鎌倉市にもまん延防止重点措置が発出されようとしていますが、広町緑地は新緑が眩しく、ウグイスが囀り、ガビチョウが美しい声で歌い、全くコロナとは無縁の世界を満喫できます。強い日差しも木蔭では心地よく、全周4㎞ほどの山道は絶好の散歩?ハイキングコースとなっています。山に咲く花はヤマザクラが終わり、今は藤の花、もう少したてば桐の花が見ごろになりますが、身近にこんなにも素晴らしい自然を楽しめることを幸せに思っています。
さてその藤の花ですが、花言葉は「やさしさ」。そんな藤の花も山に自生する山フジは山林が荒れている証拠だと、悪態をつかれたりしますが、そんなに無粋なことを言わなくてもいいのにと思ったりもします。観賞用の藤棚が作られたのは最近のことで古くは山里に自生していた筈です。歌に詠まれた初見は万葉集(巻第十四3504)にあります。
春べ咲く藤のうら葉のうら安にさ寝る夜ぞなき子ろをし思へば
『花のことば辞典』の解説には、春に花咲く藤のこずえの葉のように揺れて安らかに眠れる夜なんてない、あの娘のことを思うと・・・とあります。そして清少納言も『枕草子』(37)で藤の花は、紅梅、桜の花に次いで春の花として取り上げています。
木の花はこきもうすきも紅梅。桜は、花びらおほきに、葉の色こきが、枝ほそくて咲きたる。藤の花は、しなひながく、色こく咲きたる、いとめでたし。
「撓ひ」(しなひ)はしなやかに曲がっていることの意です。春の花としているのは旧暦で弥生の頃に咲く花だったのでしょう。写真は広町緑地から腰越に下る途中で写したもの。花房が長く垂れ、濃い紫色の姿が愛でられ、風に吹かれ、ゆらゆらと揺れる様子に「やさしさ」を感じたのでしょうか・・。