寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
(過去掲載分は「付録」の「話・話」を開いて下さい)

(第3113話) ひな人形

2021年03月22日 | 行動

 “今年もひな人形を飾った。いつもの年より七段がなかなか組み立てられなかった。つくづく年齢を感じた。思い起こせば、娘が生まれてから四十五年間ずっと飾ってきた。最初の娘を死産で失ったが、どうしても娘が欲しかった。待望の女の子が元気に生まれてきてくれ、貧乏生活のわが家には不似合いな七段飾りのひな人形を買った。
 引っ越しのたびに持ち運び、お殿様とおひなさまだけを飾った年もあった。娘が大病で入院中は、病室に飾り、無事を願ったこともあった。娘が嫁いでからも、一人で毎年飾り、癒やされてきた。娘のためというよりも、半分は自分のためだったように思う。私同様、少しシミが出たりほつれたりしてきた。まだまだ処分するには惜しい気がするが「元気なうちにお別れしよう」と声を掛け、ぽんぼりに灯をともしている。訪ねてきた小三の男の孫に処分の話をすると悲しそうな顔をした。「ひな祭りの曲のオルゴールだけでも欲しい」と持ち帰った。
 三月三日の節句が過ぎたら人形供養に頼もうと思う。仏壇の中の抱いてあげることもできなかった娘の位牌にも見えるよう部屋いっぱいに並べたひな人形。心を込めて「今まで見守ってくれてありがとう」と伝え、送りたい。”(3月3日付け中日新聞)

 名古屋市の主婦・梶川さん(71)の投稿文です。七段のひな人形、引っ越しにもいつも持って行った。そして毎年飾り付けた。そして今も親元にある。梶川さんはこう言われるが、こういう家庭は多いと思う。ひな人形を娘が持って行った、という話を聞いたことがない。どこも親元にあり、もう処分を考えているという話ばかりである。先日の「話・話」 の季節行事で恵方巻きやバレンタインデーの話は出るが、ひな祭りの話は出ない。
 実はわが家も同じである。ボクは昭和50年頃、勤め先の近くにあったひな人形の製造元で、一対のお内裏様を購入した。まだ親王飾りなど広まっていない時代で、特にこの部分だけを分けてもらった。それ以来、もう50年近く、2月になると飾っている。次女は娘2人の子持ちである。持って行けと言っても持って行かない。そして今もわが家にあるのである。これが世間一般のようである。場所のこともあろうが、出し入れが面倒、関心がないというところであろう。さてわが家はこの先どうなろうか。処分せずに残したら、娘は持って行くだろうか。


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