原題:『嘘を愛する女』
監督:中江和仁
脚本:中江和仁/近藤希実
撮影:池内義浩
出演:長澤まさみ/高橋一生/DAIGO/川栄李奈/野波麻帆/奥貫薫/黒木瞳/吉田鋼太郎
2018年/日本
出来の悪い小説をモチーフにする映画のクオリティーについて
主人公の川原由加利が小出桔平と名乗る男と出会ったのは2011年3月11日だった。東日本大震災による交通マヒに巻き込まれた由加利が体調を崩して駅の構内でしゃがみ込んでしまったところを研究医の小出が介抱したことを縁に、再び由加利が小出を偶然見つけたことで交際することになるのだが、小出は自分には家族がなく収入もないために由加利の部屋に転がり込んで「主夫」のような関係で2017年2月23日を迎える。その前夜、小出を母親に会わせようと由加利が夕食を一緒にする約束をしたのであるが、小出は現れなかった。翌日になって小出が帰ってきたと思ってドアを開けるとそこにいたのは小出ではなく刑事だった。小出はクモ膜下出血を発症して入院していたのであるが、「小出」という人物が存在しないという話になっているのである。運転免許証は偽造されたものだったが、1979年4月23日という生年月日は正確だったようで37歳である。
そこで由加利は私立探偵の海原匠を雇い、小出のノートパソコンをロッカーから発見し、そこに書いていた原稿用紙700ページを超える書きかけの小説を手掛かりに「小出」が何者なのか探索する旅にでる。
由加利が瀬戸内を一人で回っていると小出らしい人物の存在を突き止めて梅原を呼び寄せるのだが、それは他人の空似だったトシという青年だった。しかしトシは以前にも間違えられたことがあり、広島県警が訪ねてきたことを教えてくれる。そこから小出は安田公平という外科医で妻とまだ幼いひとり娘がいたのだが、安田は仕事に忙しく妻の育児ノイローゼに気が付かず、気がついた時には妻が赤ん坊を湯舟で窒息死させ、その直後外へ飛び出してトラックに轢かれて死なせてしまった過去を持つことを知り、それらは2010年9月20日の地元の新聞に掲載されていた。
正直、一体何を言いたい作品なのかよく分からない原因は、小出が書いた小説が亡くなった妻や娘のためになのかあるいは騙して付き合っていた由加利のためになのか、誰のために書かれたものなのかはっきりしないからであろうが、教訓ならば由加利もウーマン・オブ・ザ・イヤーにも選ばれて忙しく働いているように仕事のし過ぎは決して家族を幸せにしないということくらいであろう。
それにしても小出の思い出の品として「マジンガーZ」のフィギュアが出てきて、奇しくも『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』(志水淳児監督 2018年)が公開されているのだが、本作は東宝で『マジンガーZ』は東映だからこれは偶然ではあるだろう。