各種報道によると、経済産業省の研究会「企業価値研究会」がこれまでに行ってきた「公正な敵対的買収防衛策のあり方」についての検討結果が明らかになったようです。
記事の範囲内の情報ですが、今回の検討では条件付ながらも「複数議決権株式等の企業買収の拒否権を持つ株式を上場企業が発行することを容認する」という、今までから考えると大変ドラスティックな提言がまとめられたようです。
ここでふと疑問に感じるのが、このような株式の発行が「過剰防衛=経営者の地位安定のための防衛」にならないかということです。
ここ最近の企業防衛にまつわる話題を見ていると、「経営の安定(≒経営者の地位の安定)がなければ、持続的な成長は果たせない」という論調が目につきます。しかし、私はこのことを過剰に捉えすぎてしまった場合、「株主にとっての利益」がなおざりにされる危険性があるのではないかと感じています。
確かに、「お家騒動」が起るような企業ではマズイのでしょうが、かといって、経営陣が好き勝手に放漫経営を行ってしまってもこれまた出資する株主にとっては問題です。従って、経営者の地位は「適度に安定(=多くの株主にとって合理的と感じられる経営をしていれば、むやみに地位を脅かされない)」と、「適度な緊張感(=多くの株主にとって合理的でない感じられる経営をしてしまえば、その地位は失われる)」を保つという非常に微妙な”さじかげん”が必要なのだと感じます。
そうすると、今回の報道のような「複数議決権株式等の発行」を行うことによって「現経営者にとって友好的な株主」のみが経営者への口出しを行えるようになるとすれば、一部の株主の利益のみを代表するような経営が通ってしまうのではないかという懸念が生まれます。もちろん、この点は十分な検討が行われているのだろうと思いますし、現に発動条件として「〈1〉効力を短期間に限定する〈2〉取締役会決議で無効にできる条項を設ける〈3〉株主総会で廃止決議が行われれば無効にできる条項を設ける」などの案が提示されていますので、心配しすぎなのかもしれませんが、どこか納得の行かないところを感じてしまいます。
原則論に立ち戻れば、株式を上場した以上、経営者や他の株主は、誰がその企業の株主になっても文句はいえないわけです。したがって、経営者は「株主から選ばれて委任を受けている存在」であることを認識し、たとえ誰が株主になろうとも、「株主の期待に応える=会社の価値(利益)を高める」ことに力を注ぎつづけることで、自らの地位を確保してかなければならないのだと感じます。。
そもそも、「株主の期待(≒利益最大化)」に応えられるうちは、株主としても過度に経営者としての地位不安定にすることは「合理的な行動」とはいえないわけです。そう考えれば、なによりも「きちんとした経営を行い、成果(利益)を獲得していき、株主の期待に応える」ことが、最大の防衛策なのかもしれません。
なお、種類株式の活用を含めた「多様なガバナンスの可能性」に関する話題が、いつも愛読させていただいてるisologueの磯崎先生のブログにて展開されています。ぜひ、この件についても磯崎先生の見解もお聞かせいただきたいと(この場で勝手に)表明させていただきます。
経済産業省の「企業価値研究会」がまとめた提言は8日に正式公表されるとのことです。提言内容に注目したいと思います。
【参考記事】
黄金株、上場企業に容認を 経産省の研究会が論点案(共同通信)
敵対的買収に拒否権 「黄金株 上場企業にも」(共読売新聞)
記事の範囲内の情報ですが、今回の検討では条件付ながらも「複数議決権株式等の企業買収の拒否権を持つ株式を上場企業が発行することを容認する」という、今までから考えると大変ドラスティックな提言がまとめられたようです。
ここでふと疑問に感じるのが、このような株式の発行が「過剰防衛=経営者の地位安定のための防衛」にならないかということです。
ここ最近の企業防衛にまつわる話題を見ていると、「経営の安定(≒経営者の地位の安定)がなければ、持続的な成長は果たせない」という論調が目につきます。しかし、私はこのことを過剰に捉えすぎてしまった場合、「株主にとっての利益」がなおざりにされる危険性があるのではないかと感じています。
確かに、「お家騒動」が起るような企業ではマズイのでしょうが、かといって、経営陣が好き勝手に放漫経営を行ってしまってもこれまた出資する株主にとっては問題です。従って、経営者の地位は「適度に安定(=多くの株主にとって合理的と感じられる経営をしていれば、むやみに地位を脅かされない)」と、「適度な緊張感(=多くの株主にとって合理的でない感じられる経営をしてしまえば、その地位は失われる)」を保つという非常に微妙な”さじかげん”が必要なのだと感じます。
そうすると、今回の報道のような「複数議決権株式等の発行」を行うことによって「現経営者にとって友好的な株主」のみが経営者への口出しを行えるようになるとすれば、一部の株主の利益のみを代表するような経営が通ってしまうのではないかという懸念が生まれます。もちろん、この点は十分な検討が行われているのだろうと思いますし、現に発動条件として「〈1〉効力を短期間に限定する〈2〉取締役会決議で無効にできる条項を設ける〈3〉株主総会で廃止決議が行われれば無効にできる条項を設ける」などの案が提示されていますので、心配しすぎなのかもしれませんが、どこか納得の行かないところを感じてしまいます。
原則論に立ち戻れば、株式を上場した以上、経営者や他の株主は、誰がその企業の株主になっても文句はいえないわけです。したがって、経営者は「株主から選ばれて委任を受けている存在」であることを認識し、たとえ誰が株主になろうとも、「株主の期待に応える=会社の価値(利益)を高める」ことに力を注ぎつづけることで、自らの地位を確保してかなければならないのだと感じます。。
そもそも、「株主の期待(≒利益最大化)」に応えられるうちは、株主としても過度に経営者としての地位不安定にすることは「合理的な行動」とはいえないわけです。そう考えれば、なによりも「きちんとした経営を行い、成果(利益)を獲得していき、株主の期待に応える」ことが、最大の防衛策なのかもしれません。
なお、種類株式の活用を含めた「多様なガバナンスの可能性」に関する話題が、いつも愛読させていただいてるisologueの磯崎先生のブログにて展開されています。ぜひ、この件についても磯崎先生の見解もお聞かせいただきたいと(この場で勝手に)表明させていただきます。
経済産業省の「企業価値研究会」がまとめた提言は8日に正式公表されるとのことです。提言内容に注目したいと思います。