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「風立ちぬ」

2013年07月30日 | 音楽・映画レビュー

この映画、観た人の評価が極端に分かれているようだ。それは、戦争、震災、恋愛、ゼロ戦、実在の人物、同名などの小説、時代・・・など色々な要素が盛り込まれているため、それぞれが興味のあるところから取り付くためだろう。これまでのジブリ作品との違いも大きい。

ただ、この作品は、ゼロ戦の開発物語でも、戦争の悲惨さを描いたものでも、恋愛を描いたものでもないはずだ。二郎の夢の中で「夢」が語られているが、「夢」に相当するのが、飛行機であり、ピラミッドであり、菜穂子の美しさであり、それぞれその裏には、お腹を空かせた子供たち・戦争、使役される人々、病いを隠す化粧など、現実には残酷で悲しいもの、犠牲が存在する。そのようなものがあったとしても「夢」に「生きねば」ということではないか。最後に奈穂子が「あなたは生きて」と言っているのは、主人公へのゆるしではないか。そして、宮崎監督にとっての夢が、まさに映画作りであって主人公にダブっているのだろう。だから監督は試写を観て泣けたのだと。