原題:『Jack Ryan: Shadow Recruit』
監督:ケネス・ブラナー
脚本:アダム・コーザッド/デヴィッド・コープ
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
出演:クリス・パイン/ケビン・コスナー/キーラ・ナイトレイ/デヴィッド・ペイマー
2014年/アメリカ
アクション映画に馴染まない文学センスについて
ストーリー展開そのものは悪くはないのであるが、例えば、主人公のジャック・ライアンの敵役で、世界経済を破綻させようと目論んでいるほどの投資会社代表のヴィクトル・チェレヴィンが簡単に財布を盗まれてしまう稚拙さを晒してしまうシーンは、それがキャサリン・ミューラーによる「ハニー・トラップ」であるとしても理解しにくいし、クライマックスにおいてチェレヴィンが密かにニューヨークに送り込んでいたアレクサンドルが時限爆弾を仕掛けた車をウォール街の中央に位置するビルの地下に留めようとしていたところをライアンが見つけ、車を移動させようとするのであるが、次のシーンにおいてライアンがイースト・リバーを目指して運転している車のバックシートにまだアレクサンドルが乗ったままであるところが、それまでの展開を省略したために笑いを誘う。
チェレヴィンの簡素な部屋に掲げられていた絵画は1815年のイギリス・オランダ連合軍およびプロイセン軍が、フランス皇帝ナポレオン1世率いるフランス軍を破った「ワーテルローの戦い(The Battle of Waterloo)」を描いたものである。ロシアが関わった戦争ではないが、かつてナポレオン1世が1812年にロシアに侵攻してきてモスクワを制圧したことにロシア人のチェレヴィンが遺恨を持っており、アメリカを仮想敵国としてその怨念を忘れないという意味で飾っていたのであろうが、まさか自分が馬の下敷きになっている方になるとは想像していなかったであろう。ケネス・ブラナーらしい演出ではあるが、功を奏しているかどうかは微妙である。