MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『オール・イズ・ロスト 最後の手紙』

2014-03-28 22:22:12 | goo映画レビュー

原題:『All Is Lost』
監督:J・C・チャンダー
脚本:J・C・チャンダー
撮影:フランク・G・デマルコ/ピーター・ズッカリーニ
出演:ロバート・レッドフォード
2013年/アメリカ

過去の無い男の「力量」を見守る意義について

 主人公の「私たちの男(Our Man)」の、作品の冒頭の手紙の朗読はあるものの、彼のバックグラウンドに関しては何の情報も得られないため、私たち観客はインド洋を単独で航海していた彼のヨットに、漂流していたコンテナが激突して破損し、さらに暴風雨に遭遇する彼の「サバイバル戦術」だけを見守ることになるのであるが、何となく彼に緊張感が感じられない理由は、無線などが水浸しになり故障してしまったことは仕方がないとしても、例えば、ボロボロになったヨットを諦めて救命ボートに乗り移る際に、缶詰などの食料を運び出して一旦はヨットから離れようとするものの、何かを思い出して再びヨットに乗り移り、浸水したヨットの底から「壊れ物(Fragile)」と書かれた箱を取り出して運び出すところにある。何とそれは自分の位置を測る計測器や海洋地図などで、これを持っていくことを忘れるということは考えにくいのである。ラストで失火により救命ボートを全焼させ、「全てを失った」時に救助されるという多少ファンタジックな展開は皮肉として面白くなくはないというところか。
 そのような主人公を演じたロバート・レッドフォードがアカデミー主演男優賞の候補にもならなかったことに関して議論があるようだが、上記の理由により、レッドフォードの熱演が主人公に反映されずに、老いてまだなおレッドフォードの俳優としての力量の誇示のように見えてしまったことが遠因としてあるのではないだろうか。
 因みに本作の字幕翻訳は古瀬由紀子によってなされており、2014年3月7日付きの日本経済新聞夕刊「シネマ万華鏡」における映画評論家の宇田川幸洋の「(この映画には字幕翻訳者の名前がない)」という指摘は間違っている。エンドロールまで作品を観賞出来ないほど忙しいのか。


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