MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『高慢と偏見とゾンビ』

2016-10-21 00:04:33 | goo映画レビュー

原題:『Pride and Prejudice and Zombies』
監督:バー・スティアーズ
脚本:バー・スティアーズ
撮影:レミー・アデファラシン
出演:リリー・ジェームズ/サム・ライリー/ダグラス・ブース/ジャック・ヒューストン
2016年/アメリカ・イギリス

中国と日本の「偏見」について

 タイトルだけでは「際物」のように見えるが、中身は意外としっかりしている。フィッツウィリアム・ダーシーと仲たがいしたエリザベス・ベネットはジョージ・ウィカムと親しくなり、ある教会に連れていかれる。実はそこはゾンビの集会場で、彼らは豚の脳みそを食べることで人間との共存を図ろうと努力しているとエリザベスは聞かされるのであるが、ウィカムを信じていないダーシーはそれは罠だと捉え、教会は既に崩壊したとエリザベスに嘘をつき、ウィカムに捕えられ教会に監禁されていたリディア・ベネットを一人で救出に向かいのである。
 当時は上流階級は日本へ、中流階級は中国で学ぶことになっている。ある貴族の家を訪れたエリザベスは相手から日本語で問われて答えに窮するが、本棚にあった『心』や『剣道』というタイトルの本の中から原書の『孫子』を抜き出して中国語で問い返す。
 そこまで細かい時代設定が整っているにも関わらず、ベネット家の姉妹たちが繰り出す少林寺拳法と貴族階級の日本の武道の違いが上手く描かれておらず、ゾンビとの対決などもそれらの武道が活かされていないところが惜しまれるが、ハリウッド映画においては決して珍しいことではない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ザ・ファン』

2016-10-20 00:11:19 | goo映画レビュー

原題:『The Fan』
監督:トニー・スコット
脚本:フォエフ・サットン
撮影:ダリウス・ウォルスキー
出演:ロバート・デ・ニーロ/ウェズリー・スナイプス/エレン・バーキン/ベニチオ・デル・トロ
1996年/アメリカ

熱烈な「ファン」の精神状態について

 主人公のギル・レナードを狂気に駆り立てる原因は2つある。一つは父親が起こしたナイフの会社で働いているものの、セールスマンとして実績が上げられずクビになってしまうことで、もう一つはかつてリトルリーグの主力メンバーとして活躍していたが、結局プロとしての実績を残すことができずに挫折してしまったにもかかわらず、未練だけは残り、熱烈なサンフランシスコ・ジャイアンツファンとして球場に足しげく通っているのである。
 2つの挫折の「はけ口」はアトランタ・ブレーブスから移籍してきた大物スラッガーのボビー・レイバーンに向けられる。最初はラジオを通じてボビーとコンタクトを取れたギルは、普通に電話をかけても話すことができたことでより身近に感じるようになり、ボビーの家をうろついているとたまたまボビーの息子のショーン・レイバーンが溺れているところに遭遇したギルはショーンを助けたことからボビーと知り合える。
 ところがギルはショーンを誘拐してボビーにホームランを打つように要求し、スタンドには入らなかったものの、ランニングホームランを狙ったボビーにアウトの判定を下したのは主審のなりをしたギルだったのである。ギルはボビーを自己同一視して余計なものを排除し「育てる」ことで自分の夢をかなえようと試みていたが、それは無意識のレベルであり、ボビーに何がしたいのか訊ねられたギルは答えられない。
 ギルがサイコパスと化したことを示す決定的なショットが下のカットである。

 ギルは自分が写っている写真に「To Gil  A True Fan(ギルへ 本物のファンより)」と書いてナイフを刺して車に残している。ギルがファンであると同時に殺したい相手は自分自身だったのである。サイコパスの精神分析としてはよくできている作品である。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ニック・オブ・タイム』

