この時期になると思い出す話をひとつ、します。
以前住んでいたまちの図書室は、
大きな建物の2階にあったので、
長い、長い階段を上らなくてはいけませんでした。
ようやく上り、呼吸を整えながら図書室のドアを開けます。
中は、図書室だから当たり前だけど、しーんと静かです。
本の返却手続きをしていると、
さっき、わたくしが入ってきたドアが開く。
音もなく、開く。
……誰も入ってこない。
……ドアは閉まる。
何も起こらない。
わたくしは思わず、カウンター職員を見る。
職員は淡々と事務をこなしながら、事も無げに言う。
「アタシがここに勤めてから2回、あったわ。
本を借りたままお亡くなりになってね、
49日が済んだころ、ご遺族が返却しにみえるの。
きっと、心残りだったでしょうね。早く返さなくっちゃって」
「小さい子って、見えるのよ。
お母さんに連れられてここに来た小さな女の子がね、
窓を指差し、お外におじちゃんが居るよって。
でもね、ここは2階なのよ」
お盆です。
ご先祖さまの霊が里帰りします。
生前、ご家庭以外の親しんだ場所にも
遊びに来るのかなあ。
以前住んでいたまちの図書室は、
大きな建物の2階にあったので、
長い、長い階段を上らなくてはいけませんでした。
ようやく上り、呼吸を整えながら図書室のドアを開けます。
中は、図書室だから当たり前だけど、しーんと静かです。
本の返却手続きをしていると、
さっき、わたくしが入ってきたドアが開く。
音もなく、開く。
……誰も入ってこない。
……ドアは閉まる。
何も起こらない。
わたくしは思わず、カウンター職員を見る。
職員は淡々と事務をこなしながら、事も無げに言う。
「アタシがここに勤めてから2回、あったわ。
本を借りたままお亡くなりになってね、
49日が済んだころ、ご遺族が返却しにみえるの。
きっと、心残りだったでしょうね。早く返さなくっちゃって」
「小さい子って、見えるのよ。
お母さんに連れられてここに来た小さな女の子がね、
窓を指差し、お外におじちゃんが居るよって。
でもね、ここは2階なのよ」
お盆です。
ご先祖さまの霊が里帰りします。
生前、ご家庭以外の親しんだ場所にも
遊びに来るのかなあ。