玉兎堂

羊蹄山とニセコに囲まれた四季折々の生活

図書室の怪談

2008-08-12 14:54:40 | 季節のなかの暮らし
この時期になると思い出す話をひとつ、します。


以前住んでいたまちの図書室は、
大きな建物の2階にあったので、
長い、長い階段を上らなくてはいけませんでした。


ようやく上り、呼吸を整えながら図書室のドアを開けます。
中は、図書室だから当たり前だけど、しーんと静かです。


本の返却手続きをしていると、
さっき、わたくしが入ってきたドアが開く。
音もなく、開く。



……誰も入ってこない。
……ドアは閉まる。
何も起こらない。


わたくしは思わず、カウンター職員を見る。
職員は淡々と事務をこなしながら、事も無げに言う。



「アタシがここに勤めてから2回、あったわ。
 本を借りたままお亡くなりになってね、
 49日が済んだころ、ご遺族が返却しにみえるの。
 きっと、心残りだったでしょうね。早く返さなくっちゃって」


「小さい子って、見えるのよ。
 お母さんに連れられてここに来た小さな女の子がね、
 窓を指差し、お外におじちゃんが居るよって。
 でもね、ここは2階なのよ」


お盆です。
ご先祖さまの霊が里帰りします。
生前、ご家庭以外の親しんだ場所にも
遊びに来るのかなあ。