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遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉 217 小説 新宿物語 夜明けが一番哀しい 他 

2018-11-25 12:00:46 | 日記

          新宿物語 (その1)

               (小説を併載する事にしました

               お眼をお通し戴けましたら幸いです

               宜しくお願い申し上げます)

 

          夜明けが一番哀しい (1)                                      

   

 わたしは今の新宿を知らない。かつて、その街に生きた人間ではあるが、遠い昔にそこを離れたまま、今では自分の人生への希望の喪失と共に、その街への興味もなくしてしまっている。ただ、なにかの折りにふと眼にする、現在の新宿の街の映像や、誰かが口にする「新宿」という言葉を耳にすると、鮮やかに甦るいくつかの思い出がある。そして、その思い出の中に浮かび上がる彼らや彼女らは今、何処でどうしているのだろう、と考える。彼らは無事、この苦難の多い人生を生き抜く事が出来たのだろうか? 彼らが新宿の夜の街の吹き溜まりに吹き寄せられたゴミのような存在であっただけに、ひとしお、その消息が思い遣られる・・・・・

 

 "ディスコ 新宿うえだ"は都内に散在する様々なディスコテークからみれば、いかにも小さな店だった。新宿、歌舞伎町に建つ五階建てのビルの地下にあって、それほど豪華な設備が整っているわけでもなかった。それでも多くの若者たちを引き付けていたのは、地の利を活かした便利さと気安さのせいに違いなかった。

 マスターの上田さんは、四十歳前後の無口な人だった。噂によれば、かつて暴走族のリーダーとして鳴らした人で、交番襲撃や高速道路の料金所突破などを指揮して、何度か刑務所の門をくぐったという事だった。

 無論、無口な上田さんは、みずからそんな事を口にした事はなく、現在の上田さんにそんな面影を見る事もまた、出来なかった。それでも上田さんの表情にはどこが、少し翳りを帯びたように見えるところがあって、それが、そこにたむろする若者たちに奇妙な親近感のようなものを与えていた。

 

 彼らは偶然、この店で出会った、世間の常識から言えば、いわゆる"落ちこぼれ"と言えるのかも知れない若者たちだった。土曜日の夜になると、何処からともなく、"ディスコ  新宿うえだ"にやって来た。決して目立つ存在ではなく、彼らに言わせれば、「お堅い連中」が、やかましいだけのディスコサウンドにのってわんさか踊っている間中は、いつも隅の方で小さくなっていた。店内に繰り広げられる、少なくとも上辺だけは華やかな饗宴にも、彼らはなんの関心も示さなかった。たまたま、親からはぐれた子犬が雨宿りの軒先を見つけでもしたかのように、ただ、店内の片隅で居心地の良い自分たちの巣を暖めているように見えた。ピンキー、トン子、安子にノッポ、そして画伯にフー子・・・・・ お互いの名前も知らないままに彼らはいつからか、そう呼び合うようになっていた。

 午前零時にディスコ音楽が鳴り止んだ。点滅するレーザー光の証明が消えて明るい蛍光灯が点されると、お堅い連中が帰っていった。あとにはいつもと変わらず、荒れた海辺に打ち上げられた木ぼっくいのように、散らかり放題のテーブル席のあちこちに取り残された彼らの姿があった。

 言い出しっぺは例によってトン子だった。

「ねえ、ねぇ、横浜へ行ってみない? 横浜の港へ外国航路の船を見に行こうよ」

 トン子とはその名のとおりに、豚に似た丸っこい体つきから付けられた呼び名だった。彼女には他にも、九官鳥というあだ名があって、その騒々しいおしゃべりには誰もが辟易させられた。成田市に近い農村に実家があって、土曜日の夜になるといつも二時間以上をかけて新宿へ通って来るのだった。

「横浜?」

 安子と向き合って椅子に掛けていたノッポが振り返って言った。

「うん、わたしいっぺん、外国航路のきれいな船を見てみたいって思ってたのよ」

「外国航路の船がいるの?」

 安子が突っ掛かるような、棘のある言い方をした。

 安子は不感症だった。そのため、いつも不機嫌だった。彼女はこれまで自分の人生に、心からの満足感を抱いた事が一度もなかった。時々、ノッポと寝る気になったが、それは気が滅入って哀しくてたまらず、そうしなければいられない時に、そうするだけだった。そんな時は彼女でも、他人との繋がりが欲しいと思うのだ。

 だが、彼女は決して、ノッポの愛撫を心でも体でも受け入れる事が出来なかった。いつもノッポの喘ぎを遠い夜汽車の過ぎて行く音のように聞いていた。そして、ノッポの感激に満ちた表情を自分のかたわらに見ると、この背丈だけはバカデカイしょぼくれ男が、当分、自分から離れてゆく事はないだろう、と思って安心するのだった。