2016-10-19 00:07:08 | goo映画レビュー

原題:『Nick of Time』
監督:ジョン・バダム
脚本:パトリック・シェーン・ダンカン
撮影:ロイ・H・ワグナー
出演:ジョニー・デップ/クリストファー・ウォーケン/チャールズ・S・ダットン/マーシャ・メイソン
1995年/アメリカ

空回りするサスペンスについて

 脚本は悪くはない。突然、一人娘を誘拐されて州知事のエレノア・グラントの殺害を強要される主人公のジーン・ワトソンの葛藤をほぼ時間通りに描き、なおかつその事件の背後には最後に一人で事件現場を後にする謎のロビイストとホテルの靴磨きを生業にしながら実はホテル従業員全体を仕切っている元軍人のヒューイの「暗躍」も効果的に描かれている。
 それでもなお本作に不満が残る原因は、州知事の暗殺という事の重大さの割には、主犯を犯行直前にたまたま見つけた会計士にしてしまうところにある。できるだけサスペンスフルにしようとする余り、現実離れしてしまっているのである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ウルトラQ 東京氷河期』

2016-10-18 00:25:46 | goo映画レビュー

原題:『ウルトラQ 東京氷河期』
監督:野長瀬三摩地
脚本:山田正弘
撮影:内海正治
出演:佐原健二/西條康彦/桜井浩子/田島義文/有馬昌彦/佐藤英明/野本礼三/杉裕之/伊藤実
1966年/日本

リルケの『マルテの手記』の不正確な引用について

 桜井浩子が演じた毎日新報のカメラマンである江戸川由利子は上野駅の取材のシーンでドイツの詩人のライナー・マリア・リルケの『マルテの手記(Die Aufzeichnungen des Malte Laurids Brigge)』(1910年)の冒頭を暗唱している。脚本を執筆した山田正弘が元々詩人だからなのであるが、その引用は正確ではない。由利子は「現代の旅人は何を求めてこの大都会に集まってくるのか? 詩人リルケは言ったわ。『僕にはただ死ぬためにだけ集まってくる蟻のように見える。』東京は苦い砂糖なのよ」と言うのだが、英訳では「Here, then, is where people come to live; I'd have thought it more a place to die in.(ここに人々は生活の場としてやって来る。僕には寧ろ骨を埋める場所のように思える。)」となっており、蟻という言葉は無く、ここではいわゆる東京に出稼ぎに来る「働きアリ」と呼ばれていた人々を皮肉って山田正弘が加えたものであろう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ジェイソン・ボーン』

2016-10-17 00:23:56 | goo映画レビュー

原題:『Jason Bourne』
監督:ポール・グリーングラス
脚本:ポール・グリーングラス/クリストファー・ラウズ
撮影:バリー・アクロイド
出演:マット・デイモン/ジュリア・スタイルズ/アリシア・ヴィキャンデル/トミー・リー・ジョーンズ
2016年/アメリカ

シンプルさを信条とする主人公について

 確か主人公のジェイソン・ボーンの本名はデイヴィッド・ウェッブであり、彼の父親のリチャード・ウェッブはCIAの極秘プログラム「トレッドストーン計画」に関わったメンバーの一人だったが、息子が「殺人兵器」として雇われることを知り、その阻止を試みようとした矢先に爆破テロに遭遇して絶命してしまった1999年から17年越しでその首謀者であるロバート・デューイCIA長官に復讐を果たすというだけのストーリーをここまで膨らませて見せるというのはいつものシリーズらしい。
 しかしラストは微妙で、車内のエドウィン・ラッセル情報長官とヘザー・リーの会話を盗聴していたジェイソン・ボーンは再び姿をくらましてしまう。最悪の場合ボーンを始末すると言ったリーの発言はCIAに全幅の信頼をおいていない彼女の方便のようにも聞こえるのであるが、それは続篇で明らかになるかもしれない。字幕の和訳が良くなかったのでエンディングテーマになっているモービー(Moby)の「エクストリーム・ウェイズ(Extreme Ways)」の和訳をしておきたい。

