みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

鰭(ヒレ)酒

2017年12月01日 | 俳句日記

俳人 亀田虎童子の句に、

《鰭酒や 畳の上で 死ぬつもり》虎童子

というものがある。
昭和元年のお生まれであるから、戦時中
の作かも知れない。

鰭酒は、本来ならば捨てるはずの河豚の
ヒレを、何かの拍子に炙って熱燗に入れ
て飲んだら、乙な味がするというので通
の間に広がったのだそうだ。

だから、元来タダなのであるが、こん日
では需要と供給の原理が働き、高級な呑
み方となり、刺身の一片を入れる「身酒」とともに冬の季語となっている。

私の師も鰭酒が好きだった。
昭和五年生まれの師は、中学生の時分に
福岡大空襲に遭遇して、遥か上空を飛ぶ
B29を睨み予科練を目指したそうだ。

今日、ミサイルが九州上空を通過すると
の緊急通報がスマホに入り、些か緊張し
たが、予定通りの訓練だった。
四日後が、師の命日である。

お世話になった同士達と、鰭酒を呑みな
がら、当日の予定を立てている。
この歳で、先人達の味わった覚悟を追体
験するとは思わなかった。

〈鰭酒の 湯気に幽そけき 鬼の顔〉放浪子
季語・鰭酒(冬)

12月 1日〔金〕曇りのち薄日
打ち合わせのあと、帰ってうたた寝をし
てアップが遅れました。
悪しからず。