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事業承継:相続が「争続」になる理由

2005-11-17 | 経営実務
昨日は某勉強会に出席。昨日のテーマは「相続法務の基礎知識」でした。

事業承継の場面などで、相続が「争続」になることは大変よくある話です。昨日の講師を務めた弁護士の先生からは、「今は、それぞれの遺族が持っている法律知識が非常に上がっており、話をまとめるのも非常に慎重になる」とのお話がありました。コレに伴い、裁判になる事例も増えてきており、ここ最近いわゆる「重要判決」が増えている要因となっているのです。

さて、相続が「争続」になる場合、たいてい「モメる要素」というのが揃っているそうです。昨日取り上げた事例では、「父(社長)=母」「長男(後継ぎ・父母と同居)、長女、次女」がいるケースを想定していましたが、これのケースでは父が泣く立ったときに「長男 vs 母&長女&次女連合軍」という図式になりやすいとのことです。

その理由は、ほとんと「感情的な対立」です。いくつかご紹介しましょう。
(1)父が健在の間は、父母&長男がワングループを構成しているが、父が亡くなると母は同姓である「長女・次女」に相談をするパターンが多い(特に、嫁姑関係が芳しくない場合)。こうなると、母-長女・次女ホットラインが形成され、いっきに力関係が変わってしまう。
(2)このようなケースでは「換金性の財産」は正直言って少ないケースが多い。(例:長男名義の自宅がある父名義の土地・・・売れない、非公開会社である家業の会社の株式)
(3)長男は「後継ぎ」として財産を相続したいと主張するが、長女・次女は権利どおりの法定相続を主張。
(4)長男は「父母(母)」の面倒を見ていることで「寄与分」を主張するが、長女・次女は「責任を果たしているかどうか疑問」等といって、呑まない。(上記1を要確認)
(5)長男としては、後を継ぐ家業関連財産(株式)は継承する必要があるというが、長女・次女はあくまでも「相続財産」としてしか捉えない(必要ならその分カネよこせ)
(6)長男としては、嫁入りの際に援助を受けた=相続分の前渡があるというが、長女次女は「それは返済免除をうけたもの=相続とは関係なくもらった物」と主張

等など、これはあくまで一例ですが、モメる「種」はいっぱいあります。実際にはこれに、「長男・長女・次女の配偶者」が”知恵をつける援軍”として参戦しますから、まぁモメ方の激しさは想像に難くありません。(ちなみに、他にもココにはとても書けないような相当醜い争いも現にあるとのことでした・・・・)

特に事業承継がらみの相続の場合には、「株の散逸を防ぐ」等の理由から様々な対策が提案されていますが、「ぴたっと」当てはめることは難しいようです。そうなると、結局。最後は「遺言」がモノを言ってくるということになるのですが、この「遺言」もきちんとした形で用意しないと、かえって「モメるもと」になりかねないのです。

ということで、活用したいのが「公正証書遺言」です。今の枠組みの中では、多少手数料がかかっても「公正証書遺言」が一番確実な方法だそうです。
しかし、だからといって、単に公正証書を作ればよいというものではなく、その内容について様々な点の工夫が必要だとのことです。

一人一人に欲求・感情があり、そこには「利害」が絡むのですから、当然意見が対立することはあります。これまで「争続」を「エゴ剥き出しの醜い争い」としか考えていませんでしたが、よくよく考えれば「立場が違うのだから、対立してアタリマエ」なんですよね。

だからこそ、「争続」を避けるためには、財産を残す人が中心となり、生きている間に遺言をはじめとした手当を予め行っておくしかないのでしょう。このときには、「息子たちなら自分のキモチ分かってくれるよね」ということで済ませず、「夫婦・親子・兄弟姉妹は他人の始まり」だと考えて手を打つことが大切だと感じました。やや寂しい気もしますが、もめさせて憎しみ合わせるよりはよっぽどマシだと思います。