満を持してトマト・ナス・キュウリの苗を植えました。野菜作り始めて十年ほど、この三品種は失敗したことがない。特にトマトは、昨年師匠からも褒められたほどの出来だ。苗はいつもの苗店で買って来た。
私が子どもの頃(昭和20年代の前・中期)は、これらすべての苗を家で種から育てていた。最初は、翌年のためにどの実から種をとるか、その選別から作業は始まった。トマトの場合だと最初に大きくなった実ではなく二番目に収穫できそうな実の中から姿・形がよく、元気のよさそうな実が選ばれ、その実の茎に布切れが巻かれる。この実は完熟まで収穫を待ち、実が崩れそうになったころ慎重に収穫し、中から種を取り出し、水洗いをした後、何日も陰干しにしてガラス瓶に収められた。しかし、トマトやウリではときどき事件が起こった。当時の子どもは昼間家の中にいることなどなく、近所の友だちと付近を駆け回り、お腹(なか)が空(す)くと、自分の家の畑に入って食べられるものを口にし、食べながら友だちの後を追ったものだ。そんなとき例の「布切れ」を見落としてしまう。「また誰かが、種用の実を取った!」と母が怒った。もちろん犯人は私か兄だが、二人とも心当たりはない。過失なのだ。それでも神妙に叱られていた。
昭和20年代後半には近くに苗店ができ、トマトとナスだけはそこで買うようになった。それでもウリ類はズーッと遅くまで「布切れ」が巻かれ、種から育てていた。「苗を買う」ということは「田植え機」の発明に匹敵する農業革新だ。
植えたのはトマト24本、キュウリ4本、ナス5本。トマトを買うとき、また悪い癖が出て新品種(?)「麗夏」が欲しくなり4本だけ買った。これが凶とでるか吉とでるか、残りの20本は「桃太郎」を始めとして例年の品種とした。
植えた苗が風によって倒れないように2週間ほど防風壁を作って保護します。近年、皆さん方は通称トンネルと呼ばれる方法で防風壁を作っておられるが、私は断固伝統的な方法を踏襲している。これを「あんどん(行燈)」と呼んでいる。色とりどりの廃袋使用、出来あがって、その奇妙さにニット笑うのが私の趣味だ。
見ているだけで身を切られる思い、プラム(大石早生)がガンにかかって苦しんでいるように思えてならない。「ふくろみ病」です。一昨年までたくさんの美味しい実をつけてくれたこの木だが、昨年「ふくろみ病」が大発生して収穫は9割減。今年はいろいろ調べて2月に「石灰硫黄溶合剤」をたっぷり散布して万全を期したつもりでしたが、敵はそんなに甘くない。今年もダメだ。反省としては私が使用した果樹の本が古かった、という点にあるようだ。改めて調べてみると開花直前に散布する新薬があるようで、来年は忘れず新薬を散布することにする。それにしてもカビの一種とかいう敵も手ごわい。試験も実験も一年待たなければならないのが、更に手ごわい。