「いるかどうかは分からないけど」

 トン子はしどろもどろに言った。

「クイーン・エリザベス号でもいるって言うんなら話しは別だけどさ」

 ノッポが安子の機嫌を取るように、皮肉をにじませて言った。

「クイーン・エリザベス号なんているわけないじゃない」

 安子はノッポの言葉尻をとらえてやり込めた。ーー 続く

 

 

          平凡(2018.11.10日作)

 

   平々凡々

   平凡が珠玉の宝物(ほうもつ)である事は

   平凡を 失ってみなければ分からない

   平凡の中に一つでも 自身の歩む

   その道を

   見付ける事が出来たら

   それに勝る 人生はない

   威張るな 偉くなるな

   人間は偉くなったら 終わりだ

   偉くなろうとする 心が大切

   偉くなろうとする 心を 持ち続ける

   その心がある限り 人間は

   偉くならないで 済む

 

   人間 初心 道

 

    

 

 


遺す言葉 216 ピカソの言葉 他 雑感十二題

2018-11-18 12:11:16 | 日記

          ピカソの言葉 他 雑感十二題(2018.10.3日ー11.10日作)

 

   1 手早く描いた一枚のスケッチに

     高額の値が付くのを羨んだ人に

     ピカソは言ったという

    「一本の線を描くのに

     二十年もの歳月をかけたんだ」

     世紀の大天才 ピカソにして

     この言葉あり

     凡才 押して知るべし

   2  創作に係わる者たちが

     より過激に変身してゆくのは

     その地点に留まっていては

     自身の存在が枯れてしまいそうな焦燥感に

     捉われるからだ その焦燥感に突き動かされ

     真の芸術家は より深く高度なものを目差して変貌する

     一地点に留まり 次々に同じものを創り上げてゆくのは

     コピー屋と呼ぶにふさわしい

   3 職人は同じものを作りがらも日々

     より完璧なものを目差して仕事をしている

     職人にとっては 失敗は許されず

     人に笑われる事が最大の恥だ と

     ある職人は言った

   4 実際の行動 行為を経て体得した知識には

     書物上から得た知識理論の遠く及ばない地点の

     深さ 重さを持った真理がある

   5 どんな職業の人であっても

     長い歳月をかけてその道の技術を習得し

     真摯 誠実に その職業を生き

     外の人には出来ない仕事をした人は

     尊敬に値する

   6 命 

     人は生きているだけで

     人の心に灯を燈すことが出来る

   7 人間は死ぬために生きている

     自身の命の終わりに際して

     苦悩 後悔のないように

     より良い最期を迎えるために

     日々 充実した生を生きるのだ

   8 人間が生きているのではない

     命という存在があって その命が生きている

     人間が生きる事に意味などない

     意味などあったら人は

     息苦しくて生きてはゆけない

     意味などないから人は自由に

     自分自身を生きられる

   9 何処に居ても 何をしていても

     一日一日が幸福である事が

     人間の生きる真の意味だ

  10 文明の進歩 科学の進歩とは人の

     人間の不安を日毎夜毎 増大させてゆくもの

     以外の何ものでもない

  11 人が生きる究極の目的は 

     生涯を幸福に生きる事にある

     幸福とは 各人各様 人がこの世に生きる数だけ

     幸福の姿がある

  12 人間の幸福を伴わない世界では

     科学の進歩 芸術の発展にも

     意味はない

   

 

     

     

 

 

     

     

     

   

    


遺す言葉 215 歌謡詞 夢の街 横浜・帰っておいでよ 青い鳥

2018-11-11 12:28:53 | 日記

          夢の街 横浜(2018.10.20日作)

 

   遠い港の灯りが揺れる

   夜霧が白く流れる街を

   このままいつまで歩いていたい

   横浜 横浜 あなたとふたり

   夢の幸せ恋の街

   -----

   船の汽笛がにじんで消える

   ホテルの窓に灯りがともる

   なぜだか泣きたい幸せすぎて

   横浜 横浜 口づけ受けて

   夢にただよう恋の街

   -----

   夜が更けゆく波止場のあたり

   白い夜霧に灯影がうるむ

   このままいつまで肩寄せ合って

   横浜 横浜 優しい愛に 

   夢がふくらむ恋の街

 

          帰っておいでよ 青い鳥(2018.11.2日作)

 

   幸せの青い鳥

   かごから逃げて どこへ行ったの

   枯れ葉がくるくる ころげる街に

   夢をなくした あの娘(こ)がひとり

   空は夕やけ もう日が暮れる

   -----

   幸せの青い鳥

   も一度かごに 戻っておいで

   夏の海辺の すてきな彼の

   愛の便りを つばさに乗せて

   今はさびしい もう秋だから

   -----

   幸せの青い鳥

   どこかで誰か 見たでしょうか

   おさげの可愛い あの娘の眼から

   白い涙が あふれて落ちる

   街は日暮れて もう星明り

   

