原題:『セーラー服と機関銃』
監督:相米慎二
脚本:田中陽造
撮影:仙元誠三
出演:薬師丸ひろ子/渡瀬恒彦/風祭ゆき/柄本明/寺田農/三國連太郎
1981年/日本
センスが良い振りをする長回しのシークエンスショットについて
おそらく本作が大ヒットした理由は、例えば、主人公の星泉を演じた薬師丸ひろ子が機関銃をぶっ放した後につぶやく「快感」というショットが示すように、「やくざ映画」と「ロマンポルノ」を組み合わせたような「アイドル映画」という設定が受けたからだと思うが、改めて観なおしてみると、とても「アイドル映画」とは思えないような演出方法である。
黒木刑事がヘロインが入っているローションの瓶を泉のマンションで探している最中に、浜口組の組員に襲われて瀕死の重傷を負わされたことを電話で泉に伝えながら亡くなり、そのまま泉たちが死んだ黒木のそばにいるという長回しのシークエンスショットにはセンスを感じるが、例えば、黒木に刺された明を治療するために救急箱を持つ泉の出現から、突然現れた萩原に明が銃殺されるまでの泉の室内はロングショットで撮られており、カットインも一切ないために主人公に全く感情移入できない。主人公のアイドルに感情移入できない「アイドル映画」は失敗作と見なされても仕方がないであろう。
その後、佐久間真と政を連れて泉が浜口組に殴り込みに行き、有名な薬師丸の「快感」のショットがあるのだが、泉が機関銃をぶっ放した後に、泉を狙った拳銃を見つけた政が自身が拳銃を持っているにも関わらず、銃を使わずに何故か身体を張って泉を庇い撃たれてしまう。いくら政がゲイだからといって殴り込みをかけておきながら銃を使わないということは考えにくく、長回しのシークエンスショットの多用は的確なショットが思いつかなかったための「方便」のように見えてしまうのである。
よってラストシーンは機関銃を撃つ真似をしている、赤いハイヒールをはいたセーラー服の薬師丸ひろ子の、地下鉄の通気口から吹き上がる風でスカートがめくれそうで下着までは見えない、まさに「やくざ映画」にも「ロマンポルノ」にもなり切れなかった「アイドル映画」の空虚さの象徴として機能するのである。