オソマツ君がお世話になっているのは、6階建ての鉄筋コンクリートの建物で、3階の北向き面に見晴らしの良い出窓のような所がある。
上の写真は、そこから、北側を寫したものである。黄金(こがね)色のたわわに実った稲が広がる、正に収穫の秋、豊作を祝う村祭りの季節である。
しかし、今年の場合は、台風の19号と20号だったかが、並んで東北地方や北海道を襲った。愛知県北部は直撃は免れたもののその余波で多くの稲がたおされた。上の写真の右側の中程から手前に掛けて少し茶色になっている部分がそれである。
オソマツ君はこうした自然による被害を目の当たりにすると心が痛む。3月の籾まきから始まって、冬作の麦を刈取り、田おこしに汗を流し、6月の田植えの前のあぜ道の草刈りから田植え、8月までに済ませる 田の草取,台風が来ないように祈りやがて稲刈りだ。
オソマツ君は晩秋、朝早く起きて兄と二人で稲刈りに出かけ、腕時計を見て帰宅し朝ごはんを食べてまた自転車で高校まで通ったこともあった。母親はよく「猫の手よりましになった。」と云ってくれたものだ。この意味がずーっと分からなかったが、田舎には「ねこの手も借りたいほど忙しい」と云う表現がふるくからあって、それを、もじった言葉らしかった。
いずれにせよ家内に車いすを押してもらって、散歩にでたとき、畑のご老人と雑談をするのが好きで、歳月に追われる農作業の大変さに話が弾む。
今は農家も法人化され大型耕作機を運転するのが農作業になったとのこと。感無量である。それにしても収穫直前の嵐は無常と云うしかない。写真をみていても、此処だけまだ刈取りが行われていないのでこの田圃のお百姓さんはご病気だろうか、と心配になる。わが身を振り返っても、災難は何時やって来るか分からない。
自分自身友人の訃報に接する機会の多い年齢になった。こうして田圃を見ながらも、何はさておき今日の幸せ、いや、いまの瞬間の幸せに感謝するのが自分の務めと思い直しながら毎日を送っている。(T)