   

   

 

   


遺す言葉 214 勘三郎二代 十八世 追善公演に寄せて

2018-11-04 12:37:07 | 日記

          勘三郎二代(2012.12.11日作)

               十八世勘三郎七回忌追善公演(11月1~26日)に寄せて

 

   何気なく眼にした

   テレビの画面では十七代目 中村勘三郎が

   軽妙な踊りを披露していた

   見るともなく眼にした画面に

   息を呑み 引き込まれた

   見たものは 演者の消えた

   踊りの主人公 そのものの動き 姿

   臭気の全くない舞台

   テレビの画面を突き抜けて

   主人公が眼の前に迫り来る感覚

   後年 十八代目 中村勘三郎の名前が持て囃され

   評判になり始めた その頃 同じ舞踊が

   十八代目により

   テレビの画面に展開されていた

   若さに満ちた舞い姿 若さが持つ

   色香 軽やかな身のこなし

   十七代目の枯淡とは異なる舞台模様

   テレビの画面が映し出す

   模様の差異 それはそのまま

   芸の上での差異でもあった

   匂い立つ若さ 軽快な身のこなし その裏に

   透けて見える 演者の姿 

   抜け切れない臭気

   踊りをおどる意識の漂う舞台

   青臭い・・・・勘九郎の影を引きずり

   以来 高まる世評とは裏腹 十八代目への

   肯定の気持ちは生まれなかった

   -----

   テレビの画面に再び

   十八代目 勘三郎の姿を見た時には

   幾年月もの時が流れていた

   古典芸能番組

   演じる芝居の主人公

   勘九郎の影の消えた

   勘三郎 そのものの顔が

   そこにはあった 豊かな才能

   その才能の片鱗が 垣間見える舞台

   以前にも増して盛り上がる世評を

   敢えて 否定するものは何もなかった

   -----

   親から子へ 子から孫へ

   代々 引き継がれ 育まれたに違いない

   豊かな才能 その才能に更なる磨きが掛かり

   大きな役者への飛躍

   そんな予感が生まれた矢先

   平成二十四年 2012年 十二月五日 死去

   -----

   十八代目 中村勘三郎は生まれ持つ才能

   その完成の待たれた

   これからの役者であった

 

          すべて良し(2012.10.11日作)

 

   早熟の天才 駆け抜ける

   束の間の栄光

  

   愚鈍の才 積み重ねた努力

   苦難苦闘の日々

 

   成し遂げられた 一つの道

   朝日に輝く道

   夕陽に浮かび上がる道

   

   追憶の中

   終わり良ければ 

   総べて良し

 

   やがて来る道  

   無

      

    


遺す言葉 213 巨人 高橋監督辞任 ああ しんど !

2018-10-28 12:40:04 | 日記

          巨人 高橋監督辞任 ああ しんど ! (2018.10.23日作)

 

   巨人ジャイアンツ 高橋由伸監督 辞任

   名門 ジャイアンツ 三年間指揮 優勝なし

   挙句 今年 クライマックス シリーズ

   あの 体たらくーー 当然の結果 結末

   おい おい 待てよ ちょっと待て

   おかしくないのか ? 変ではないのか ? 

   高橋由伸 なにも望んで監督 その座に

   就いた訳ではないんだぜ 現役続行 選手として

   さらなる発展 飛躍を望んだのではなかったか ?