「Extreme Ways(Jason Bourne)」 Moby 日本語訳

とても困難な道のりが再び戻って来る
こんな危険な場所だとは思っていなかった
俺は再び新しいものなら何でも壊していった
かつて俺が持っていたもの全てを
俺は窓から全てを捨てて調子を取り戻した
俺が知っている困難な道のりは
俺の波の色を区切り
俺を完璧な色に染めるんだ

とても困難な道のりが俺を助ける
夜遅くなると助けてくれるんだ
俺が行った危険な場所はどこも一筋の光さえ見つからなかった
不潔な地下室
不愉快な騒音
汚い場所を通っていき
極限の世界に独り残される
そんなところを気に入ることがあったか?

俺はそんなことにおとなしく従っているつもりだった
人生においては何でも受け入れる場所がいつでもあるから

そんな時世界が崩壊したんだ
そんな時世界が崩壊した

究極の音が俺に語った
それが毎晩俺を眠りに誘った
俺から話すことは何もなかった
俺は光明を諦めることはなかった
目を閉じて自分の殻に閉じこもり
自分の世界を閉じて
俺を捕えようとするもの全てに対して決して心を開かなかった

俺は全てを閉ざさなければならなかったし
心を開いてはならなかった
余りにも多くのものが俺を傷つけようとするから
物事が多すぎると俺は盲目になってしまう
多くの場所で多くのものを見るとはそういうこと
心が受けた多くの傷
多くの人々の顔に
多くの汚れた物事で
おまえは何も信じられなくなる

俺はそんなことにおとなしく従っているつもりだった
人生においては何でも受け入れることがいつでも良いことだから

そんな時世界が崩壊したんだ
そんな時世界が崩壊した
いつものように
いつものように

Moby - Extreme Ways (Jason Bourne)


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『世界一キライなあなたに』

2016-10-16 00:42:43 | goo映画レビュー

原題:『Me Before You』
監督:シーア・シェアイック
脚本:ジョジョ・モイーズ
撮影:レミー・アデファラシン
出演:エミリア・クラーク/サム・クラフリン/ジャネット・マクティア/チャールズ・ダンス
2016年/アメリカ

知性がある故の厳しい選択について

 銀行員として働いていたウィル・トレイナーがバイクに衝突された後遺症で車イス生活を余儀なくされて2年が経った頃、イギリスの田舎町に住むルイーザ・クラークは20歳から6年間働いていたカフェが閉店になり途方に暮れていた。そんな時、高額のギャラをもらえる仕事として紹介された先がウィルが住むイギリスの実家の大邸宅だったのである。
 最初はギクシャクした2人だったが、ルイーザの天性の明るさでウィルは少しずつ心を開いていく。字幕のある映画は観ないと言っていたルイーザにウィルは『神々と男たち(Des hommes et des dieux)』(グザヴィエ・ボーヴォワ監督 2010年)という作品を観せたことでルイーザは作品の奥深さを知り、その後、体育会系のボーイフレンドのパトリックと『オール・アバウト・マイ・マザー(Todo sobre mi madre)』(ペドロ・アルモドバル監督 1999年)を映画館で観たりするのであるが、そもそもルイーザは頻繁に読書をしており文学に関する素養はあったのである。
 当然、ウィルはルイーザの才能を見抜き、兄弟の多い彼女の家族がお金に困っていることも知り、決意を固めたのであろうし、頭の良いルイーザもウィルの「合理性」に反対のしようがなく、『淵に立つ』(深田晃司監督 2016年)ほどではないとしても結末は何とも言えない。この作品のために書かれたらしいイマジン・ドラゴンズ (Imagine Dragons)の「ノット・トゥディ(Not Today)」の歌詞の内容はどのようにも解釈できる絶妙なものである。以下、和訳。

「Not Today」 Imagine Dragons 日本語訳

彼女が目の前に現れ
僕の人生を連れて再び僕を自由にして欲しい
僕たちはそれで思い出を作ろう
聖なる道が僕の後にできる
見つめたまま再び僕を元に戻さないように
僕たちはそれで思い出を作ろう

