原題:『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』
監督:チアン・ショウチョン
脚本:柿木奈子
撮影:真間段九朗
出演:永作博美/佐々木希/桜田ひより/保田盛凱清/臼田あさ美/浅田美代子
2015年/日本
外国人監督と日本人スタッフのコミュニケーション不足について
8年間行方不明ということで、失踪宣告を受けた父親の負債を肩代わりして石川県能登半島の奥能登にある父親の船小屋を改築して焙煎珈琲店を始めた主人公の吉田岬が店の名前を「ヨダカ珈琲」としたのは自分が宮沢賢治の童話『よだかの星』のよだかだからだと説明し、それを聞いて山崎有沙は違うと否定する。確かに岬が「よだか」であるという具体的な描写はなく、これは根拠に欠ける。
やがて8年前に父親が乗船していた船が発見され、岬の父親の死が確実視される中、それを認めたくない岬は波の音を聞いていられないという理由で、店を畳んで去ってしまうのであるが、何故かしばらくして戻ってきてしまい「ハッピーエンド」となる。
このように主人公の心理が全く伝わってこないのであるが、例えば、有沙が学校に給食費を払わなければならず、一度は母親の山崎絵里子に夕食時に給食費のことを伝えたように見えたが、携帯電話に夢中だったためなのか何故か絵里子は聞いておらず、給食費など払わなくてもいいと考えている「モンスターペアレント」の類なのかと思いきやそうでもなかったことにも驚かされる。台湾人監督と日本人スタッフと上手くコミュニケーションが取れていたのか疑問が残る。
『幕が上がる』(本広克行監督 2015年)でも『銀河鉄道の夜』が取り上げられていたが、宮沢賢治は相変わらず根強い人気である。