   そんな由伸を 無理矢理 監督 その座に

   押し込んだのは 誰だったんだい ? いったい 

   誰だったんだ ? それなりの

   教育 訓練 練習 稽古 体験 それもさせず

   いきなり 幼い子 道の左右も分からぬ幼児に

   使い走りの その道に 放り出すように

   監督就任 命令 その命令を下したのは いったい

   誰だったんだい ? しかも その道

   行く先々 道中には あまたの外敵 

   空を見上げれば 猛禽類の鷹や金の鷲

   飛び交う虫を抜け目なく ここぞとばかりに捕食の

   素速いツバメ 長い髭に鋭い牙 大きな目玉に 大きな体

   あの龍と 地上を見れば 猛虎 に 猛牛 野生の王者

   たて髪なびかせ 立派なライオン それを見つめる

   闘う者達 広い島の池には 食欲旺盛 鯉の群れ

   その他 諸々 手ぐすね引いて待ち受ける

   油断のならない 外敵面々 気の毒なのは

   高橋由伸 無能な監督 無能な指揮者 無能な奴

   ひ弱な巨人 哀れな巨人 その元凶 出来ない男

   世間 世の中 世の中みんなが醒めた視線の 冷たい眼を

   投げ掛けかねない そんな立場に追い込まれても

   愚痴 その一つも言えない辛さ 恨みの一つも言いたいところ

   それでも すべてを自分の身に引き受けて きっぱり きれいに ただ

   身を引くだけ --この悔しさ いったい 何処の どいつに

   ぶつけりゃいいんだ この怒り この鬱憤

   昔も今も変わらぬもの すまじきものは宮仕え

   愚かな上司 愚かな役員 一息入れるその間も与えず

   荒野の暗闇 荒地の険しいその真ん中に 見境

   考慮もないまま 放り出す

   放り出された高橋由伸 いい面の皮 立つ瀬がない

   同じ球界 プロ球界で その昔

  「上がバカだから」 言い放った

   快人物がいたはずだ 世間 世の中 人間社会

   いつになっても変わらない すまじきものは宮仕え

   世間の人間 多くの人達 人々みんな 汗水たらし

   一生懸命 愚かなあいつ 嫌いな奴 そんな上司の機嫌を取って

   顔色窺い 働いて 働き 働き 働き続けるより仕方がない

   生きるという事 辛い事 楽な仕事は この世の中 御座いません

   せめて自身にそう言って 肝に銘じて 納得させて

   自分を慰め 辛い道のり 人生を

   歩いて行くより仕方がない

   生きて行くより仕方がない

              ああ しんど !

 

    


遺す言葉 212 勝者となるには ほか 三篇

2018-10-21 12:46:46 | 日記

          勝者となるには(2018.10.10日作)

 

   総ての人たち 誰もが

   勝者となるには

   物事の本質 真実を見極め

   ひたすら寡黙に

   その道を歩み続ける その事しか出来ない

   ひと時の 賞賛 非難に

   右往左往 する 事は ない

   どの時代  何事に於いても

   物事の本質 真実を見極め

   辿る道は

   細くて 狭い その途上

   差し出される手 

   様々な手が 時には

   得意さを 煽り立て 時には

   絶望の淵へと 追い込み

   その道を往く者たちを

   翻弄する

   そんな中 唯一

   物事の本質 真実を見極める

   確かな眼を持ち その道を歩み続ける者

   そんな者たちだけが 生き残り

   数少ない 成功者

   豊かな稔りを 手にする者と

   なるだろう

 

          虚栄と真実(2018.10.15日作)

 

   自分を大きく見せようとする行為は

   自分が今居る場所に満足している事の表れ

   そこには それ以上の進歩 進化はない

   自分は これだけの人間だ という事の証明

   自分に対して謙虚な人間は

   自分がまだ 何ものかの高みに到達し得ていない

   未成熟者としての自覚を持つ者として

   今より以上の 進化 発展

   人間としての 更なる飛躍が

   期待出来る

   -----

   自分がどんなに威を張っても

   他者の眼には その言動を通して

   その人の実像 真実 が 見えている

   自分を大きく見せるために

   威を張り 繕う事は 

   徒労であり 愚かな事だ

   

          威張りたがりや(2018,10.19日作)

 

   真の実力が身に付いている者は

   自分の居る世界を当然の事のように受け止め

   あえて 威張る必要を感じもしない

   真の実力が身に付いていない

   一時の成り上がり者だけが

   たまたま手にした高みの世界に

   心を昂ぶらせ 自分が

   抜きん出た存在に思えて

   威を張りたがるものだ

   


遺す言葉 211 夜のとばり ・ いつ 何処で

2018-10-14 12:39:56 | 日記

          夜のとばり(2018.8.28日作)

 

   みんなは いったい 

   何処へ行ってしまったのだろう

   ブランコが小さく揺れている

   たそがれの公園には 誰もいない

   わたしの耳には

   幼い子供たちのざわめき

   若い母親たちの わが子を呼ぶ

   かん高い声が

   遠い潮騒のように残っている

   さて わたしはこれから何処へゆこうか

   家々の窓にも明かりが点いた

   すでに人生の長い道のりを歩いて来た

 

          

          いつ 何処で(2018. 9.6日作)

 

   人はいつ 何処で

   なくしてしまうのだろう

   おさな子たちが持つ あの

   キラキラした瞳の輝き

   無垢の笑顔

   なんの疑念も抱かずに

   口にする 夢と希望

   過ごして来た月日の数だけ 人は

   汚れを身に付けてゆくものなのか

   過ごして来た歳月の数だけ 人は

   夢と希望を失くしてゆくものなのか

   生の終わり

   人がのぞき見るものは

   絶望の深い淵

   黒い引き幕


遺す言葉 210 芽ばえ (前回作 若干の訂正)

2018-10-07 12:49:16 | 日記

          芽ばえ(2008.10.5日作) と 前回作の若干の訂正

 