僕たちはついに失敗してお互いの心を傷つける
もしも僕たちが生まれたての愛を生きたいならば
僕たちは今日始めた方がいい

ますます楽になっている
どういう訳かますます楽になっていく
だって僕は落ちていっているから
どういう訳かますます楽になっていく
僕は呼んでいる
終わらない限り終わることはない
そのために待っていたくはないんだ
ますます楽になる
どういう訳かますます楽になっていく
でも今日ではないんだ
今日ではない

彼女が目の前に現れ
僕の人生を連れて再び僕を自由にして欲しい
僕たちはそれで思い出を作ろう
聖なる道が僕の後にできる
見つめたまま再び僕を元に戻さないように
僕たちはそれで思い出を作ろう

僕たちはついに失敗してお互いの心を傷つける
もしも僕たちが生まれたての愛を生きたいならば
僕たちは今日始めた方がいい

ますます楽になっている
どういう訳かますます楽になっていく
だって僕は落ちていっているから
どういう訳かますます楽になっていく
僕は呼んでいる
終わらない限り終わることはない
そのために待っていたくはないんだ
ますます楽になる
どういう訳かますます楽になっていく

だから僕と一緒に来て欲しい
君は僕と一緒に来るんだ
だから僕と一緒に来て欲しい
君は僕と一緒に来るんだ
今日ではないけれど
今日ではないけれど

ますます楽になっている
どういう訳かますます楽になっていく
だって僕は落ちていっているから
どういう訳かますます楽になっていく
僕は呼んでいる
終わらない限り終わることはない
そのために待っていたくはないんだ
ますます楽になる
どういう訳かますます楽になっていく
ますます楽になる
どういう訳かますます楽になっていく
今日ではないけれど
今日ではないけれど

Imagine Dragons - Not Today from ME BEFORE YOU


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『淵に立つ』

2016-10-15 00:10:46 | goo映画レビュー

原題:『Harmonium』
監督:深田晃司
脚本:深田晃司
撮影:根岸憲一
出演:古舘寛治/筒井真理子/浅野忠信/篠川桃音/三浦貴大/太賀/真広佳奈
2016年/日本・フランス

地獄の「ハルモニウム」について

 主人公の鈴岡利雄が妻の章江と10歳の娘の蛍と暮しながら小さな金属加工工場を営んでいたところに、ある日、利雄の友人の八坂草太郎が訪ねてきて3週間ほど工場で働くことになる。
 詳細は省くが、キャンプに行った際に眠っている利雄と蛍を挟んで章江と草太郎が写真を撮るのであるが、それから8年後のラストシーンにおいて草太郎の代わりに彼の息子の山上孝司が加わり川岸で同じような「構図」で4人で横たわることになる。最初の時の幸せそうなその構図は、ラストにおいては地獄絵図と化すのであるが、地獄の「ハルモニウム」を弾くように利雄が懸命になって3人の世話をする様子は、贖罪と言われればそれまでだが、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞しただけの見応えはあるものの、昨今の作品の中で後味の悪さは群を抜いている。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『お父さんと伊藤さん』

2016-10-14 00:39:07 | goo映画レビュー

原題:『お父さんと伊藤さん』
監督:タナダユキ
脚本:黒沢久子
撮影:大塚亮
出演:上野樹里/リリー・フランキー/藤竜也/長谷川朝晴/安藤聖/渡辺えり
2016年/日本

