MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ONODA 一万夜を越えて』

2021-10-22 00:51:19 | goo映画レビュー

原題:『Onoda, 10 000 nuits dans la jungle』
監督:アルチュール・アラリ
脚本:アルチュール・アラリ/バンサン・ポワミロ
撮影:トム・アラリ
出演:遠藤雄弥/津田寛治/仲野太賀/松浦祐也/千葉哲也/カトウシンスケ/井之脇海/諏訪敦彦/イッセー尾形
2021年/フランス・日本・ドイツ・ベルギー・イタリア

究極の「マインド・コントロール」について

 主人公の小野田寛郎と上司の谷口義美の「佐渡おけさ」を巡る会話が興味深い。谷口は小野田に自分と同じように歌うように強いるのだが、この禅問答のような問いに小野田が答えられたのかどうか分からないまま、谷口に褒められる。これはまるでマインドコントロールのように小野田の行動をがんじがらめにしてしまったように見える。そんな小野田と行動を共にしていた赤津勇一が小野田の下を去っていく際に歌った「佐渡おけさ」に対して小野田が文句を言うのだが、赤津は「自分の好きに歌わせてください」と言って投降していくシーンが印象的であるのだが、小野田を探しにルバング島まで来た鈴木紀夫がテープレコーダーで流す曲が「北満だより」だったのは何故なのか疑問が残る。鈴木は赤津の話も聞いてルバング島まで来ており、小野田にとって「佐渡おけさ」の重要性は良く分かっていたはずだからである。
 それにしても海外の映画評論家に上映時間の長さに退屈すると言われているのは、小野田というキャラクターの捉えにくさも関係しているような気がする。例えば、川で小野田と洗濯している小塚金七が銃を失くした際に、軍規に反したと小野田は激怒し、川下を探すものの見つからず、河の中に渦を見つけて逆流している川上を探すとすぐに見つかり、小野田は小塚を抱きしめるシーンは小野田の二面性を映しているように見える。
 果たして小野田が生真面目なのか冷酷なのかあやふやなまま、小野田はヘリコプターに乗せられて帰還することになるのだが、ここで観客の涙を誘うのは小野田が遭遇した想像を絶する過酷な人生に対してだったのか、それとも小野田を演じた津田寛治の熱演によるものだったのかよく分からなくなっている。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/eiga_log/entertainment/eiga_log-96398


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