   1 その人は片田舎の小学校の教師だった

     二年生の担任だった

     笑顔の優しい女の先生だった

     それから四年が過ぎた

     その人は隣村の県道沿いの貯水槽で

     ある夜 自殺した

     着物のたもとに県道に敷かれた砂利石を入れて・・・・

     なぜなのか 理由を知る事は出来なかった

     ただ 驚きと共に 心にさざ波が立ち

     哀しみが小さな笹舟のように走った

   

   2 その人は小学校五年生の担任だった

     先生というよりは年の離れた

     姉という感じの人だった

     年配の教師達の多い中で若さと共に

     その美しさが心に残った

     ある放課後 その人は教室の窓辺に立っていた

     当時 盛んに唄われていた「憧れのハワイ航路」を

     わたしが口ずさんでいるのを耳にしたその人は

    「その歌の小説を持っているわよ。貸してあげようか」

     と言った

     -----

     本を借りる事はなかった

     後年 その人は他校へ転任になり

     わたしは中学校三年生になっていた

     そんなある日 偶然 県道でその人と

     お互いが自転車ですれ違った

     その人とは ただ 目礼をしただけだった

     正面からその人を見る事が出来なかった

     胸の内に走る かすかなトキメキを覚えていた

     -----

     以降 その人と再び会う事はなかった

     消息を聞く事もないままに時が過ぎた

     なぜか心に残る少年の日の思い出

 

          面影の 人は遠くに 木犀花

 

     (前回の文章中 寺田寅彦「作」を「の言葉」と変更します

      また 災害は忘れた頃にやって来る を 天災は・・・と変更します

      愚作の災害は という言葉に引きずられ つい 災害と書いてしまいました)

     

                   


遺す言葉 209 仕事 及び 雑句 金木犀他

2018-09-30 12:19:03 | 日記

          仕事 及び 雑句十二(2018.9.25日作)

 

   それが どんな仕事でもいい

   その職場 職種に於いて あなたは

   常に 最良 最善 最高の仕事をしているか ?

   仕事をする人に於いて 

   最も高く評価されるものは

   職場 職業には関係ない

   地位 名声とも関係ない

   職業 職種に貴賎はない 

   その職場 職種で その職場 職種に

   最も 相応しい仕事をしているか ?

   その職場 職種が持つ その役目を全うしていいるか ?

   その職場 職種に 最も相応しい仕事をしている人こそが

   最も高く評価され 尊敬され得べき人

   どんなに有名 高名 名の売れた職場 職種 職業に

   従事していようとも その中で

   その仕事の責務を全う出来ない人間は 紙くず

   どの仕事 どんな仕事であっても その仕事が

   この世界 この社会に存在する限り 

   人は その仕事を 必要としている

   人が 必要としている仕事に付いて

   その仕事を全うする人の姿こそが

   最も美しく 最も尊く

   最も尊敬に価し得る人

 

 

          -----

 

   木犀の 香り豊かに 終(つい)の家

   金木犀 長い旅路の 終の家

   木犀の 香に包まれて 終の家

   幸せの 香りのせ来て 木犀花

   亡き父の 面影浮かぶ 金木犀

   散り敷いて 金木犀の 秋深し

   今日の朝 散り木犀に 金の庭

 

   逝く友の 年毎多く 彼岸花

   またも来て われを濡らすか 里しぐれ

   

   近頃は 忘れなくても 来る災害

   (寺田寅彦の言葉 天災は 忘れた頃に やって来る)

 

  いつだって おまえは良くて おれはバカ

  いつだって あなたは良くて わたしバカ

  (日頃 よく口にしませんか バカだなあって)

   


遺す言葉 208 大聖堂 及び 謎の答え

2018-09-23 12:43:23 | 日記

          大聖堂(2018.9.23日作) 及び 謎の答え

 

   ヨーロッパ各地に見る

   あの豪華絢爛たる大聖堂 教会 

   あれは一体 何を意味しているのだろう 

   もし あれが神を奉り 崇拝するためのもの その仕掛け

   装置であるなら 神は

   あれ程 豪華な建造物 建物を

   望んだであろうか ?

   もし 神が 神という存在が

   実在するのなら その神は

   この人間社会に於ける苦悩に満ちた

   悲惨な状況 その姿を どのような眼

   眼差しで見つめているのだろう ? もし

   真に神が存在するのなら その神は

   この人間社会に 満ち満ちた 悲惨 悲劇に

   眼をつぶり その悲惨 悲劇の状況を 放置

   放擲したまま 自身を崇めるための

   あれ程に豪華絢爛 きらびやかな 建造物

   建物を 建築 作製する事を 

   望んだであろうか ? もし 神が 真の神が

   存在するのなら その神は

   自身のために費やす 豪華絢爛 きらびやかな

   金銀財宝 巨万の富の何分の一 あるいは何十分 何百分の一かを

   日々 身をすり減らし 身を削って生きている人々 貧しい人々

   困窮 困難にあえぎ もがき 苦しむ人々 その人々に 分け

   与える事を望まなかっただろうか ?

