![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/fe/389181c18b2cc4cb1e16956756febdb4.jpg)
すっかり夏の空となった。
汗ばむ陽気である。
今時のこういう暑さを季語では「薄暑」
という。
ヨーロッパでは、朝夕の森の中で夏鳥の
ナイチンゲールが鳴いているだろう。
和名を「小夜啼鳥」サヨナキ鳥と言う。
美声なので詩歌や小説にも登場する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/81/6688a052ae4a4993b9e5690bd4226ba0.jpg)
この鳥のことを書こうと思ったのではな
く、つかみにふと湧いただけである。
フローレンス・ナイチンゲール。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/00/9acebbb8b301d83e354ddafbbcad2acd.jpg)
今日はこの方の生誕日、「国際看護師の日」である。
世界中の看護師は、この方の誓詞を唱和
して看護学校を卒業して職に就く。
その事がどんなに偉大なことか…、ある
意味、医者にとっての「ヒポクラテスの
誓い」以上に尊いことに思える。
医者は「知見と技」だが、ナースは人道
への献身と人の「心」に生涯を捧げる。
私は何故か若い頃から、一歩間違えば死
に至る病を色々経験させられて来た。
そのたびに、長期の入院・療養を余儀な
くされた。
その都度患者として看護師さんにお世話
になったが、この方達はほとんど菩薩様
であると感じて来た。
職業を超えた職業、いわば神の使徒だ。
考えてみるがいい。
勤める場所は、日常の空間では無い。
異常な状態にある人間と目に見えない菌
が蔓延する閉ざされた空間に身を晒す。
鉄血が辺りを占める戦場は、更に過酷な
空間である。
この方は、そこから現世の務めを起こし
、終生、看護の制度設計に尽くされた。
クリミア戦争に従軍して、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/45/f97815fb4fa973c0622a27fea69c59c4.jpg)
「白衣の天使」と慕われ、或いは、
「ランプの貴婦人」と称賛された。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/2d/8638d0e3ad507fd3cc151a901d193237.jpg)
英國に戻ってからは、数々の看護に関す
る提言を統計学に基づいて表し、看護学
を体系付け、幾つもの学校を作った。
看護師の世界を地球上に出現させた。
「天使とは、美しい花を撒き散らす者で
はなく苦悩する者の為に戦う者である」
「個人の犠牲なき献身こそ真の奉仕」
この方が遺された名言である。
理知と使命感が溢れる言葉だ。
38歳で心臓病を病まれてからは、現場を
離れ、50年間を自室で過ごされた。
73歳まで、それまでに得た知見を書き続
け、90歳で天寿を全うされた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/99/e8abf25822ac5ea002f0b7dd370f137c.jpg)
晩年のお写真には、大業を成し遂げられ
た禅定の境地と気品が漂う。
もはや聖人のお姿である。
お陰で、私も今まで生かされて来た。
〈生かされて 先人慕う 薄暑かな〉放浪子
季語・薄暑(初夏)
5月12日〔土〕晴れ
三十年戦争のウエストファリア条約。
ナポレオン戦争のウイーン条約。
クリミア戦争のパリ条約。
どの条約も、次の戦争の火種を残した。
パリ条約の不始末が第一次大戦の引き金
となり、今日まで対立の原因となった。
第一次大戦が第二次の引き金になった事
は皆知っていることだ。
先日書いたように第二次大戦の残り火は
各地に残っている。
そんな第一次大戦の四年前、聖人が相次
いでみまかられた。
アンリ・デュナンとナイチンゲールだ。
お二人とも名家に生まれながら、使命に
生きられた。
Noblesse oblige(ノブレツソ・オブリー
ジュ)「高貴なるが故の義務」に生涯を
捧げられたのである。
かつての日本人にはそれがあった。