出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

在庫

2007年03月09日 | 出版経理
新刊のDTP、ようやく完了。

1番楽しい工程であるカバーデザインも完了して、本日出力しにキンコーズへ。印刷物を扱っている業種なのに、ちゃんとしたプリンタがないのが情けない。が、うちの規模では「してはいけない設備投資」なので、データを持って毎回通う。

あの店はいつ行ってもいろんな客がいるが、デザイナーとかなんだろうか? デザイン事務所だとちゃんとしたプリンタは持っていそうな気がするから、普通のオフィスの人たちなんだろうか。

で、それとは全然関係ない話だが、在庫。今回は在庫情報ではなくて、本当の在庫の話である。(もうすぐ決算なので・・・)

以前から、「在庫=悪」、「在庫=即<悪者>」みたいな言い方に疑問を感じていた。うちの在庫は少ないので、保管に大したコストがかかっていないせいもある。

毎年棚卸しをして在庫の経理処理もするんだが、あまり「損してる」という気がしない。実際は、当期に限って言えば「仕入から在庫分だけ引く」わけで、当然利益が上がる(納める税金が増える)。けれども翌期に洗い替えをするから、どっち(今期か来期か)がより儲かるかって話だと思う。

その考え方をある税理士の人に説明したんだが、どうしてもうんと言ってくれない。巷で言う「在庫=悪」が正しいと言う。会計士と違って「払う税金」のこと担当だからかな、とも思う。

で、何度もやり取りするうちに、ようやくわかってきた。

在庫のすべてが「そのうちに売れるもの」ではないということ。うちの場合は幸い大部数を刷ってないので、「このくらいは在庫として持っていたい」という数になっている。

ところが今期初めて、在庫と呼ぶより「売れ残り」という本が出てきた。これが、巷&税理士の言う、悪い在庫である。

口座貸しをした本なんだが、特に力を入れてそういう商売をしているわけではないので「手数料の料金体系」なんてちゃんとしたものはない。とりあえず書店に流してほしいという相手と「適当に合意した」条件で扱った。

あるとき損益分岐点を超えたのでホッとしてたんだが、「キャッシュは取り戻したが、在庫がある」ことに最近気づいた。うーん、山のように返品されてきた本については、話し合っていない。お互い、「損を出さない」ことだけ気にしていたというか、ようするに決算期には「BSがP/Lに繋がる」ことなんか、全然考えていなかった。(出した人も、もっと売れると思っていたに違いない。)

そこまで考えてわかったのは、やっぱり「適正在庫数」についてよく考えなきゃいけないということ。

以前どこかのセミナーで、「これからの出版は、パッと出してさっさと売って在庫ゼロにして絶版にする」のが正しい道のように講師が話していた。

うちとしては、新刊時期を過ぎてスローになったペースで3年くらいもつくらいの在庫がほしい。新刊時期を過ぎるときに損益分岐点を超えることを、常に目標にしている。だから、その後の細々とした注文に「3年くらいは応じたい」というのが根拠。

以前品切れになった本が、最後の最後になって在庫が「ゼロ、1、ゼロ、2、ゼロ、1・・・」と結局しばらく注文には応じられた。だから、3年のつもりでいたら5年は流通させられるような気がする。5年で「品切れ」という名の絶版にするなら構わないと思う。

もちろん、半永久的に売れ続ける(半永久的に増刷できる)本を作れたら、もっと嬉しい。

来期の課題とする。(さあ、この悪い在庫、どうしよう・・・)