札幌北陵高校美術部 2009.4〜2022.3の記録

札幌北陵高校美術部の2009年4月から2022年3月までの記録

【美術部】第46回全道美術展結果報告&出品作品一覧~121015

2012-10-15 02:20:21 | 作品アーカイブ
全道大会が終わりました。本校は結果として

3年 Ω、にゅーとん、海苔
2年 ペコ、サビコ

以上の5人が全道優秀作品として表彰されました。
もう出来すぎです。本当に良い結果をいただくことができました。評価していただいた皆様ありがとうございました。
ということで、ここで全道大会に出品した作品を紹介したいと思います。





『ゆらゆら』:Ω(3年) 全道優秀作品


女の子(どんぶりん)が海底近くで漂っている感じが上手く表現されています。どんぶりんには相当無理な姿勢でモデルになってもらったから、よく見ると下半身には緊張感が感じられ“ゆらゆら”にはなっていないけど雰囲気は確実に伝わる作品です。
背景の描き込みも人物の描き込みもかなり踏み込んでいるし、ただモデルをそのまま描くだけでなく海中にいたらどうなるかという想定をきちんと取り込んでいるから“ゆらゆら”が矛盾していない。実にΩの技術が、才能がプラスな形で火を噴いた作品だと思います。

1年の高文連でキリンを描いて全道優秀、U21でペンギン描いてこけて、2年の高文連でカメレオン描いて大コケして、U21で佐野ちゃん描いて奨励賞取って、今回「鹿描きたい」って俺のところに来た時には流石に一発強めに殴ってやろうかと思いましたよ、正直。笑 1年で成功して路頭に迷う典型だったか、おまえも…と。でも何とか持ち直してくれて良かったです。顧問は事あるごとに言ってますけど高校生が動物を描いた絵が嫌いなんです。何故かと言うと基本的にその動物をきちんと見ているわけじゃないから“何を描いているのかわからない絵”が多い。たとえ身近にいる大好きな愛犬の絵を描いたとしても、犬の本質に迫ってないから完成時には“犬の剥製描いた”みたいな作品が多いように感じます。もし動物を描くなら本当に生きた絵を描かないとダメだと思う。でも、そんなのそう簡単にできるわけないし。ダメ、この話そろそろ終わろう。

海中でゆらゆらしてるから死体なのか? 仮に死体だとしてもこの絵から不愉快さは感じられません。人物をきちんと描いたから美しささえ感じさせます。そういう意味でもこの作品はすばらしいと言えるのではないでしょうか。





『浮かぶ幻』:にゅーとん(3年) 全道優秀作品


2年の高文連では空中に浮かぶ鯨型飛行船を上からの視点で描いたわけですが、今回は地上の人物目線で描きました。実際に札幌駅前に行き写真を撮影して(本来であればスケッチしたいけど人が多すぎて邪魔になるからね)何度も何度も構図を組んだ甲斐がありました。

にゅーとんの絵は兎角いつも共通の弱点があります。要素を詰め込みすぎる、ゆえに説明が必要になることが多くなるという弱点。今回も当初はその弱点がありましたが、それをどれだけシンプルにまとめるか、1枚の絵だけでどれだけ人に違和感のないインパクトを与えるか、たくさん悩んで直して描いていきました。結果からも表現には成功したようなので顧問もホッとしています。
実際に存在しない飛行物と実際に存在する街。これを上手く調和させることはできたのではないでしょうか。

ま、何てったって顧問の父の形見のペンを使用して作品を制作しているわけですからね~。顧問だって失敗したら「お前何指導してたんだ」と親父に祟り殺されちゃうからね。笑 …なんて上手くいったら笑って言うことができる。笑
今度実家に帰った時には胸張って仏前に報告してきます。





『the last』:海苔(3年) 全道優秀作品


昨年度のU21で顧問を描いて優秀賞を受賞し、最後の高文連で顧問を描くって言われた時には超大反対しました。はい、それはもう。でも根負けしました。そこまで意志が固いならと。初めに描いていた30号はまったく別な構図で50%くらいは描いていたんですけど「まだ、間に合うからちょっとやめようず。これエスキースということで」とこの構図に描き直させたのは良い思い出です。笑

「ごちゃごちゃした空間が描きたい」から「美術室を描く」。「モチーフは友人とかいろいろ試した」結果「顧問がいちばんしっくりくる」という、まるで巷を騒がしているゴミ屋敷の主人のような存在の顧問ですが、それはそれで本質を捉えているから困る。笑 そういう意味で本質をきちんと描いた作品だと思います。

海苔には話しましたが、支部美術展でこの絵を前に「やっとこういう絵に出会えた」と喜んでいた初老の女性がいらっしゃいました。この言葉がどれだけのほめ言葉かってことです。自分の感情や表現したいものをガツガツと表現するのは間違いではないのだが鑑賞する人にとっては、それが時として「おなかいっぱい」「重荷」になることはよくあることです。見る人にとって様々でしょうけども、今回の海苔の絵は美術室、顧問の本質を切り取り、実に丁寧に表現できた絵だったんだなぁと思います。