   神とは 宗教とは 教会とは 聖職者とは ?

   すべては虚構 すべては人間が創り出した

   実体のない想像物 神など

   存在しない そう考える事は

   不遜だろうか ?

   教会 聖職者 実在しない神の名の下

   自身の保全 保身 そのためにのみ

   外見 見た眼を飾り 虚飾に走り

   虚構の世界を 営々と

   築き上げて来てはいなかったか ? 世に暴かれる

   数々の不祥事 悪行 愚行 その

   教会 聖職者 達の実体は 何を語って

   何を訴えているのか ?

   宗教 神の名の下 種々 様々 実行される

   強権 弾圧 人権侵害 醜い争い 幾多の戦争

   それらは何を語って 

   何を訴えているのか ?

   優れたもの 真に優れたもの達 それらは常に

   単純明快 謙虚 裸身で その姿をさらす

   金銀財宝 飾り 装飾 一切無用 必要とはしない

   見た眼の豪華さ 華やかさ 豪華絢爛 きらびやかさ

   惑わされるな 幻惑されるな 単純明快

   裸身をさらす その姿 それこそが真実

   それこそが最も尊く 最も 美しい

   -----

   豪華絢爛 華美華飾 隠す内部の空洞空虚

   -----

   真の芸術家は 

   貧しい環境 貧しい現場であろうと

   豊かな環境 豊かな現場であろうと

   常に自己の最善を表現する事を

   目差す

   似非芸術家のみが金品値段に執着する

 

 

     前回 謎の答えです(なお これは古い文献によるものです)

 

     ひる か ら はち とかげ も あり くも のみ ね

     ヒル カ    ハチ トカゲ   アリ クモ ノミ です

 

          たけじいさん お答え有り難う御座いました

                   御知識に感服致します

                   有り難う御座いました

          ブログ 毎回 楽しみに拝見させて戴いております

          趣味が御豊富なようで羨ましい限りです


遺す言葉 207 夏よ さよなら + 謎 解いて下さい

2018-09-16 12:18:22 | 日記

          夏よ さよなら + 謎 解いて下さい(2018.9.10日作)

 

   夏よ さよなら

   秋の風が 囁く

   焼き付く太陽 燃えた恋

   真夏の海辺に 光る砂

   頬を寄せ合い 夢見た幸せ

   夏の日の あれは

   はかない幻なのか

   波に聞いても 答えない

   夏よ さよなら

   秋の風が 囁く

   -----

   夏よ さよなら

   秋の海は 淋しい

   うつろな心で たたずめば

   素足を濡らして 波が散る

   一人たわむれ 涙に浮かべる

   夏の日の 今は

   帰らぬ思い出ばかり

   風に話せど 答えない

   夏よ さよなら

   秋の海は 淋しい

 

      -------

 

      昼からは ちと影もあり 雲の峰

   ( この中に七種の小さな生き物が隠れています

    探して下さい。答えは次回に書きます)

 

 


遺す言葉 206 この国は今

2018-09-09 12:25:59 | 日記

          この国は今(2010.5.9日作)

                この文章は平成二十二年に書いたもので

             平成三十年の現在とは多少の齟齬があるかも知れません

             平成も間もなく終わる時に時代の一つの記録として残して

             置きたいと思い掲載しました

 

