原題:『I, Daniel Blake』
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
撮影:ロビー・ライアン
出演:デイヴ・ジョーンズ/ヘイリー・スクワイアーズ/ディラン・マキアナン/ブリアナ・シャン
2016年/イギリス・フランス・ドイツ・ベルギー
社会の貢献者を敬わない社会制度について
59歳で心臓に疾患が見つかり医師から仕事をすることを止められた主人公で熟練大工のダニエル・ブレイクが母国の就労能力査定の方法に翻弄される姿は本当に痛々しいものがある。仕事ならともかくいまさら書類作成のためだけにパソコンの操作の勉強を始める意欲は湧かないであろうし、30時間以上の「就職活動」を義務付けられてもどのように証明すればいいのか分からない。
その点で言えば、ダニエルの隣に住んでいるチャイナという若者はパソコンを駆使して中国に住んでいる友人からスポーツシューズを輸入し、あるいはディランとデイジーという2人の子供を抱えているシングルマザーのケイティ・モーガンは最後の手段として売春を始めることで何とか糊口を凌げる。
つまり若者や女性は社会の変化に対して融通がきくのであるが、社会に最も貢献していたはずの高齢者の男性が社会から忌み嫌われる悲惨な現状が活写されるのである。