まぁでも何度見ても生徒受けはしないよなぁ。モデルが悪いのか。笑





『パイプ・タイプ・アパート』:(U)(3年)


黒、白、色の3原色、あと2,3色。実はこれだけでこういうの描けるって早々できることではないと思う。実際高文連の流れからしたら、もっと緻密に~細密に~ってな感じを求められるから、こんなペタペタ(絵の具を塗る音)、キュッキュッ(マジックで描く音)みたいな作品は入選できなかった可能性すらある。でも入選したから勝ち~。笑

すべての部屋で見所があるように、部屋の1つ1つにどれだけ個性を出せるかを念頭に指導しましたが、まぁ上手いこと表現できました。(U)はこの辺の才能はあると思うんですがね、何よりフィジカルとメンタルが弱いからなぁ。今日は欠席かと思っていたら16時に「こんにちわ~」だもんね。おっと、この話はタブーか。笑

とにかく見てて楽しい、部屋の1つ1つを見るたびに発見がある良い作品だと思います。大会会場の中でも数少ない“高校生が部屋に飾っても恥ずかしくない作品”だと顧問は思っておりますです。






『color chairs』:どんぶりん(3年) 


唯一の立体作品です。ほんと紛れもなく文字通り椅子の集合体であります。気が遠くなるくらいスタイロフォームを切って、やすりで削って… 200弱くらいの椅子ができたんだったかな。それをどうやって組むか頭を悩ませて… グラデーションになるようにスチレンボンドで接着していって… 支部美術展でブッ倒れたという伝説の作品です。笑 昨年の全道大会では搬出時に壊すというパフォーマンスを行うなど、どんぶりんの作品は何かと話題性があるんだなぁ。笑

ユニットを作り集合させるという方法は単純な方法ですが、案外良く見せるってのは難しいものでこの点に関しては本当に大変でした。実際、もっと良い方法はあったんですけども出品規定にそぐわず断念したりで、まぁたいへんだった作品です。けどインパクトもあるし技術の押し付けもないし、高校生の作品として、かわいくさわやかに仕上がった作品だと思います。

評価カードに「ボンドのはみ出しとかがないともっと良かった」と書かれてありました。ひとつ弁護させてもらえば、本当におっしゃるとおりなんですけど、ボンドがはみ出るくらいガチガチに固定しないと倒れるんです。笑 





『ラトゥールの目で』:ペコ(2年) 全道優秀作品


個人的にはたぶん今回の出品作品の中でも1,2を争うくらい顧問が気合を入れて指導した作品です。
絵に対する姿勢を話して資料を探させペコがチョイスしたのはラ・トゥールでした。そこから2人で話を進めペコは“あえて”立体感を捨てるという賭けに出て結果は全道優秀。勝ったんだか負けたんだかわからない結果になりました。笑

1枚の絵としてね。高文連とか関係なく1枚の絵をどうやって完成させるか、そこだけを考えて制作しました。だからこそペコはあえて立体感を捨てるという暴挙とも言える行動に出て背景も漆黒にしたわけです。背景の闇だってね、手抜きであーゆー風にしてるんじゃないんですよ。けっこうかなりの時間をかけて何層も何層も絵の具を重ねて闇にしたんです。あの絵を見た高校生に「実際にあの闇を描いてみろよ、できるか?おまえらによ」と言いたい。簡単に見えて簡単じゃないんだぜ?
あー、何かぐちっぽくなってる。ごめんなさい。

で、最後に何を言いたいかというとペコの題名のセンスは相変わらずだということです。笑 早く何とかしろよ。





『廃れた階段』:サビコ(2年) 全道優秀作品


こっちは正直うれしい誤算。だってポストから階段が出てるって何だよ。美術展に出てる場合じゃないだろ、病院行けよってな感じです。サビコってほんとに真剣に絵に向き合ってるんだか向き合ってないんだか、というか何を考えているかわからない部員なんですが、今回はお父さんに協力してもらい取材に行って様々な資料を準備して取り組みました。途中いろいろあって背景を大幅に変えたり試行錯誤しながら制作を進めていったわけです。でも、締め切り2日前に(というか2日もあるのに)疲れ果ててしまったのか突如「できました」と終了宣言。

顧問はここで市立函館高校美術部の根っこさんの話をしました。
「サビコ、おまえはできたと思ってるかもしれないけどよ。ここもここもここだって全然まだ描けるじゃん。根っこさん思い出してみろよ、あの子ならこーゆーところをもっときちんと書くぞ? おまえは明らかに根っこさんに劣るんだよ、クズ、カス」

根っこさんに負けたくないという気持ちかもしれませんし、全道大会で会うんだという気持ちだったかもしれません。顧問にはわかりませんが、とにかくここからサビコの制作は明らかに変わりました。残り2日、本当にガシガシキャンバスに向かい合って制作を進めた姿は今も「怖ぇ~」って感じで顧問の頭に焼き付いています。

別にきれいごと言うわけじゃないけど、一緒にがんばってる人間がいると違うんだなぁと。これは時として教員の指導とか教育なんかよりずっと大きなエネルギーを生むんだなぁと実感した作品です。

(4:17)

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