「ぶらり車イス紀行」 その503 ☆ 『朝日の9.11』 朝日新聞は、2014年9月11日夕刻、2011年3月1 1日に起こった東日本大震災に伴う東京電力福島第1原子力発 電所(以下=第1原発)事故をめぐり、第1原発の当時の吉田 昌郎(故人)所長への聞き取り調査(通称=『吉田調書』)結 果を、日本政府が公開したのを受け、記者会見を開いた。 日本政府としては、当初は故人の意思を尊重して『吉田調査 』を非公開扱いにする心積りであったが、このままでは正確な 情報が、ねじ曲げられたままになると、公開に踏み切った。 事の発端は、朝日新聞が、2014年5月20日付の朝刊で 『吉田調査』を入手したと報道した。そこには、『第1原発に いた所員の9割にあたる約650人が、吉田所長の待機命令に 違反し、福島第2原発に撤退した』と報道した。しかし、実際 は吉田所長が『所員に福島第1の近辺に退避して次の指示を待 てと言ったつもりが、福島第2に行ってしまった』と語った。 そもそも朝日新聞は、原発批判、東電批判、除染批判、そし て、秘密保護法案批判など、猛烈な安倍政権批判を繰り返して きた。だから、日頃の批判の中で培われた記者が、限られた者 しか入手できない『吉田調査』を、何か批判の材料に使えない かとの思い込みから、必要以上に話をねじ曲げてしまった。 しかし、朝日新聞は『吉田調査』の一般公開で、観念したの か、それとも、勝ち目がないと見たのか、報道内容に誤った部 分があったと認めた。 朝日新聞は、11日、『吉田調査』の記事に関し、『命令違反 で撤退』という見出しは間違った表現だとして記事を削除した。 その上で『東電の社員をおとしめるなどの意図はなかった』 『事実をねじ曲げるようなことはなかった』と強調したが、こ の釈明を額面通り受け止めた人は、少なかったと思う。 奇しくもこの日は、世界を震撼させたアメリカ同時多発テロ 事件が起こった2001年9月11日と同じ9月11日であっ たことを思うと『朝日の9.11』が完全に収束するにも、長 い道のりになることが予想される。 たかし でした。