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ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

リスク管理:「フェールセーフ」の視点

2005-11-02 | マネジメント
昨日のエントリDakiny様からコメントをいただきました。


ダムの放流のプログラムを作っていた人が言った。

100万回に1回のミスがあっても人が死ぬ。
だから100万回に1回のミスがあってもいけない。

まさに金言です。

ただ、それでも「完全にミスをなくす」ことは不可能です。なぜなら、人は「今の現状から将来起こりえること」をすることは残念ながらできないからです。(これが出来たら「予知」になってしまいますよね。)

だからこそ、「予期しないミスは起こるかもしれない」という発想で、フェールセーフシステムやフォールトトレランスを「全体の仕組みとして組み込んでいく」ことが大切なのだと感じます。ダムの制御システムもそうですが、いわゆる「インフラ」として機能するシステムなら、なおさらです。(ほとんどのシステムは「インフラ」なのかもしれませんが・・・)

報道ベースでの情報しかわかりませんが、今回の障害~トラブルの復旧に手間取った原因は「ハードは多重化されていたが、ソフトウェアは同一だった」ことなのでしょう。「日本経済のインフラ」として高度の可用性(安定して稼動しつづける能力)が求められる東証のシステムに、ソフトウェア面の「冗長性」が組み込まれていなかったのが、非常に残念でなりません。

ただ、私としては、ここで「実際に開発に取り組んだ人の意識の問題」に帰結させたくはありません。なぜなら、このような大規模システムの開発の場合にはたとえ個人の能力が高くても「集団思考のワナ」に巻き込まれる可能性もあるからです。(ちなみに「集団思考のワナ」については、PRESIDENT 20005.11.14号に詳しく紹介されています。)

繰り返しになりますが、重大なインフラを支えるシステムであればあるほど、「100万回に1回の障害」も許されません。しかし、残念ながら「絶対にミスをさせない」ように人をコントロールすることはできません。だからこそ、この「100万回に1回の障害」を起こさないために、「人はミスを起こしてしまう」という前提にたって、「仕組み・仕掛けとして、可能な限りミスが大きな障害に繋がらないように、(開発プロジェクトを含めて)マネジメントしていく」ことが必要になるのだと、私は考えます。

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2 コメント

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リスクマネージメントは重要ですね (だいきゅう)
2005-11-02 16:17:23
確かにリスクマネージメントは重要ですね。

ダムの話は非常に分かり易く拝見させていただきました。

現状から考えると確かに予測は難しいと思いますが、

反面コストと影響度のバランスが非常に重要ですね。



通常の災害でも「100年に一度発生する状況を考えて」と、良くNews等でいわれますが、地震や、富士山の噴火等考えると100年に一度というサイクルではなく数百年に一度のサイクルでもここ数十年先の発生頻度を考えて、対策を練らなければいけないですね。



確かにそれでもコストは莫大にかかりますが。

その影響度も天文学的な数字になるとすれば・・・・。





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Re: リスクマネージメントは重要ですね (Swind)
2005-11-02 23:40:17
だいきゅう様>

リスクマネジメント、本当に難しいテーマです。どのようなリスクであっても、完全にリスクを押さえ込む(被害を0にする)ことは現実的には難しいわけですから、どこかで「線を引く」ことも選択に入れなければならないのです。



リスクにへの対応というのは「押さえ込む(低減する=対策を打つ)」だけでなく、「回避する(リスクの発生要因となることそのものを止めてしまう:例えば、情報漏洩が怖いからインターネットに接続しない等)」「移転する(財産被害を考えて、保険をかける等)」ということも考えられます。これらを組み合わせてリスク対応を行うのですが、最後にはどこかのラインで「リスクを許容する」ことの選択が必要となります。



こう考えると、「人事を尽くして天命を待つ=最後に腹を括る」ということがリスクマネジメントの最大の決断になるのかもしれませんね。

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