今朝の読売新聞に「梅原猛さん死去 93歳」という記事がありました。数年前、とある文学賞の授賞式でお見かけしたのが最後でした。私と梅原先生の著作との出会いは『隠された十字架-法隆寺論-』にはじまります。一度読んだきりなのですが、余程印象的だったのでしょうか、今でも大事に本棚に飾ってあります。その後、集英社文庫の『仏像・羅漢』とか、『仏教の思想 上・下』などを買い求め、この2冊は、今でも時々開き、参考文献として引用させていただいています。
何故、先生の著作が好きなのかと言うと、考え方が既成事実に囚われることなく、独特な視点で歴史に切り込んでいるからかと思います。経歴をみますと、東海中学から八高、京都帝大に進んでおり、名古屋で育ったところが私と同じで親しみが持てるのかもしれません。名古屋育ちの人間はその時の権力者や権威者のやっていることを批判的にとらえ、逆説的にみる傾向があります。これは尾張藩主徳川宗春からの伝統かと、自分自身では勝手に納得していますが・・・。
さらに記事によりますと、2015年の卒寿を祝う会では、「人類が滅びないように、人類を生かす哲学を、100歳まで生きて書く」と話し、人間と自然の調和の下で文明を築き直すことを構想していたようです。最近、こういう気骨のある方がつぎつぎに世を去っていき残念でなりません。 ご冥福をお祈りします。