   昭和二十年 1945年 八月十五日

   この国は無謀にも自らが仕掛けた

   太平洋戦争 第二次世界大戦に 敗北した

   その日を境に この国は一変した

   敗戦国の惨めな姿 隠された真実が

   一挙に露呈した

   国土は荒廃し 廃墟にも等しい

   悲惨な街の姿が あちこちに顕在化した

   人々の生活は困窮の極みに突き落とされ

   その日 その日を 懸命に 精一杯

   命をつなぐ事にのみ かけ

   生きて来た

   以来 半世紀を越える歳月が過ぎ

   2010年の今 この国は

   必死に 懸命に

   戦後の混乱と苦難に満ちた日々を

   生きて来た人々の

   努力の中で手にした成功のあとの

   虚脱の中にいる

   戦後の国土の荒廃

   廃墟の中から立ち上がった人々が

   心の中に宿した 漲る熱気 あの活力は

   平成二十二年の今を生きる人々の 心の中には

   昭和二十二年を生きた人々の 心の中にあったようには

   存在しない

   過去 半世紀を越える歳月の中で

   懸命に生きた人々が勝ち取った

   豊かさの中に生まれ

   その土壌に馴れ親しんだ人々には

   もはや その豊かさは

   自分達の身の廻りにある

   当然のものとして 

   そこにあるように思い

   それ以上の世界を望む事も

   思い描く事も出来ないかのように

   新たな世界を求める気力も

   目指す気力も

   見い出せないままでいる

   歳月は それでも 確実に

   過ぎて逝く

   かつては この国の人々の

   努力と成功を羨望の眼差しで

   横目で見ている赴きのあった

   幾つかの隣国がその間に

   眼を覚まし この国が目指した

   発展と成功の跡を学び

   追い掛けるかのように立ち上がり

   かつてのこの国が手にした努力の成果を

   追い求め

   かつてのこの国が世界に誇った成功の体験を

   もはや この国一国のものとしてではなく

   幾つもの隣国がそれぞれに

   手にし始めている

   未来への展望を見い出せないままでいる

   かつてのこの国の人々が持っていた情熱と

   覇気を失くした 今を生きる人々が

   ふと 気付けば

   この国の成功体験者としての地位は

   脅かされ 他国の漲る力の前に

   押し流され兼ねないような不安の中で

   恐怖と焦燥感にあえいでいる

   いったい この国がこれから先

   未来に向かって進むべき道は ? 

   この国の今を生きる人々が

   押し寄せる他国の力の前に

   怯えているものの正体は ?

   今を生きる人々は

   かつてのこの国が手にした成功体験

   その果実のまだ

   完全に失われていないと思える今

   冷静に考察し

   かつてのこの国の人々が心に宿した

   漲る熱気 あの活力を

   再び取り戻すには

   何が必要なのかを

   それぞれの心に問い掛け

   この国の新たに進むべき道を模索するーー

   幸い この国には この国が持つ

   長い歴史の中で育まれた

   他国に誇り得る この国独自の

   文化がある 力がある

   その文化に根差した

   この国の在り方が

   平成二十二年 2010年 の今

   世界の各地で少しずつ

   芽を吹き始めているのが見える

   ジャパニーズ クール

   クール ジャパン

   世界は今 新たな眼差しで

   この国の姿を見つめ始めている

   

   

   

   

   

   

   

 


遺す言葉 205 雑感・・・九題

2018-09-02 12:44:12 | 日記

          雑感(2018.1~6月作)

 

   1 世の中の誰もがあなたほどに

     聡明なわけではないと納得出来れば

     世の中の愚劣さも

     少しは大目に見る事が出来るだろう

     世の中には 腹の立つ事ばかりが多い

   2 人の上に立つ者は                                              

     一個人の感情を大切にしなければならない

     一個人の感情を蔑(ないがし)ろにすれば

     そこから水が漏れ始める

     力で抑え付ける事は 個人が窒息し

     組織の崩壊を招く事になる

   3 世界は真に優れた数人の指導者が居れば 治められる

     その証拠に ヒトラーはあれだけの帝国を築いた

     彼が滅びたのは

     悪徳の指導者だったからだ

     有象無象の政治家など 何人居ても意味はない

     (わが国日本の政治家は現在の半分の数で沢山だ

     タイコや笛で踊りを踊るだけの政治家は金食い虫と一緒

     半分に減らした政治家に使っていた政治資金を 国民の為に使えば

     やたらな増税などしなくて済む)

   4 自由・・・・観念上 自由は無限であるが

     行動に於いての自由は

     他者との距離によって制限される

     自由は自己が持つ存在距離の範囲内に於いてのみ

     約束される

   5 歴史とは人間が創り出すものだ

     絶対的なものではない

     天皇制に於いても

     必然性があるのなら 変えなければならない

     必然性のないものを変えるのは愚行だ

     どんなに長い歴史を持つものであっても 

     現在の視点 人間社会の現実から見て

     その存在に必然性があるのかないのか

     その視点の下(もと)で決定されなければならない

   6 人が生きるこの世の現実ほど  

     残酷なものはない

     現実は我々の想像もしない事象 悲劇を

     いとも簡単に我々の眼の前に運んで来て

     平然としている

   7 泥の大地は

     無限の力で我々を支えてくれる

     金銀宝玉は

     我々の一部を飾る事しか出来ない

     重要性に於いてどちらが大か ?

   8 小才の利く手を持つより

     しっかりと大地を踏みしめる

     鈍重の足を持て

   9 人の偉大さは

     人間が人間として生きる上で

     人としての本道 本義に

     どのように深く真摯に関わり得たかによって

     決定されるもの その他の

     有名無名職業職種役職役柄地位名声などはすべて

     その人を飾る付随的装飾品にしか過ぎない

     人の偉大さには関係ない

     


遺す言葉 204 崩れてゆく

2018-08-26 12:44:37 | 日記

          崩れてゆく(2012.6.27日作)

 

   島と島をつなぐ連絡船が 定期的に

   港を出てゆくように

    

   始発の電車が 決まった時刻

   定められた時間に 毎朝

   ホームを 後にして行くように

 

   わたしの生活 時間の中に組み込まれ

   定められていた 数々の年中行事

 

