出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

採用品と献本

2007年03月13日 | 注文納品
印刷会社に今度の新刊の見積りをお願いしていたら、出版を始めた頃によく頼んでいた会社の人から、「スリップにバーコード載せるの、知ってます?」ときかれてしまった。当時いろんな失敗をやらかして、そのたびに「急いでデータを作り直して持ってって、刷り直してもらって…」をしたので、危なっかしい版元だというイメージがあるに違いない。大丈夫、こんな私も少しは成長した。そのへんは抜かりない(つもり)。

さて、採用品の季節である。うちは、採用品になるような本は1冊だけしかない。

ドカンと注文が来るのは嬉しいが、別にいろんなところから来るわけじゃない。著者の学校だけである。教科書というより、一般の書店で買ってもらいたいと思って作ったので、それはしょうがない。

当時、著者は「教科書にすればバカスカ売れる」と言って私を煽ったが、期待したほどではなかった。他の学校に採用されなかったからではなく、学生数が少ないからである。私はデカイ大学(レベルは別にして)に行ったので、1クラス300人くらいいた。そのつもりでいたら、なんと「いろんな学科の生徒に売りつけても100人ちょっと」だった。でも、嬉しい。

ところが今年初めて、他の学校からも注文が来た。こちらはもっと少なくて20冊程度で、どうやら専門学校らしい。もう出してから数年たってるんだが、探し出して採用してくれたということだろうか。

話は飛ぶが、トーハンに注文納品に行くと、Sとか東というふうに番線ごとに本を置く場所が決まっている。2個口のときは違う場所…ということをようやく学んだのは、ある本がある書店さんでめちゃくちゃ売れたときだった。

で、本日また2個口のところに置いて伝票を渡したときに、「採用品はどうのこうの・・・」と書かれたポスターに気づいた。もしかして置く場所も別かも…と思ってお兄さんにきいたら、やっぱり別だった。慌ててチェックしたら、別のお兄さんが正しい場所に移しておいてくれたようだった。ありがとう、イケてるお兄さんたち。

話が飛んだついでに言うと、伝票も別なんだそうな。日販だと書き直しを命じられるんだが、トーハンの受品口のお兄さんは結構裁量権があるらしく、今回はOKとなった。

で、本日の納品とは別の(著者の学校の)採用品だが、「献本のお伺い」がついていた。

これまでの実績は、「1年目:採用品扱いじゃないのか、慌てて日販から電話が来ていっぱい書店に直納する」、「2年目:日販から注文FAXが来て、まとめて納品する」、「毎年、それプラス30冊くらいの注文が来て、それは購買かどこかで売るらしいが、こちらは返本もいっぱい来る」という状態。

さあ、献本をどうするか。

いっぱい買っていただくんだから、その中の1冊はおまけしてあげるのはやぶさかではない。けど、この著者の「大ほら吹き」に製作中も売ってるときも翻弄されてるので、どうしても「なんだよ~、ただでよこせってか!」と思ってしまう。

まして、金を出して買うのは学生(の親)だ。

だいたい、献本分も書店さんの売上になるんだろうか。1冊多めに納品してあげて、書店も取次も儲からないんであればつまらない。

そういうと、「読者」の話になってしまうが、普通の「本屋さんで買ってくれる読者」はありがたい。けど、学校の教科書は通常の読者とは一緒にならないと思う。

この本の場合、毎年のことだから「先生の分」ってのはありえない。著者は同じのを使っているはず。となると、学校を儲けさせる必要ってあるのか? 学校がこの本を選んだんではなくて、著者の指定だというだけのことだ。

1冊分なんか、儲けだろうが何だろうがたかが知れている。そもそも、在庫の中の1冊をただで納品することや、献本お願いと言われてそれを断るための「こちら側の心理的処理」なんか、どうでもいいことのように思われる。

でも、どうしてもいろいろ考えてしまう。