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ビジネスにも料理にも役立つ“ネタ”が満載!社労士・診断士のコンサルタント立石智工による経営&料理ヒント集

[経営実務] 敵対的買収防衛策と株主利益(2)

2005-06-30 | 経営実務
昨日(といっても、登録が今日でしたけど・・・)に引き続き「敵対的買収防衛策と株主利益」について考えます。

今朝の日経新聞1面の見出しは【「モノ言う株主」急拡大】でした。もともとここ2~3年の流れで機関投資家が「モノ言う株主」に変わっていく流れはありました。そこへ、「買収防衛策」というある面では株主と経営陣の利益が相反する可能性がある焦点が生まれたことで、これをきっかけとして、一気に株主たる(機関)投資家が「株主としての利益」を真正面から主張するようになったと推察されます。もちろん、機関投資家は自らの顧客(年金基金であれば、年金受給者)から運用責任を問われるわけですから、議決権行使の判断は「株主としての合理的」なものになるのは自明のことです。

さて、機関投資家が敵対的買収防衛策を否定しているかといえば、そうとも限りません。西濃運輸は、昨日の株主総会で新株予約権の発行を伴う「信託型ライツ・プラン(買収防衛策)」の承認を受けています。

西濃運輸が承認を受けた「信託型ライツ・プラン(買収防衛策)」のポイントは次の通りです。(西濃運輸ホームページ各種資料より)
(1)導入に際しての株主総会決議による承認を受ける
(2)合理的な客観的解除要件を設定
(3)株主の意思にて新株予約権を消却することが可能
(4)防衛策発動の是非の判断は、経営陣から独立した独立委員会が役割を担う
(5)防衛策の有効期間が3年間に限定(サンセット条項)

西濃運輸の場合には、「発動判断の客観性(2・4)」と「発動における株主意思の反映(1・3・5)」を明確にし、経営陣が自己防衛のために恣意的に判断するものではないことを合理的かつ具体的に示したことによって、機関投資家を含めた株主が受容できるものになったと考えられます。株主たる投資家としても、「防衛策設定によって保護される利益」が「防衛策設定や発動によって損なわれるリスク」を上回っていさえすれば、合理的な判断として賛成することができるのです。

敵対的買収とは、あくまでも「現経営陣にとって敵対的(=知らされていない)」ということに過ぎません。買収提案を受け入れるかどうかは、あくまでも株主が判断することであって、現経営陣がこれを闇雲に阻害することはできないのです。極端なことをいえば、買収提案が魅力的なものであれば、現経営陣にNo.を突きつけることも株主の選択肢の一つであるわけです。今後の防衛策の検討には、「株主の選択肢をいかに狭めないか」ということが重要なポイントとなると私は考えます。

[経営実務] 敵対的買収防衛策と株主利益(1)

2005-06-30 | 経営実務
昨日は株主総会の集中日でした。今年の株主総会での注目テーマといえばライブドアVSフジテレビに端を発した「敵対的買収防衛策」の導入の是非でしょう。多くの上場企業が敵対的買収の防衛策を提案しましたが、外国人株主が多い企業を中心に否決された事例も数社出ています。

このような中、注目すべき動きがあります。日本で代表的な「株主(ファンド)」の一つである「厚生年金基金連合会」の議決権行使状況について、同会Webサイトで公表されています。

それによると、敵対的買収防衛策に対して、次のとおり議決権行使を行ったとのことです。
【企業買収防衛策への対応状況】
   議案内容     提案件数 反対件数
株式発行授権枠の拡大   154   146
権利確定日の柔軟化    110   107
新株予約権発行※     7 3

※新株予約権発行については、NHK報道による。
※その他は連合会Webサイトより引用


これは、各企業が提案した敵対的買収防衛策が、「株主」の立場から見れば受け入れがたいものであったことを如実に表しています。すなわち、今回提案された敵対的買収防衛策は、「現在の経営者(≒社内取締役)」の地位を防衛するに過ぎず、株主利益を損なう恐れがあるものであると判断されたということです。

もちろん、厚生年金基金連合会が反対したからといって、全ての議決が否決されたわけではありません。しかし、「株主」の代表格の一つであって、かつ、長期保有を中心とした運用を行っている(=企業の中長期的な成長発展によって運用益を確保することを前提としている)厚年基金連合会が今回の提案にNoを突きつけたことをは、今後の敵対的買収防衛策の導入にあたって非常に重い意味を持つものであると私は考えます。

このテーマは今後しばらく深堀りしていきたいと思います。ご期待ください。