   春の筍採り

   秋には柚子の収穫

   母を先頭に 兄妹夫婦揃っての

   故郷を訪ねる行事は 毎年続いた

 

   昭和二十年四月 入学

   戦後の一時期 

   小学校から 中学校卒業までの生活を

   共にした 級友達との同窓会は

   二年に一度 恒例化していた

 

   時の流れは

   誰もがまだ若く

   輝く命の キラメキに満ちた日々の中では

   移ろいの影一つ 見せる事もなく

   皮膚を撫ぜる微風の感触さえも残さず 

   過ぎていた

 

   眼には見えない 時の流れ

   輝く命のキラメキ そのキラメキが

   すべての世界を包み込み 華やかな

   命の宴を謳い上げる 中で

   時はだが 確実に足あとを

   人の生の中に刻み込んで行く

   ふと 気付いたある日 ある時

   いつの間にか過ぎていた 歳月

   時の流れが 人の命の老いを 衰退を

   手のひら感覚で 伝えて来る

   母が亡くなったーー父はすでに亡く

   訪れた故郷では いつも訪ねる家の

   老夫婦に 明らかな衰えの兆候

   わたし達 兄妹夫婦の中にも生じる

   身体的不調 不具合

   ボツボツ届く 同級生の訃報

   ーーいつも届く同窓会の通知は まだ届かず

   輝く命のキラメキはいつか 色褪せ

   忍び寄る不安 暗い影

   去年は出来ていた あの事 この事が 

   今年は 実行不可能

   わたしのまわりを囲んでいた

   堅固な世界が少しずつ

   削り取られてゆく

   命のはかなさ 時の無常

   せめて自身だけでもと 身構える心に

   見えて来るものは ゆく先の断崖

   行き止まりの 道 ・・・・・・・ 死

   

   -----

       付

   2018年現在 毎年欠かした事のなかった

   筍採りの竹林 柚子採りの柚子の木のあった

   千八百平米余りの土地には太陽光発電設備が設置されていて

   竹林も柚子の木もなくなっています

   いつも訪れていた老夫婦もすでに亡く わたし達兄妹も年老いました

   


遺す言葉 203 山口県 二歳児救出・・・人の価値 知識への考察

2018-08-19 11:45:15 | 日記

          山口県 二歳児救出・・・人の価値 知識への考察(2018.8.16日作)

 

   本当の知識とは なんだろう ?

   本当に立派な人とは どんな人だろう ?

   山口県での二歳児発見の報道を見て 聞いて

   改めて 考えさせられる

   生きた知識 真の知識

   どんなに書物を漁り 

   どんなに立派な理論を組み立ててみても

   究極に於いて 身体的体験で得た知識

   その知識に勝る知識はないのでは ?

   ある事に係わる人達 農業の人達 林業の人達

   漁業の人達 その他 諸々 

   現場で働く人達の知識 その人達

   その人々の持つ知識は 生半可な学問

   学者達の知識を はるかに凌ぐ はるかに上をゆく

   豊かな実の 稔りを持った知識では ないのだろうか ?

   警察が総掛かりで 何日も無成果に過ごした事件

   わずか三十分で解決した たった一人の

   ボランティアの男性 身に付いた知識 経験が

   その人の思考 行動を支配 したに違いない 人は

   名前や上辺 見ただけでは 判断出来ない

   外見は どんなに立派でも

   社会的 その地位がどんなに高くても

   人の価値 人の値打ちは それにより

   決定されるものではない 人の偉大さ 立派さ

   行き着く先は その人各々 各人が持つ 人格

   心の模様 日頃 日常の行動 生き方

   それらに尽きる 今現在 この国日本に於ける

   幾多の出来事 事象

   そこに眼を留める時 明確 明らかに

   見えて来るものがある この国の社会

   その社会に於ける いわゆる 指導的 ?立場

   とも言える地位(実力 人格は ?)にいる人間達

   その人間達の度重なる不祥事 節度の無さ

   幾多の醜聞 眼に余る 悪行 愚行 この度の

   二歳児救出 その発見者の

   一連の言動 姿勢 それと比較 比べてみる時

   どちらが立派で どちらがゲスか

   どちらが高貴 立派な人間で

   どちらがゲスで 卑しい人間か

   自ずと判断出来る

   世評や名声 地位 外見 それらに惑わされぬがいい

   眼には見えずとも 

   耳には聞こえずとも

   この社会 世の中 世間には 日々 黙々と

   人の為 人の道を 歩み 歩み続けている 人は

   あなたのそば わたしのそば にも

   数多く居るに違いない 居るはずだ

   平々凡々 何気なく日常 日々を生きているだけの人間

   わたしどもは せめて そんな人達の

   真摯な姿 真摯な生き方 を

   正しく見る眼 正当的確 間違いなく判断 評価 出来る

   明澄な眼差し 確かな眼だけは

   失いたくないものだ