ぼけの花

のらりくらり日々感じたこと。
自分のための記録。

先生への報告

2006-09-01 00:00:00 | にっき
「君、ボクのタイプなんだよね~。奥さんにするなら絶対君みたいな子がいい!」

・・・なんでですか?

「だって丈夫で長持ちしそうだもん!」

およそ10年前の話。
高校卒業して、女の子であればお化粧して大人っぽくなっていくこの時期。
それに反抗するかのようにわたしは少年路線をいっておりました。
色気どころか色黒だったし。なんだかパンパンしてたし・・・。

そんなわたしを見て副科声楽の先生はニコニコしながらレッスンの度こう言うのでした。

この先生は結構セクハラギリな発言が多かったんだけれど、不思議といやらしさは
感じなかった。いわゆるそんな「キャラ」だったのだ。
わたしの今までの人生の中でこの短大時代は最もひもじかった時期で、シャレに
ならないぐらいお金がなかった。
それを見かねてなのか何なのか、この先生はわたしをよく美味しいものを食べに
連れて行ってくれた。
ミルフィーユはとっても美味しいけど、初めてのデートでは頼んではいけない
(食べるのがむつかしい)とか、お蕎麦屋さんの天麩羅は(この時は貝柱の
かき揚げだった)こんなにもウマイんだ!と知ったのは先生のおかげ。

食べ物だけでなく音楽もたくさんのこと教えてくれた。
わたしがレッスン中泣いたのも、この先生が最初で最後。
しかも歌ってる時じゃなくて、友達が試験で歌う曲のピアノ伴奏してた時。

「君はある程度感じることは出来るのに、それを表現することが出来ない」

音楽のことだけじゃなくって「わたし全て」を一瞬で見透かされたような気がした。
自分が、最も出来なくてずっと悩んでいたこと、だったから。
もう号泣だった。

わたしは正直この短大には全く未練はなく、むしろ早く出たいと思っていたのだけれど
卒業してもこの先生には会いたくて、機会があれば先生の来る日を狙って訪ねたものだ。
そこでお茶しながら・美味しいものご馳走になりながら、先生の昔の話を聞いたり、
わたしの悩み・疑問・思ってることを聞いてもらったりした。
この先もずーっと、この先生にはたくさんのこと話したかった。聞いてもらいたかった。

卒業して3年後、その先生は肺がんで亡くなった。享年51。だったかな。
今思うと「丈夫で長持ちしそう」と言ってくれた頃、すでに病気は発症していたのかもしれない。

それから毎年9月1日になると、わたしは空を見上げて先生にこの一年を報告する。
去年まではちょっとしんどい報告が続いてたけど、今年は割と穏やかに報告が出来たよ。
相変わらず表現下手ではあるけれど、先生が遺したその言葉のおかげで、わたしは
「受信アンテナ」のようなものがいつも立っている。
ふと思うことがいっぱいある。結果悩みも増えたりする。
ぱっと見、ぐじぐじしてるように思われるかもしれないけど、地味に自分の中では結構感動して
たりするのです。。。

先生。
来年はにこやかに、もっとたくさんのこと報告します。
聞いてください。見ててくださいね。

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