過去から解放されるきっかけについて

 現在書店でアルバイトをしている34歳の山中彩は以前コンビニで一緒にアルバイトをしていた20歳上の伊藤康昭と小さなアパートで同棲するようになる。伊藤は今も小学校の「給食のおじさん」としてアルバイトをしており定職にはついていない。
 そこへ2年前に妻を亡くし、その後長男の潔の家で暮らしていた父親が彩が住むアパートに転がり込んでくる。潔の子供たちの受験の邪魔にならないようにという名目だったが、実は潔の妻の理々子は父親の姿を見ただけで嘔吐してしまうほど父親を受け付けない精神状態に陥っていたのである。
 潔の家を追われた理由は明確にはならず、どうやら小学校の教員歴40年というプライドがスムーズな人間関係を妨害しているようではあるのだが、だからこそ74歳のお父さんと年齢が近い54歳の伊藤さんは気が合うのかもしれない。
 そんなお父さんが変わった瞬間は、彩と潔と伊藤さんと一緒に実家にいる際に、突然の轟音と共に実家の庭にあった燃え上がる柿の木が家に倒れ込み、父親がため込んでいたスプーンもろとも灰に帰した時である。その時、父親は実家のみならず幼い頃に食べ放題だった柿の木も失くし、教え子の代わりのようにして抱え込んでいた(給食の?)スプーンも失うことで囚われていた過去から解放されることになった。
 ラストシーンが興味深い。父親が彩のアパートを発つ日、見送っていた
彩の左の頬を伝う滴は涙ではなくぽつぽつと降って来た雨で、それは自分で手続きをして高齢者住宅に一人で向かう父親に対する娘の微妙な心情を表しているのである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『怒り』

2016-10-13 00:01:03 | goo映画レビュー

原題:『怒り』
監督:李相日
脚本:李相日
撮影:笠松則通
出演:渡辺謙/宮崎あおい/松山ケンイチ/妻夫木聡/綾野剛/原日出子/広瀬すず/森山未來
2016年/日本

「同情」の様々な食い違いについて

 「怒り」というタイトルの本作が浮かび上がらせるテーマは怒りそのものではなく、怒りを生み出す「同情」のように見える。例えば、千葉の漁師の槙洋平と娘の槙愛子は身元があやふやな田代哲也と知り合い、やがて愛子と哲也は一緒に暮らしようになるのだが、愛子は哲也を信じきれなかったし、東京の大手広告代理店に勤める藤田優馬が常連客として通っているゲイバーで偶然知り合った大西直人を自宅に住まわせるものの、末期ガンで入院している母親の藤田貴子の面倒まで見てもらいながら友人たちから聞いた空き巣の犯人を直人と誤解し信じきれず、二度と会えなくなってしまう。沖縄に引っ越してきた小宮山泉がアメリカ人に暴行を受け、一緒にいた知念辰哉は同情によるその責任の重さを引き受けられないでいる。一方で、沖縄などあちらこちらを放浪している田中信吾はたまたま座っていた八王子の家の玄関前でそこに住む妻の「同情」で凄惨な事件を引き起こす。この同情の些細な食い違いが最終的には激情までをも生む恐ろしさがスリリングに描かれているように思う。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』

2016-10-12 00:09:45 | goo映画レビュー

原題:『The BFG』
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:メリッサ・マシスン
撮影:ヤヌス・カミンスキー
出演:マーク・ライランス/ルビー・バーンヒル/ペネロープ・ウィルトン/ジェマイン・クレメント
2016年/アメリカ

主人公以外の子供たちの行方が気になる作品について

 ビッグ・フレンドリー・ジャイアント (BFG)のキャラクター自体は悪くはないし、孤児院に住むソフィーという少女を主人公にした『ジャックと豆の木(Jack and the Beanstalk)』の後日談という物語設定も良いのだが、ストーリーの展開が単調で、子供向けの3D作品として観るならば十分に面白さを堪能できるだろうが、大人には厳しい感じがする。
 ラストのシチュエーションが実はイギリスのエリザベス女王の住むバッキンガム宮殿ではないが、ソフィーが子供のいないメアリーと夫の裕福な家庭に引き取られたというものであるならば、ソフィ―はとてもラッキーだったと思う。BFGの住む部屋にはジャックを始めとした子供たちの絵が残されており、不幸にも彼らが巨人たちに食べられたのだとするならば、それは悪い大人たちに引き取られたことの暗示だからである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする