MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『チャイナ・ゲイト』

2016-12-17 00:25:33 | goo映画レビュー

原題:『China Gate』
監督:サミュエル・フラー
脚本:サミュエル・フラー
撮影:ジョゼフ・バイロック
出演:ジーン・バリー/アンジー・ディッキンソン/ナット・キング・コール/ポール・デュボブ
1957年/アメリカ

優しさを拒絶する人種差別主義者について

 1954年の第一次インドシナ戦争を舞台とした作品において冒頭で事実上敗北したフランスに対して「この作品を全てのフランス人に捧げる」とナレーションで言ってしまうあたりからサミュエル・フラー監督の面目躍如で、そのため本作はフランスで公開禁止になった。
 その後に、犬を隠し持っていた東洋系の男の子を見つけた老人が咎めようと逃げる男の子の後を追うのであるが、何故か男の子はフランス外人部隊の外国人たちの中に隠れている。間もなくその男の子は「ラッキー」と呼ばれる食堂を営んでいる、欧亜混血の女性のリアの5歳になる息子だと分かる。外見からリアが純粋の西洋人だと思い結婚していたものの、生まれてきた男の子が東洋人の顔立ちで2人とも捨ててしまったのはフランス外人部隊に所属するアメリカ人のブロック軍曹である。
 しかし中国国境にあるベトミン(ベトナム独立同盟会)の軍需品集積場に集められている大量の爆弾を爆破するよう命じられたブロックたちは、現地の地理に詳しいリアを同行させることになるのであるが、その途中でリアは古い友人のチャン少佐と再会する。
 ここが本作のミソなのであるが、チャン少佐はリアと5歳の息子をモスクワに連れて一緒に生活をしようと、いわばプロポーズをするのであるが、リアはチャン少佐を窓辺から突き落として、ブロックたちが仕掛けたダイナマイトの切られた配線をつなげて自爆するのである。つまり本作において一番の人種差別主義者は、「自爆テロ」を起こしてでも息子をアメリカ人にしようとしたリアなのであり、ここにサミュエル・フラー監督の「悪意」を感じるのである。


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