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MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『愛の記念に』

2016-02-20 00:33:01 | goo映画レビュー

原題:『A Nos Amours』
監督:モーリス・ピアラ
脚本:モーリス・ピアラ/アルレット・ラングマン
撮影:ジャック・ロワズルー
出演:サンドリーヌ・ボネール/ドミニク・ベネアール/シリル・コラール/エヴリーヌ・ケール
1983年/フランス

敢えて壊すことで生まれる「真実の愛」について

 主人公の15歳のシュザンヌが林間学校で披露しようとしている芝居はアルフレッド・ド・ミュッセ(Alfred de Musset)の『戯れに恋はすまじ(On ne badine pas avec l'amour)』(1834年)という「レーゼドラマ(Lesedrama)」、つまり上演が目的ではなく読まれることを前提として書かれた戯曲である。
 そこで語られる「恋人の気を引くために別の男性と付き合う」というセリフが本作のモチーフであろう。シュザンヌが気になっていた同級生のリュックはシュザンヌを抱こうとしなかったために、彼女は偶然知り合ったアメリカ人の青年と一夜を過ごし、次々とボーイフレンドを変えていくのであるが、シュザンヌは頭は良く、ボリス・ヴィアン(Boris Vian)の『心臓抜き(L'Arrache-cœur)』(1953年)を愛読している。そのうちに毛皮加工職人である父親のロジェが家出をし、家族の「大黒柱」を失った母親のベティと兄のロベールとシュザンヌの関係が一気に悪化する。
 ようやくシュザンヌがジャン・ピエールと婚約し、ロベールが友人で評論家のジャックの妹のマリー・フランスと結婚して家族が落ち着きを見せようとした時に、突然ロジェが自宅を売り払おうと現れ再びかつてのようないがみ合いが始まるのであるが、ラストは何故かロベールの友人のミシェルと共にサンディエゴへ旅行しようとするシュザンヌを空港までロジェが見送っているのである。
 ここで思い出すことはロジェにマルセル・パニョル(Marcel Pagnol)になれなかったと皮肉を言われたジャックが批判したパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)でも、シュザンヌが好きだと告白するピエール・ボナール(Pierre Bonnard)でもなく、ロベールが好きだと言った「瞬時(Moment)」である。敢えて壊すことで生まれる愛の「真実」に私たちは耐えられるのだろうか?


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