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「櫓のない舟~伊庭八郎幕末異聞」秋山香乃

2013年04月23日 22時18分38秒 | 読書(小説/日本)

「櫓のない舟~伊庭八郎幕末異聞」秋山香乃

シリーズ3作目。
幕末という大きなうねりの中で、伊庭八郎の成長を描いている。
今回は、鱗三郎の正体が明らかになる。
そして、サダには新たな試練が待ち受けていた。

P85
姐さんのように生きられたら、とサダは思う。
吉原に売られてきた娘が女郎に上がると新造と呼ばれるが、これは“新しい舟”という意味の言葉である。
だから吉原の妓(おんな)はみな舟なのだ。
ただの舟ではない。櫓のない舟である。
流れがあれば流れに身を任せるしかなく、淀んだ溝(どぶ)に浮かべば、そこにぷかぷかと漂うしかない。
だのに、決して流されず、漂わず、生きていける妓も、ほんのわずかながらいる。

P261
「(中略)伊庭家の当主の軍平は、おいらがどれだけ放蕩しても、文句ひとつ言わねェ親父だ。けど、そんな親父が一つだけ守れと言っていることがある」
「軍平どのが?」
八郎が頷く。
「聞いて驚け。『ここぞ、というときは愚直になれ』てェのが、我が家の家訓だ」
「なんなんだ、その妙な家訓は」
「普段は幾らでも利口で構わないが、ここぞというときは愚かもんになれってェ、そこだけは曲げるなと言い聞かされているんでね。老中相手と知って、あいにく利口に手は引けねェ」

今回も剣戟シーンの筆は冴えていた。
近藤勇、土方歳三、沖田総司も登場・・・役者が揃った!

【ネット上の紹介】
稲本楼のサダから六所宮のお守りが欲しいと頼まれ、府中まで出かけた伊庭八郎だが、鱗三郎が行方不明になってしまう。知り合った天然理心流・試衛館道場の土方歳三などと鱗三郎の行方を捜す八郎だが、どうやら攘夷を狙う浪人たちが絡んでいるらしい。気鋭の女性作家の書き下ろしシリーズ第三弾。