葉室 麟著 「螢草」より
暑さを避けるように築地塀のそばで日陰になっている草を取っていた時、菜々はふと手を止めた。
塀の際に青い小さな花が咲いている。
「露草だ…」
菜々は額の汗をぬぐいながら、うれしくなってつぶやいた。
青い花弁が可憐な露草は菜々の好きな花だ。
早朝、露が置くころに一番きれいに咲いて、昼過ぎにはしおれてしまうから、摘んだりはしない。
見かけた時にじっと眺めるだけだが、それでも幸せな気持ちになってくるから不思議だ。
菜々がなおも腰を下ろして見入っていると、
「その花が好きなのね」
佐知の声がした。菜々ははっとして立ち上がった。
「申し訳ありません、草むしりをしていたのですが、花を見つけて、つい手を止めてしまいました」
菜々が頭を下げて言い訳をすると、佐知はさりげない口調で言った。
「謝ることはありません。きれいな花に目が留まるのは心が豊かな証ですから、ゆっくりと見てかまいませんよ」
このシーンが好きで何度も何度も読み返しました
今年になってこの本を買って手元においていたのですが・・・
図書館の本は返却期限があるので借りたらすぐ読みに入ります
が、いつでも読めると思うと積読状態になるんですね~
昨夜、布団に入ってこの本を手に取ったのが大間違い
最後まで一気読まみ、させられました
それも中盤あたりから、泣けて泣けてタオルじゃ足りないバスタオルじゃないと・・・
本の帯に
日本晴れの読み心地!
と書かれていましたが、ぴったりの表現です
読後感のいいことったらありません
まだこんなに感動できる自分がめちゃめちゃ嬉しくなりました
葉室麟様、本当に本当にありがとうございます、こんな素敵な本を書いてくださって!
ストーリーを簡単に書きます
(今から読んでみようかな~と思われる方はネタばれしてますから)
主人公菜々は武士の娘に生まれます
が、正義感の強い父は不正をあばこうとして殺されてしまいます
母は病死
菜々は親戚に引き取られるのですが居心地が悪い
意を決して150石の禄高の風早家で女中となって働きます
風早家の奥方様が、
「花が好きなのは心が豊かな証」
と教えてくれた佐知
佐知はまだ磨かれていない山出し娘の菜々に色々なことを優しく教え導きます
菜々もこういう女性になりたと佐知を尊敬しあこがれ一生懸命働きます
この家には、幼いふたりの子どもがいます
正助、とよ
まあ、この子たちが可愛いったらない!わたしを泣かせます
そしてこの子たちの父親、佐知の夫、市之進様
これがね、もうかっこいいったらありゃしない
女なら誰だって惚れるね
菜々もあこがれます(勿論心に秘めています)賢い子です
菜々が慕っていた佐知は自分の母親と同じ病で亡くなります
亡くなる時、夫に
後添えは菜々を・・・
と言い残します
市之進は、菜々の父親がやられた同じ男にはめられ北国に送られます
菜々はご主人様の無罪が証明されて帰ってくるまではと
大八車を引いて野菜の行商をしながら2人の子どもの面倒をみます
でも、菜々を知る人は彼女がが苦労をしているという風に見えない
幸せそうにさえ見える
愛しているものを守る
愛している人の為に守る
そのけなげな姿に応援する人(ファンクラブ)ができます
このメンバーがまたいいの、個性的でね
頭のなかで、映画化されるなら、このキャラはあの女優さんね、あの人はお笑いのあの人がいいな~
なんて想像しながら読みました
そして、最後はもう涙、涙
これは電車の中や喫茶店なんかでは絶対に読めません
目が腫れてもいいように、土曜日の夜がいい
最後は菜々の大活躍で市之進の疑いも晴れ屋敷に戻ってきます
これでハッピーエンドと思いきや、すんなりとは終わらない
横槍がしっかり入ります
え~そんな、そんなとハラハラさせられますが
そこは大丈夫
ふたりの子どもとあこがれの市之進様が菜々を迎えにきます
大満足のハッピーエンド
いや~いい終わり方でした
葉室さん、最高!
男性には物足りないかもしれませんが、何か頭の痛いことや心配事を抱えていたら
この本を読んでいるこの時間だけでも幸せな気分になったらいいかな~なんて思います
女性はお勧めですよ~
読みやすくて、感情移入もしやすくて
そして元気になれます
今日の私の小さな幸せ
ふう~、引き分けた~
連敗だけはまぬがれた
しかし、ジャイアンツにはまた新たなスターがうまれたね
まあ、いいか
カープには縁のない話だし・・・