【ぼちぼちクライミング&読書】

-クライミング&読書覚書rapunzel別館-

「プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで」深井智朗

2018年03月05日 20時32分49秒 | 読書(宗教)


「プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで」深井智朗
Lucas Cranach (I) workshop - Martin Luther (Uffizi).jpg 
マルティン・ルター      

世界史の授業で習った「宗教改革」が、やっと分かった(ような気がする)。
硬いテーマだけど、とても勉強になった。
しかも、おもしろかった。(素人にも分かるように例え話を出して説明してくれる)
学生時代から引っ張ってきた様々な疑問が氷解した。
読んで損はない、というか、お薦めしたい作品だ。(書評サイトでも好評だ)

PⅧ
プロテスタントは、ルターの改革以後に発生したさまざまな教会とその信者たちを指す。そしてプロテスタンティズムとは、いわゆる宗教改革と呼ばれた一連の出来事、あるいは1517年のルターの行動によってはじまったとされる潮流が生み出した、その後のあらゆる歴史的影響力の総称だ。

P9
さらに教会はこう説明したのである。天国に行くためには教会の教えに従う必要がある。天国への道を知っているのは教会だけで、その道を通過せずには天国に行けないのだと。これがキリスト教的ヨーロッパの完成であった。教会は天国とそこにいたる通路を支配した。教会は「あの世」というきわめて宗教的な問題を取り扱っているのだが、実際には「この世」を支配した。

P66
東方で急速な拡大を続けるオスマン帝国が1526年にハンガリー王国に勝利し、国教に迫る勢いを見せていた。そのためカール五世は国内勢力の結集のために、ルターを擁護する諸侯に対して強く出られなかったのであろう。

カルヴィニズムについて
P96
フランスではユグノーと呼ばれるようになり、またスコットランドでは国教となっている。スコットランドでカルヴァンの影響を受けた人々は長老派と呼ばれるようになった。
ルターとカルヴァン(右)

P98
すべての信徒が聖書を読み、解釈する自由を認めたプロテスタントは解釈をめぐって争い、分裂し、互いに対立するようになった。「プロテスタントの宗派や教団についての本を書けばそれは必ず電話帳よりも厚くなる」という冗談があるほどだ。

P116
おそらく一番力を入れたのは、日曜日の礼拝の充実であった。(中略)
(礼拝は英語で「サービス」という)。

P185
カウンタビリティとは神学用語である。神の前での最後の審判において、人間が天国行きの最終決定を受けるための、自分の人生についてのアカウンタビリティである。神の前で人生を説明してみせるのである。

P186
アメリカの公共宗教研究所の2014年の調査によれば、所属する宗教ではキリスト教が78.2%であった。(中略)神を全く信じない人々は8%で、どの宗教団体にも属さない人が14%いる。ユダヤ教とイスラムはそれぞれ2%程度である。(この数字にもかかわらず、米国がイスラエルを擁護するってどういうこと?!政財界、マスコミの影響力が超弩級?)

日本のキリスト教徒人口は193万人、国民の1.5%、プロテスタント人口はその半分(2016年12/3、文化庁の調査)
P199
隣国の韓国がほぼ同時期にアメリカの宣教師によってプロテスタンティズムを伝えられ、今日では人口の30%以上がキリスト教徒であるのとは対照的である。
韓国でのキリスト教徒の割合は約30%。この理由は次のように説明されている・・・以下、「教養としての宗教事件史」島田裕巳より――朝鮮王朝(李氏朝鮮)の時代になると、儒教が国教に定められ、仏教は弾圧を受けて衰退した。
儒教は基本的に男性のための宗教、上層部のための宗教であり、女性や下層階級はその枠のなかから排除されてしまう。朝鮮半島でも仏教の信仰が衰えなかったとしたら、それは女性や下層階級を含む民衆を救済する役割を果たし、宗教的な空白を作ることはなかったであろう。ところが、空白が存在したために、代わってキリスト教がそれを埋めることになったのである。P252)


【誤植】
P36
早くから理解され。

早くから理解された。

【おまけ】
宗教関係としては、昨年読んだ「キリスト教と戦争」 石川明人に匹敵する良書と思う。


【ネット上の紹介】
1517年に神聖ローマ帝国での修道士マルティン・ルターによる討論の呼びかけは、キリスト教の権威を大きく揺るがした。その後、聖書の解釈を最重要視する思想潮流はプロテスタンティズムと呼ばれ、ナショナリズム、保守主義、リベラリズムなど多面的な顔を持つにいたった。世界に広まる中で、政治や文化にも強い影響を及ぼしているプロテスタンティズムについて歴史的背景とともに解説し、その内実を明らかにする。
第1章 中世キリスト教世界と改革前夜
第2章 ハンマーの音は聞こえたのか
第3章 神聖ローマ帝国のリフォーム
第4章 宗教改革の終わり?
第5章 改革の改革へ
第6章 保守主義としてのプロテスタンティズム
第7章 リベラリズムとしてのプロテスタンティズム
終章 未完のプロジェクトとして

この記事についてブログを書く
« 阿武山 | トップ | 「ザ・ファブル」(13)南勝久 »

読書(宗教)」カテゴリの最新記事