寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第3074話) マスク越しの歌

2021年01月03日 | 出来事

 “「音楽は、聴いてくれる人がいて初めて完成するんだよ」。とある指揮者の言葉の意味が、今ならよくわかる。私が学生時代に所属していた大学の管弦楽団では、演奏会にはいつも外部からプロの指揮者を呼んでいた。母校の演奏会のために来てくれた指揮者が、冒頭のように私たちに語りかけ、「聴いてくれる人がいなければ、それは音楽とは言えないかもしれない」とまで言っていた。それだけ演奏家にとって観客の存在は大きいのだと。
 観客がいない状況が続いたのがコロナ禍だ。八日に江南市のお寺であったオペラコンサート。演者たちは二月にできた合唱団の所属だが、一度も演奏会ができず、八日の開催が初仕事だったという。あの指揮者の言葉を思い出すと、演奏の機会を奪われた演者のつらさが手に取るようにわかった。
 美しくも、くぐもって聞こえたマスク越しの声。きっとマスクがなければもっときれいなのだろう、と思うと残念でならない。”(12月10日付け中日新聞)

 「モーニング」と言う記事欄からです。歌を歌う、絵や書を書く、その他諸々、一人で満足することもできるが、多くはそれを見て貰って、楽しんで貰って、評価して貰って満足が高まるものである。そしてまた意欲が沸くものである。そこでいろいろな発表会が催される。指揮者はこのことを言ってみえるのである。江南市のこのオペラでもそうであった。今年はその機会が全く減り、このことをより思い知らされた年になったろう。何事も一方だけではなり立たないのである。
 「お客様は神様」であるというが、ボクはこの言葉があまり好きではない。この言葉のせいか、お金を出す方が偉いというばかりに大暴に振る舞う客がある。そんな傾向がより強くなっている気がする。売る人、買う人、供給と需要があって売買が成り立つ。一方では成り立たない。どちらが偉い訳ではない。しかし時にはどちらかが上回る場合がある。上回った方が、立場的には弱くなる。それはいつ逆転するか分からない。そんなことを繰り返していたら、殺伐とした世の中になる。相手があって成り立つことを思い、お互いに感謝が必要と思う。このコンサートも同じであることを教えてくれている。この気持ちはもう何度も書いたことである。


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