「農ガール、農ライフ」垣谷美雨
派遣切りにあい、失業した久美子。
追い打ちをかけるように、同棲相手からも別れを告げられる。
心機一転、農業を始めようと、田舎に引っ越し、農業大学校に入学。
いったい、どうなるのか?
P77
講師の説明によると、新規就農者であっても、ひとりで五反は作れるということだった。一反は300坪もある。それなのに、いま目の前に割り当てられた20坪さえ広く感じてしまう。
P118
「男女平等が謳われるようになってから真っ先に変わったのは、実は男性なのよ。女性を守るという最低限の気遣いを一切しなくなったわ」
田舎の婚活パーティに参加する。
P156
「男女の出会いの場では、視覚から得る情報が最も大切なんです。女性に求められるのは、清潔感、笑顔、女らしい雰囲気、その三つです。ブランド物のバッグや華美な服装はNGです。男性が引いてしまいますからね」
P251
――結婚式で新婦が言うじゃん。「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも」とかなんとかゴチャゴチャと。静代ちゃんが言うにはね、あの中で重要なのは、病めるときと貧しいときなんだってよ。つまりね、人生最悪の事態に陥ったときの保険がないと誰だって安心して生きられないよっていう意味なんだってさ。
垣谷美雨作品らしく、感情移入しやすい登場人物たち、テンポの良い展開。
農村の実情も分かって、そうなのか、って感じで楽しめる。
エンターテインメントなので、きちんと落とし処に落としてくれる。
【おまけ】
タイトルから連想するのは、ことわざ「no pain no gain」。
――労なくして得るものなし。
ガールなくして、ライフなし、
農ガールなしで、農業の未来はない…と。
もうひとつ思い出した。
「No Woman, No Cry」
そうなると、意味が違ってくる。
【参考作品】
【ネット上の紹介】
「結婚を考えている彼女ができたから、部屋から出て行ってくれ」派遣ギリに遭った日、32歳の水沢久美子は同棲相手から突然別れを切り出された。5年前、プロポーズを断ったのは自分だったのに。仕事と彼氏と家を失った久美子は、偶然目にした「農業女子特集」というTV番組に釘付けになった。自力で耕した畑から採れた作物で生きる同世代の輝く笑顔。―農業だ!さっそく田舎に引っ越し農業大学校に入学、野菜作りのノウハウを習得した久美子は、希望に満ちた農村ライフが待っていると信じていたのだが…。