翌日の本命レースに備え高鳴る気持ちを抑え21時過ぎに就寝
・・・1時過ぎ頃、腹痛で目が覚めトイレに駆け込みました。
腹がギュルギュルと音を立て刺すような痛みもあり。下痢でした。
一旦治まり睡眠不足が怖かったため直ぐにベッドに戻り目を閉じたのでしたが30分もしないうちに再び腹痛で起こされトイレへ。
水分ばかりの便、結局4時頃まで繰り返し痛みに襲われ額に脂汗を流しながら耐え続けたのでした。
原因は炭水化物大量摂取と意気込んで食べ過ぎてしまったことか、旅気分を味わいたく飲んでしまったノンアルコールビールか。食あたりの可能性も。
気が付くと、目覚ましが鳴っていました。
起床予定の5時になっていたのです。
胃はからっぽで激しい空腹感に襲われましたが、下痢の恐怖から朝食用に前日買っていたオニギリは食べるのを止めました。
ゼリー飲料を1本とストッパ(下痢止めタブレット剤)を胃に流し込み、大きな不安に駆られながらランウェアに着替え6時過ぎホテルを出発。
歩いて15分のスタート会場天神へ向かいました。
天気は予報通り雨
途中コンビニに立ち寄り本番前最後のトイレ、もう何も出ませんでした。
会場に到着、羽織っていた上着を脱ぎ防寒用のポンチョを被りスタートを待ちました。
第1回大会とあって運営は慣れていない感じ。
各所でランナーの質問に戸惑っているボランティアの姿が見受けられましたが全国から集まったランナーをもてなそうと一生懸命頑張っている様子、感謝です。
会場は申告タイムの速いグループと遅いグループで分けられていました。
私のいた速い方の会場は女性ランナー比率が圧倒的に低かったのですが、トイレや更衣室は女子用もしっかり確保されていたため一緒に参加した女性ランナーによると「更衣室ガラガラで、トイレも全然並ばずに入れた」とのこと。通常マラソン大会の女子トイレは長蛇の列と決まっているので、珍しい現象。
スタート待ちの間最も心配していたのは下痢で体力やエネルギーが失われてしまったことより、スタート後に下痢をもよおすこと。
そのため、持参していたブドウ糖タブレットやエネルギー補給ゼリーなどは一切口にしませんでした。
ブロック別集合エリアへ移動し、8時過ぎに渡辺通りスタートラインへ移動。
九州地区では地上波放送もあった本大会。
天神駅前沿道には多くの観客、周辺ビルの窓から応援している方も多数、空にはヘリコプターが回遊。
雰囲気は最高。
スタート10分前、開会セレモニー開始。
福岡市長の挨拶やゲストランナーの紹介が続き、いよいよスタート時刻が迫りました。
ここまでいろいろなことがありました。
4年続けて出場していた湘南国際マラソンを見送り、高競争倍率の福岡マラソン出場に賭け当選。
本番一ヶ月前にアクシデント発生、左臀部が腫れあがり痛み発症。
騙し騙しラン再開し、残り一週間を切ってから20km練習なども。
やり残したことによっての後悔はしたくないとの思いから必死でした。
何とか完走への自信を得て福岡に来たものの、最後の最後に下痢と睡眠不足、、、
いずれも、コンディション管理が杜撰な自分が原因なのですが。
「何としてもゴールまで辿り着く」
その思いを胸に気持ちを落ち着かせました。
定刻
8時20分となり、、、
スタート!
