原題:『犬猿』
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔
撮影:志田貴之
出演:窪田正孝/新井浩文/江上敬子/筧美和子/健太郎/竹内愛紗
2018年/日本
「利益」に左右される「兄弟想い」について
幼い頃には仲が良かったにも関わらずそれぞれ性格が対照的であるが故に大人になった兄弟と姉妹がいがみ合うようになりながら、結局はお互いを認め合ったかと思ったら、最後に次の「ラウンド」が始まるという秀逸なブラックコメディ映画だと思う。
印象的なシーンを挙げるならば、それぞれの年上の方が怪我をした際の年下の行動である。兄の金山卓司がかつて暴行した相手に襲われて重傷を負って家で倒れていたところに遭遇した弟の和成はすぐに救急車を呼ぼうとスマートフォンを手にするものの、それまでの兄の素行の悪さに辟易していた和成は思いとどまってしばらく外をさまよっていたのだが、また思い直して救急車を呼ぶ。一方、人生に絶望して自ら手首を切った姉の幾野由利亜が倒れていたところに遭遇した妹の真子はすぐに救急車を呼ぶのである。
一見するならば真子の方が和成よりも兄弟想いのようなのだが、「生産性」のない卓司と小さい印刷会社ながらも社長である由利亜と比べるならば、それぞれの対応は理に適っているのではある。
それにしても冒頭のシーンは秀逸なのだが、これは映画館で観るから成立するギャグでありDVDで観たのでは分からない類のものである。