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遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(552) 小説 <青い館>の女(41) 他 夢の如くに

2025-06-15 12:04:07 | 小説
               夢の如くに(2925.6.6日作)



 時は夢の様に過ぎて逝き
 訪れるものは
 耳に眼に親しかった人達 
 あの人 この人 誰彼の訃報
 その中
 やがて来るであろう
 わたし自身の死
 夢の様に時代は過ぎ
 迎える日々は見知らぬ顔をした
 耳に眼に馴染みの薄い
 あの事 この事
 総てが不思議の色に彩られ
 戸惑いと困惑だけを運んで来る
 過ぎ逝く時 変わり行く世
 刻一刻 時は移り
 遠く過去へと
 総てのもの達を
 運び去って逝く

  

         紫陽花の
           雨に濡れいて
             母の逝く




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               <青い館>の女(41)



 

 わたしの体調はこの時期、なお安定していて穏やかな状態を保っていた。
 これからの寒さを迎える季節になってどうなのか、それのみが心配だった。
 去年の冬、わたしは一度も北の街を訪れていなかった。
 今年もまた、去年の様に寒さを迎える中で、全く訪れずにいる事が出来るかどうか ?
 マンション購入ともなれば雑用もいろいろと生まれて来るだろう。
 わたしの加奈子に寄せる思いも去年とは比べ物にならない位に大きくなっていた。
 そんな心配事が重なる中で冬の到来を避ける様にわたしが隣り街にマンションを購入したのは、冬も間近に迫った十一月になってからだった。
 秋の終わりに見つけた物件だった。
 計四部屋を持つ物件は加奈子にも気に入りの物だった。
 合計金額の半分を現金で払い、残りの半分を年若い一人の女性の収入から見ても不自然ではないローンを組んだ。
 また、ローンの金額の三分の一に当たる金額を加奈子の預金口座に組み入れた。
「税務署の調査が終わるまでは大ぴっらに動かさない方がいい。調査が終わってこの金が無くなる頃にはまた入れるから」
 総てをわたしに任せてこの方面の知識に乏しい加奈子は素直に頷いた。
 彼女に取っては自分の名前の入った書類を手にするだけで感動的な事だった。
 その上、七階建てマンション、六階の部屋は前方に遠く海を見て、後方に霞んだ山脈(やまなみ)の見える眺望と相俟ってこれ以上に無い贈り物だった。
 これが全部わたしの物なんだ !
 軽い興奮を漂わせて部屋のあちこちを見て廻っては、様々な扉を開けたり閉めたりしている加奈子の姿はそう言っているかの様に見えた。
「この部屋ならぁ、三城さんが来て泊まれる様にダブルベッドを置いても大丈夫ですねぇ」
 八畳程の広さの部屋で加奈子は、わたしの衰え、萎えた心を刺激するかの様に意味ありげな笑顔と共にわたしを見て言った。
 わたしはそんな加奈子を見て、
「いろいろ、家具等も買い揃えなければ駄目だね」
 軽くいなす様にありふれた言葉を口にした。
「でもぉ、家具なんかはぁ今ある物で充分ですよぉ」
 加奈子はこれ以上、望むものは無いとでもいう様に満足感に満ちた表情の言葉を口にした。
「だけど、わたしがこっちに来た時には、ここに泊めて貰いたいんだ。ホテルへは行かなくても済むようにね」
 加奈子はその言葉には素直に頷いた。
 加奈子が新居に移ったのは十一月も半ばを過ぎていた。
<サロン・青い館>での仕事は辞めた。
 当分の間は家の中の整理をして過ごすと言った。
 収入の途絶えた加奈子の為には何がしかの金銭を援助した。
 もともと、この街でのマンション購入を決めたのも付き纏う男から逃れたいという思いの下、加奈子自身で決めた事だった。
 通うのが大変だからという理由で<青い館>を辞めたのも、彼女自身の意志だった。
 わたしは総てを彼女の意志に任せていた。
 強制した事は何一つ無かった。
 最早、わたしには敢えて加奈子に望むものなど何も無かった。
 残り少ない人生の中での、空虚を忘れる事の出来る時間さえ持てればそれで良かった。
 加奈子に対する援助も総てがその為のものだった。
 元居たマンションを出るに当たって加奈子は、管理人には新しい住所を教えて来たが、その他は、
「もし誰かが訪ねて来て、住所を教えて呉って言っても、絶対に教えないで下さい。友達にはみんな知らせてあるので」
 と言い残して来た。
「うん、分かった。郵便物だけを送るよ」
 管理人は快く請け合って呉れた。
 引っ越しは業者を頼んで一日のうちに終わっていた。
 若い女性の一人暮らしは身に着ける物だけは多かったが、その他の家財道具などは数える程度のものしかなかった。
 いずれにしても加奈子は新しい環境での生活に心からの安堵を得ている様子だった。
「仕事をしないでいて退屈しないかい」
 電話で聞いた時、
「家具なんか揃えてぇ、あっちへ動かしたりこっちへ動かしたりしていてぇ、退屈なんかしないですよぉ」
 弾んだ声の返事が返って来た。
 一度だけ<青い館>時代の友達二人を呼んだという事だったが、それ以外は訪ねて来る人も無いと言った。
 当然の事ながら付き纏う男の姿も見られなくなっていた。
 そんな加奈子の下を最初に訪ねたのは、十二月に入ってすぐだった。
 北の街には早くも雪が舞っていた。
 空港へ降りた途端に身を刺す様な寒気に見舞われて、東京では想像もしなかった寒さに身震いした。
 無意識のうちに胸の圧迫される様な息苦しさを覚えていて、もっとしっかりと寒さ対策をして来れば良かったと後悔した。
 まず最初に向かった加奈子の新居は<スーパーマキモト>がある街より、車を六十キロで走らせて三十分程近い距離にあった。
 寒さは当然、そこでも変わりが無くて、新居の前で車を降りると漠然とした思いの不安に囚われた。
 この寒さがもっと厳しくなった時、わたしのひ弱な心臓はその寒さに耐えられるだろうか ?
 寒さが厳しいこの季節はやっぱり、東京で大人しくしていた方がいいのだろうか ?




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              takeziisan様


               コメント 有難う御座います
              新しいブログ 馴れないせいか使い勝手が悪くなかなか溶け込めません
              そんな中 美しい花の数々 何気ない野に咲く花の美しさ
              梅雨の鬱陶しい季節 気持ちの慰めになります  
              ネジバナ 懐かしい名前です 幼い頃過ごした自然
              野山の風景が蘇ります
              それにしても 方言 ダスケ 他の地区の我々にも親しい方言に思いますが
              あの画像 懐かしいですね
              いい風景です わたくし共のいた村の風景そのものです
              今でも地方へ行けば見られるのかどうか ?
              懐かしい限りです
               振り返り記事 小雨降る径
              この曲も懐かしの曲 耳に残るのは小夜福子(小雨の丘 も歌っていますが)
              淡谷のり子 下って高英男や芦野宏などの歌声です
              総てが遠い思い出の中の事になってしまいました
              お忙しい中 わざわわざ来て戴いて有難う御座いました            

























 













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