ロスは
20秒、かすみがうら以来半年ぶりのフルマラソン。
42.195km先の糸島目指して出発。
天神を北へ進み左折、福岡ベイエリアを右手に西へ。
ベストは尽くしたい。
最後まで走り切ることをイメージしながら抑え気味ペースを意識。
周囲の快速ランナーに次々と抜かされましたが焦らない。
雨は上がり曇り空で気温は15℃くらいか、悪くない。
5km地点 24分27秒(スタート~5km 24分07秒 AVG 4'49''/km)
福岡市博物館前を過ぎ小戸公園へ。
この辺りの雰囲気は首都圏のベイエリアと似ていると感じました。
埋立地で綺麗に整備された新興住宅街、大型ショッピングモールなどもあり沿道には多くの方が立ち声援を送ってくれました。
好調とは言えないもののまだ走れる。
前方にゲストランナーの小鴨由水さんの姿、長身で目立っていました。
並走するランナーから声を掛けらるたびに丁寧な対応、大変な役回りです。
10km地点 49分04秒(5km~10km 24分37秒 AVG 4'55''/km)
ここまで何とかキロ
4分台を刻んでいました。
しかし、
10km過ぎ生の松原へ向かう右カーブの手前で身体に異変発生。
急に強い疲労を感じるようになり息が上がりキツくなってきました。
焦って大きく深呼吸したり腕を垂らして回復を試みましたが治まる気配はなく心拍数は上昇の一途。
ここまで
10kmしか走っておらず、残りは
30km以上。
キツい、、、止まってしまいました。
目眩(めまい)がして身体に力が入らない。激しい空腹感にも襲われました。
ハンガーノックってこれか?
沿道の方が
「チーズ饅頭どうぞ」と差し出してくれたので礼を言っていただきました。
腹の調子が心配だったものの、このままでは到底ゴールに辿り着けないと思い口に入れました。
甘さが口いっぱいに広がり美味かった。
小走りでラン再開。
15km地点 1時間16分43秒(10km~15km 27分39秒 AVG 5'32''/km)
九州大学伊都キャンパス目指し、遅いペースながら何とか前進していたもののキャンパスに入る上り坂
18km付近で止まってしまいました。
立ち眩みに襲われ一瞬目の前が真っ暗になり、併せて左右のこめかみがズキズキと痛むようになってきました。
走れない。
九大生の力強い応援に励まされても歩くのが精一杯。
頭がガンガン痛い。
20km地点 1時間50分分08秒(15km~20km 33分25秒 AVG 6'41''/km)
中間地点 1時間56分15秒(20km~21.0975km 6分07秒 AVG 5'34''/km)
今津運動公園を目指す平坦な田舎道。
何度もラン再開を試みましたが、頭痛や吐き気に悩まされ、その都度大きく深呼吸。
この頃から左臀部故障再発、痛みを生じるようになり焦る。
まだまだ先は長い。
ここで救われたのは給食、
第7給水所(21.9km地点)で食べたみかんは瑞々しく美味く折れかけていた心を奮い立たせてくれました。
25km地点 2時間24分04秒(21.0975km~25km 27分49秒 AVG 7'08''/km)
この辺りで真剣に
DNF(途中リタイア)を考えました。
左足の痛みは一歩進むごとに痛みを増していくように感じ歩くのも辛いほどになっていたのでゴールまでもたないのでは、と弱気に。
歩きと小走りを繰り返しているうちに身体が冷え寒くなってきました。腕に鳥肌立つほど。
第8給水所(25.1km)で、噂に聞いていたマラソン用うどん(釜揚げ牧のうどん)を補給。
うどんは美味く、汁の塩分が疲労した身体に心地良かった。
海上に浮かぶ船からの応援が励みになったのはこの辺り、ランナーの多くが海上へ手を振って応えていました。
「まだまだ長い・・・」
30km地点 3時間06分10秒(25km~30km 42分06秒 AVG 8'25''/km)
海を離れ山側へ。
残り
10kmを切りようやく完走への希望を抱きました。
スタート時点では下痢によってエネルギーを吐き出し切っていましたが、給食を摂り続けた結果大分回復しているように感じてきました。
前述のみかんやうどんの他にもいろいろ口にしました。
あまおう味
チロリアン、どら焼き、バナナ、、、特に印象に残っているのがお汁粉。小さくて柔らかい餅が美味かった。
痛む左足を庇いながら走ってきた結果、バランス悪いフォームだったようで両足裏側面などにも痛み発生。
地面を蹴るたびに痛みが襲ってくるように。
「何とかゴールまで辿りつく・・・」
35km地点 3時間37分31秒(30km~35km 31分21秒 AVG 6'16''/km)
残り
7km、いろいろなことが頭に浮かんできました。
半年前から目標にしてきた福岡マラソン。
EXPO会場TOYOTAブースで撮った記念写真、一緒に写してもらった掲示板に掲げた目標タイムは
「3時間30分00秒」
自分の中での最低限目標は
「止まらずにゴールまで走り続けること」
何も果たせず情けない気持ちでいっぱいでした。
応援してくれている方に何て報告すれば良いのか?
