原題:『Bleed for This』
監督:ベン・ヤンガー
脚本:ベン・ヤンガー
撮影:ラーキン・サイプル
出演:マイルズ・テラー/アーロン・エッカート/キアラン・ハインズ/ケイティ・セイガル
2016年/アメリカ
伝染する「狂気」について
主人公のビニー・パジェンサは交通事故で首を骨折し、ボクサーとして再起不能と言われながら不屈の精神で研磨を積んで再びチャンピオンに返り咲いた実在するプロボクサーである。もちろんビニーの復帰までの物語は胸をうつのであるが、ボクシング映画としての見どころは、ボクサーを描いているにも関わらず、肝心の主人公が少しでも首を動かすことを禁じられるという「禁じ手」が使われているところにある。
奇妙な行動を起こすのはビニーだけではない。父親のアンジェロ・パジェンサは当初セコンドに付いていたのであるが、ビニーの執念に恐れをなして復帰試合は客席で観ることになり、反対に母親のルイーズ・パジェンサは息子の試合がテレビで放送されても観ることはなく自分の部屋に引きこもってしまうのであるが、復帰試合は部屋から出てきてテレビを観るのである。しかし一番不思議な行動を見せたのはロジャー・メイウェザー戦においてビニーと共に試合前の計量の会場へ入る間際(ポスターの写真)に、転倒してしまうビニーのガールフレンドのアシュリーである。