「12km地点で止まった」
それが今回の全て。
どんな顔してゴールすれば良いのか分からない。
サブ4を目指して頑張っていたラン友達、おそらく先にゴールして自分を探しているに違いない。
ゴールどころか、情けない姿で歩いている自分。
どんな顔をして会いに行けば良いのか?
そんなことを考えながら足の痛みに耐えられず上りを歩いていたところ、後方からある
ランナーに抜かれました。
その小柄な
女性ランナーに目が行った理由は、
「KBCラジオ 生中継」と書かれた黄色いタスキを掛け「報道伴走」と書かれたビブス付けたランナーと一緒に走っていたから。
私は知りませんでしたが沿道から
「しおりさーん」と声かけられ笑顔で応えていました。
地元ラジオ局のアナウンサーかな?
何となく彼女に付いて行こうと決めました。
それまで小走りと歩きを繰り返していたのでしたが、
「最後くらい痛みに耐えて頑張ろう」
決意しました。
ゴールまでは未だ
40分近くかかるでしょう。
もはやタイムはどうでもよい。
ただ最後くらい、精一杯の力を出し切ったと思いたい、そう思ってゴールしたい。
自分の前を通り過ぎて行った彼女から目を離さず、給水所で紙コップの水を両手で取り痛む左足に浴びせました。
「よし、行くぞ!」
小さな声で叫び、
30mほど前方を走っている
彼女の後ろ姿を捉えて出発。
5分程で
彼女に追い付きました。
追い付くのが精一杯で一気に抜き去ることはできませんでしたので、真後ろをピタリと追走させてもらうことにしました。
しっかりした足取りで淡々と走り続ける
彼女の後ろ姿に勇気をもらったような気がしました。
頭痛や足の痛みは続いていたものの走れるぞ。
残り
3kmを過ぎると沿道の応援は更に大きくなり最後の一踏ん張りに向けて大きな励みになりました。
40km地点 4時間06分17秒(35km~40km 28分46秒 AVG 5'45''/km)
残り
2.195km。
彼女に引っ張られて
5kmを必死に走り続けてきました。
身体中が悲鳴を上げていましたが意地もありました。
「12kmで終わったレースのリベンジはいつか果たす。その時につなげるためにもここで最後くらい痛みに耐えて走る。」
ここまで引っ張ってくれた
彼女に感謝しながら、抜き去り前へ出ました。
ゴールタイムは
4時間20分くらいか?
自己ワースト更新、それは仕方ない。
でも、ガッツポーズでゴールするぞ。
前方を走っているランナーの多くが歩いたり極端にペース落としている。
彼らの間をすり抜けながら進みました。
「俺はこんなもんじゃない」
そんな気持ちも少々。
ゴールゲートが目に入った瞬間、涙が溢れてきました。
なぜか?
半年前に福岡マラソン当選してから目標にし続けてきた糸島のゴール。
いろいろな思いが頭の中に去来しました。
当選を喜ぶ日にSNSで目にした「福岡マラソン落選してほっとした」などとの発言に憤慨したこと、
ここでの快走を目指して走った宮ヶ瀬湖24時間リレーマラソンや江の島30km走のこと、
福岡出場を機に知り合った方々のアドバイスや励まし、
直前にいただいた多くの方々の応援コメント、
そして何度も挫けそうになりながらここまで引っ張ってもらった沿道の声援やボランティアへの感謝、
レースの悔しさ
3割、この大会に参加出来た喜びと終わってしまう寂しさ
7割くらい。
両腕を突き上げてゴールを駆け抜けました。
40km~42.195km 11分27秒 AVG 5'13''/km
タイム(グロス) 4時間17分44秒
タイム(ネット) 4時間17分24秒
***
あの
女性ランナーは誰だったのか?
なかなか見付けられませんでしたが、ようやく発見。
九州朝日放送(KBC)を拠点に活動するフリーアナウンサーの
石井しおりさんでした。
素晴らしい走り、お疲れ様、そして有難うございました